【完結】先に求めたのは、

たまこ

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 レティはミゲルと王女殿下の婚約後のことを考えていた。

 弟のジャックが縁談を探してくれると言ったってそれは十年後のことだ。それまでの間、レティは自立して生活する必要があるだろう。勿論、両親も弟もレティが伯爵家に戻ったら手放しで喜んで迎えてはくれるだろう。だが、家族に甘えるだけの生活は嫌だった。

 しばらくは料理で身を立てて、いずれ時が来たら誰かと婚約する。この未来が一番しっくり来た。そしてこの未来のために、王宮への出向はすこぶる魅力的だった。


「旦那様。私、出向に行きたいです」

「レティ!」

 ミゲルの叫びに動じることなく、レティは言葉を続けた。

「ダンや他の料理人は時折王宮へお手伝いに行っていますが、私は公爵家にお世話になってから一度も行っておりませんし、王宮の料理人の方から新しい料理法を学びたいのです」

(出向が上手くいけば、公爵家を退職した時に王宮で雇ってもらえるかもしれないわ。ううん、王宮でなくても知り合いができれば職場を紹介してもらえるチャンスがあるかも!)

 レティがそんなことを考えているとはつゆ知らず、スタマーズ公爵は感心したように大きく頷いた。レティの言葉を聞き、公爵は心を鬼にすることに決めたようだ。

「そうだね。ミゲル、レティは王宮へ行かせる。これは決定事項だ」

「……」

「ダン、レティ。出向は準備期間も合わせて一週間だ。よろしく頼む……ああ、レティ。出向期間はミゲルの食事は準備しなくて良いからね」

「旦那様、私は……」

 大丈夫です、そう伝えようとした時、レティの腕がぐいっと強く引かれた。

「ミ、ミゲル様?」

「……」

 ミゲルはレティの腕を掴むと扉の方へずんずんと引っ張って行った。レティが助けを求めるように公爵の方を見ると「行っておいで」と笑顔で見送られてしまう。

「ミゲル様?どこに行くのですか?」

「……」

「ミゲル様!」

(もう、どうして怒っているの?出向を勝手に決めたから?それとも私が王宮で粗相するとでも思っているのかしら。確かにもう何年も外ではお仕事をしていないけど……)

 そんなことを考えているうちに二人はレティの厨房へと辿り着いた。ミゲルはぐるりと振り向くと、レティの両肩を強く掴んだ。

「……何故、了承した」

「それは、」

「今からでも断れる!だから……っ」

(ミゲル様、怒ってるんじゃない。これは……)
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