ボクは犬(仮)

来季

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幼なじみ

初めての

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事務所に所属してから1年が経とうとしていた。


そんな事は全然関係なくて、今日は桜ちゃんの誕生日。


「20歳!おめでとぉー!」


僕は初めてお酒の蓋を開けた。


テーブルには高級なシャンパンやワイン、豪華な料理が並んでいた。


桜ちゃんは断ったらしいけれど、今日は桜ちゃんの会社の人僕や桃峰さん達モデル、みんな総出でホテルを貸し切ってパーティを開いた。


「なんだか、照れてしまうな。」


少し顔を赤らめた桜ちゃんが最近の桜ちゃんの中でもダントツの可愛さで私は桃峰さんに写真に収めてもらうように頼んだ。


「15歳の社長ももう20歳ですよ!凄いですね~!」

「もう幼さが全くないですよね。」


「可愛いから美しいになりましたよね。」


「我社の誇るべき社長です!一生ついて行きます!!」


大人の人達は早速お酒を飲んで酔っていた。


桜ちゃんも人生初のワインを口に運んでいた。


「ん~苦い、な。」



少し舌を出して苦しそうに笑う桜ちゃんが可愛くて、僕も含めてみんな歓喜に沸いた。


普段の桜ちゃんは大人顔負けで大企業を束ねる大社長という雰囲気を醸し出していたけれど、社員の人達に囲まれると優しい親や親戚に大切にされている子供のようだった。


「社長このローストビーフ劇的に美味いですね!」


「プロのシェフを呼びましたからね。」



未鼓さんは嬉しそうに呟く。


皆が桜ちゃんの事大好きな雰囲気が僕は嬉しかった。


「素敵な会社ですね。」


僕のマネージャーさんは僕の横で涙をふいた。


え?泣いてるの?


「大丈夫ですか?」


「あっ、はい。いや、あまりに素敵な雰囲気で。暖かい家族みたいで、、、、。この和の中に入れて私も幸せです。」


「全部桜ちゃんの努力の結晶です。」



「椎樹さんが社長さんの事大好きな理由がわかります。」


パーティは日付けが変わるまで行われた。


その頃には皆ベロベロになっていた。


「困った奴らだ。」


そう言いながら桜ちゃんはベランダに消えた。


僕は未鼓さんと少しづつ片付けをした。


桜ちゃんにマネージャーさんが手招きされていた。


何か、話すのかな?


僕は気になって気になって未鼓さんに聞いてしまった。


「桜ちゃんとマネージャーさんって話すの?」



「椎樹さんの事でしょう?」



「僕の事?」


「それしかないでしょう。」



「良い事だといいなぁ。」



僕が呟くとベランダから桜ちゃんが顔を出した。


「お、い、で。」


桜ちゃんの口がそう動いた。確かにそう動いた。

僕は未鼓さんに行っていい?と聞き未鼓さんが頷いたのを確認してベランダに駆け寄った。


「何?桜ちゃん。」


「今椎樹さんの事を褒める大会開いてたんです。」


ん?そうなの?
マネージャーさんの言葉に僕は桜ちゃんを見つめた。


「マナは本当に素晴らしいモデルだって話していた。私も柊木も今一番大切なのはマナだなって。」


「え?本当?」


僕は2人を交互に見る。


桜ちゃんが、大切な人?



僕が?


僕が?


桜ちゃんの?


にやけが我慢出来ない。


「あぁ~椎樹さんニヤニヤしてるぅ~。」



「しっ、してないよっ。違うよ!」


「いいじゃないか可愛くて。」


なぁ?



そう言った桜ちゃんはワイングラス片手に少しづつ僕に近寄ってきて、小さなリップ音を立てて頬にキスを落とした。



「わっ、社長さんっっ。」


「っ!?!?」


僕の思考回路が完全に停止した。


「寒いから戻るか。」


桜ちゃんは颯爽と去っていった。

僕は少しも動けずにいた。


「椎樹さん、椎樹さん、私も惚れそうです、社長に。」


「え!?それはダメだよ。嬉しいけど。」



「だって、、、イケメン過ぎるじゃないですかっ、、、。私もキスされたいです。」


「それは絶対ダメ!」


えぇ~とマネージャーさんが頬を膨らませた。


他の人になんて絶対しちゃダメ


そんなの見たくない


僕はダメだからね!と念を押して中へ戻った。


ベロベロに酔っている大人たち、黒の革のソファーで足を組んでワインを飲んでいる桜ちゃん。テキパキと片付けをする未鼓さん。

幸せだなぁ~


こんな時間がずっと続けばいいのに


僕は未鼓さんの元へ駆け寄った。


「何をお話されていたんですか?」


「良いこと。」


「良いこと、ですか。」


それは良かったですね、未鼓さんは可笑しそうに笑っていた。



20歳かぁ


桜ちゃんはもう大人になったんだなぁ


僕はまだ17歳。


まだまだ全然子供だなぁ


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