桜稜学園野球部記

神崎洸一

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「遂に全国区…か」
「南お前あそこの戦力外とザコとムダノッポの気持ちも考えてやれ」
「ようやく全国区って遅くないか?」
「別に3年のとき勝てば良かろう?」
「敗北主義の江島は黙れ」
「あのさぁ…前のセンバツ4強に俺達が勝てるわけないだろうがよ…」
「てめぇ首絞めたろかぁ!」
「やめろ中之島!試合が出来なくなる!」
「1年間の謹慎になっちまうぞ!」
(処罰軽っ)
「お前ら敵が居るかも知れないってのにようやるなぁ」
「知るかボケ」
「…ごもっとも、ですかな」


「…」
「おい、行くぞ」
「…ああ」

「プレイボール!」

(あぁ…ゾクゾクするなぁ!)
「1番 センター、森光くん」
(…そのお手前見せて貰おうじゃないの)

━━━
「よっと」
「ピッチャーライナー!鋭い打球でした!」
(こりゃ一筋縄じゃ行かねぇだろうな)

「2番 ショート、松の尾くん」

「はぁッ!」
「ザコがぁ!!」

「セカンドのファインプレーが出ました、ツーアウト」

「3番 サード、堀田くん」

(1年のクセにようやるわ…)
(それはこっちのセリフだろうがよ)

「打球は前に飛びません、ファウルフライ」
「名門横浜大神奈川、1回表は三人で終了」

「…なぁ、一条、あのピッチャーは強いんか?」
「当然だろ、名門校のエース、それも一年生だ」
「全く知らんかったわ」
「この情弱クソ野郎」

「長宗我部三球三振!あっけなく終了!」
「…ヤッベ」


「…まあ左投手なんですけどねっ!」
「インコース低め流した!ライト前クリーンヒット!」

「北の打球はレフトへ大きく、ツーアウト」

南もサードライナーで終了、チェンジである。


「4番灰山三振!」
「野武見送りましたがストライク!スリーアウト!」

「橋本レフト前!ヒットとなります!」
「財前三振!二者連続三振となりました」

「岡見送り三振!4者連続5個目の三振!」

「北が打ち取られてスリーアウト、チャンスが潰れました」

「ふらふらと上がってマウンド前の小フライ」
「松の尾ここはショートの上手い守備に阻まれました」
「堀田三振!三球三振バッターアウト!」


「財前三振、二者残塁で4回が終わります」

「4番 ライト、灰山くん」
(やべぇな、このままだと…)
「なっ!」

「ショート飛び付きましたが弾いた!これはショートのエラー!ショートのエラー!」

「よっしゃあ!」
「ナイスゥ!」
「ナイスエラー!ナイスエラー!」
「これでエラーできるぞ!おい!」

「5番 レフト、降旗くん」

「きやがれっての!」
(俺が真っ向勝負するわけねぇだろ!)
「ザコがよ!」
「ア、アウト!」

「一塁への牽制でした、これは意表を突かれたか」 

(さぁて…そろそろガチでやるかな…)


ここからオーバースローの南の手によりペースが狂った横浜大神奈川は見事な二者連続三振でスリーアウトチェンジとなった。


━━━尤も、桜稜学園側も神崎の三振からの三者凡退となってしまったのだが。

6回、7番松本からの攻撃はあっさり三振三振アンド三振で退け、
3番北のレフト前も空しく4人でこちらの攻撃も終了した。

6回を終え0-0。いかほどの投手戦かと問われれば、それはこの時点でマルチヒットを達成しているのは一条ただ一人であり、その他の選手は殆どがノーヒットという惨状、というところから読み取れるだろう。
両投手の好投に応えるという意思の下によるファインプレーも今までの試合より多く見られた。何より
名門、横浜大神奈川がここまで抑えられていることは、まさしく波乱そのものである。

「1番 センター、森光くん」
(…第三打席…そろそろ打たねばなるまいか…)
(間違いなく抑えられるわ!このザコがよ!)
「初球ストレート、未だ衰えず」
「ん~森光くん歯が立ちませんあえなく三振」

「2番 ショート、松の尾くん」
「外野に飛ばしてやる…まずはそれからだ!」
「無駄ァ!」
「クソがっ!」
「三球連続ストレート!空振り三振!」

「さて6回から尻上がりの投球をみせている南、続く堀田も三振に打ち取りスリーアウト」

「7回の裏、今日ノーヒットの下位打線からの攻撃、バッターは7番江島からです」

「フォーク空振り三振!0が刻まれ続けているスコアボードを睨みます!」

(俺が打てないってのは分かってる…だから打てないなりにやってやるよ!)

「財前はショートライナーでツーアウト」

「そして神崎にも左腕を唸らせ三振、神崎は三打席連続三振となりました」



「1年生同士の投げ合いは7回を終え未だ0-0」

「さて、4番灰山からですが━━」

「ストライク!バッターアウト!」
「ストライク、バッターアウト!」
「ストライク!バッター、アウト!」 

「━━━これで、11連続三振。快刀乱麻とは正しくこのことか」


「南打ち上げました。一条残塁のままスリーアウト」


「三振三振、また三振。南は最速の138キロをマークしました」
「…どれだけノビとキレが凄まじいか分かりますね」


「なあ、南よ、お前は直球しか投げないのか?」
「カーブもフォークも投げたやろが!」
「最後に投げたの6回とかそこらだろ!」
「抑えてるからいいだろ!」
「…ごもっともだ」

「9回、これも三者凡退であっさり終了。未だにスコアに動きはありません」



延長10回、南はなおのこと自信が乗ってきた直球を見事に際どいコースに投げ込み9球で締め、対する1年生、御船も御船で打たせてとる投球で三者凡退。11回にてやうやく100球に到達した南は灰山にファウルフライを打たせ、捕邪飛で連続三振の記録を途絶えさせられた後に財前、一条のファインプレーで2つアウトを取るというように少し打たれ始めていた。その裏の攻撃は一条のあとクリーンナップが全滅し四人で終わっていた。


「僕が変わろうか、南」
「抑えられる自信も無いのにか」
「…でもだ、そろそろ限界なんじゃないのかい?」
「黙れ、オレはまだ汗をかいてるんだよ」

以上、謎理論を展開する南でした。
結果このイニングも南は元気にマウンドに行くのである。
南は本日5個目のフライアウトのほか三振をひとつ奪う投球で、対する御船少年は疲弊の色した顔を見せてはいたものの橋本のまぐれ当たりをヒットにされたのみで789の三人はあっさりまたしても凡退というクソ共という結果である。



━━━13回の表はあっさり終了。そのまま裏の攻撃に入る。
長宗我部はしょうもないゴロでアウト、続く一条は義務的な感じでまた長打でまたしてもチャンス到来


「あの野郎、また打ちやがったか」
「そうだな」
「…なあ、橋本。俺の荷物片付けといてくれ」
「はあ?」
「何か、打てそうな気がするんだよな」
「…まさか」
「でも、南がそういうのなら、そうなんだろうな」
「じゃ、片付け始めるか」


北はショートライナー。ツーアウト二塁となった。 

深呼吸。御船祥一の167球目。実に理想的かつ鮮やかなスイングであった、そう一条は感じた。
打った瞬間、その打球の行方を含めどうなったのか、それを理解した人間は南を始め皆無であり、静まり返る球場の中を動いているのは確信ガッツポーズを静かに決めていた一条ただひとりであった。
打球はバックスクリーンの上を越えて行き、13回裏のスコアに2が刻まれ、実況解説が口を開いたのはそこからであった。

「この試合は南のためにあるのか!?南龍一の2試合連続決勝ホームラン、そして…」

「ノーヒットノーラン達成!桜稜学園準決勝進出!」

かくしてこの一件は桜稜学園の名を全国に轟かせ、新たなる高校野球の幕開けと言われるようになったのである。
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