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猫の国の動乱
和平プロセス1
しおりを挟むミャウシア軍艦隊と連合軍艦隊が入り乱れるように停船する中、各陣で話し合いの場が持たれていた。
ミャウシア艦隊では好戦派と和平派の代表格が意見をぶつけていた。
「ニャマルカム大将、これは一体どういうことですか?」
「どうも何もない。始めから私は戦いの継続には反対だった。あのままでは我が軍は取り返しがつかないほど消耗していただろう。確かに初めは私も戦端を開くことには同意したが、状況判断でそれは覆し得ることだった。だが貴官らは他種族との戦いをまるでイデオロギーのように捉え、戦いを先導し続けた。だからこうして実力行使して止めたまでだ」
「では責任は取るおつもりなのですね?」
「責任か。貴官は何を持って責任だと言うのかな?和睦することが罪だというのか?それとも他種族に譲歩なり弱みを見せたらそれが悪だとでも言いたいのかね?」
「言葉遊びはやめてください。私はあなたが全軍を私物化したことを問題視しているのです」
「それだって党中央軍事員会が解散した今では全軍のトップは我々しかいない。誰に対して越権行為を働いたことになるんだ。貴官らはただ我々の考えが邪魔だから権威を持ってるように見せるために我々にレッテルを貼って黙らせることで自己満足に浸っているに過ぎない。軍の私物化で非難する前にまず自分たちの行いを省みてから言いたまえ」
「ふん。どうやら私どものご指摘を十分理解していただけてないようですね。しかもその暴言は看過できません」
このとき大将は内心非常に大きなため息をついた。
ここまで筋や道理などまったく意にかえさず自分の敵味方かでしか判断しないとなるといくら説教しても無駄でしかないので悲しくなってしまうのだ。
世の中そんな人物はいくらでもいるがこの戦いでミャシア海軍は3万人超の兵士達が戦死してしまっている。
たったそれだけの独善に付き合わされて数万人が命を落とすのは道理に合わない。
だから大将は今回は俄然とその狂気に対峙する。
「では多数決しようではないか。白黒付けない限り前に進まないようですからな」
「その必要はありません」
突然、協議の場に小銃を持った水兵達が押しかけてきた。
「これは?」
「あなた達を逮捕します」
「ほう」
「我々に従っていただければこんな手に出る必要はなかったのですが。幸い議場は我々の指揮下の艦艇したので助かりましたよ。詰めが甘いとしか言えませんな」
「全くだ」
ここで兵士たちが小銃や拳銃を構える。
だがその銃口の先には好戦派の将軍たちがいた。
「何!?」
「言っておくが、この兵士たちは私が買収したわけではないぞ。貴官らは兵士の気持ちがわかってないと常々我々に言っていたが、この件を我々に通報してくれたのは紛れもない彼らだ。どちらが兵士たちの気持ちを理解してないかは言うまでもないな」
「くそお」
こうしてミャウシア海軍首脳部から好戦派、強硬派が排除された。
皮肉にもそれは一連の戦いで兵士たちが心変わりしたことでなし得たものだった。
大将が最初からこの手に出た場合、付いてくる兵士はいなかったかも知れなかった。
その点でこの戦争は人々の意識を変えていた。
大将は船室から出ると控えていたフニャンを含めた副官たちに目をやってから通路を歩き始める。
そして口を開いた。
「貴官は今後についてどう考えている?」
「は、大将を軍の総司令官とし、ゥーニャ書記が同志達と将兵にその存在を訴え、予定された作戦を完遂し連邦と軍を再建することが望ましいと考えています」
「ほう」
少し間が開くと大将が続ける。
「妥当な案だ。だがその大役は君がやったほうがいいと私は思うんだが」
フニャンは驚く。
「わ、私がですか?将軍が私をそこまで高く評価してくださったことに感謝いたします。ですがこれは知名度や権威の問題でもあります。それに私は一兵卒に過ぎません」
「いいや、貴官の貢献は目覚ましいものがある。貴官の努力によってここまでこれたんだ。それに君には人を信用させるものを感じる。それは指導者にとって重要な要素だ。そう言うと君は私はネニャンニャ族だからと反論すると思うがそれでもだ。私では役不足だし、書記長もそう言うんじゃないかな?」
「....」
「まあ、すぐにとは言わないがそんなに時間はない。決断はしておいてくれ」
「...一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんだ」
「将軍は私と話すのはお嫌ですか?何でもいいんです、違和感を感じたりしませんか?」
「ない。たとえ君が一兵卒だろうが被差別民族出身者だろうがね。それだけの魅力が君にはある。きっと話せば誰だって分かってくれる」
「...わかりました。不肖ながらその大役、小官が勤めさせていただきます」
「任せたよ。全力でバックアップしよう」
フニャンは大将に敬礼し、大将も敬礼し返すと連合軍との会談の場へ赴くのだった。
一方、グレースランド側では王女が叱責を受けていた。
王女は独断で行動したことにはきちんと謝罪を行った。
だが話はすぐにミャウシアへの対応の方針に移る。
「海軍中将、これ以上の戦闘は無意味です。即刻作戦を中止してください」
「我々は軍の命令で動いています。その軍に命令しているのは政府です。王女、あなたには権限がないのは重々承知しておいででしょう」
「それはもちろんです。ですが私が指摘しているのは状況です。ミャウシア海軍と和睦すれば私達と利害の大半は一致しています。つまり敵の敵は味方として見ることができるのです。もちろんその関係は多難でしょうがそのメリットは安全保障上極めて大きいはずです。しかも政府首相は休戦に前向きです。この一連の流れを聞けばこちらの考えに賛同することは明白です。まだ政府に対応をもとめているのはわかりますが、今はそれを前提に動いていいはずです。彼らには時間がないのですから今は休戦で相槌を打ちましょう」
「しかし...」
「司令官。総司令部からの打電です」
「見せろ」
艦隊司令官は司令部からの打電を読んでいくと部下に指示する。
「ミャウシア艦隊に使者を送ると伝えろ」
「私も同行する許可をください」
「....ええ、お好きにどうぞ。政府はあなたを臨時の特使に指名したようです。国王は相当お怒りのようですが...」
「構いません、やるべきこと果たすまでです。同行の許可、ありがとうございます」
こうしてミャウシアとグレースランドは和平に向けた動きは確実なものとなった。
だがポンポタニアは未だに敵対を続けるつもりの様子で会談には応じるが和平に合意する可能性は低そうだった。
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