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しおりを挟む「二人とも忙しい所すまないね」
スタマーズ公爵は優しく微笑んだ。レティはダンと共に頭を下げた。
レティは時折、公爵の執務室にも入る。公爵夫妻はレティを可愛がっており、お茶の席に誘われるためだ。だが、今日のように誰かと一緒に入るのは初めてだった。
「今日は二人に相談があったんだ。今、王宮に他国の王女殿下が滞在しているのは知っているかな?」
レティは手の先が冷たくなっていくのを感じた。「はい、聞いております」とダンの返事を聞いて、レティは慌てて心を無にして公爵の話に耳を傾けた。
「実はね、王女殿下の為に舞踏会を開くことになったんだ。だけど王宮の厨房の人手が足りないようで、高位貴族の元で働く料理人を出向させてほしいと依頼が来ている。うちからも何名か出さないといけない。ダン、人員の選別を頼めるかな?」
「承知致しました」
「そして、レティ。君にも行って欲しい。レティは子どもの頃は伯爵と共に高位貴族や王宮にも出向していたと聞く。勝手が分かる人に行って欲しいんだ」
「……はい」
レティは内心困っていた。レティが父親について出向していたのは八年も前のことだ。公爵家に来てからは一度も行っていない。上手く出来るか不安だった。そんなレティの気持ちを見透かしたかのようにスタマーズ公爵は笑った。
「レティ、心配しなくていい。いつも通りの君の料理で良いんだ。それに陛下も会いたがっている」
「へ、陛下が……」
「ああ、友人である伯爵の娘の料理を食べてみたいといつも言われているんだ。私がなかなか連れてこないからしょっちゅう叱られているよ」
「そうだったのですね」
「それにアーネスト殿下も先程こちらに来て、殿下からも推薦されている。だから……」
レティは少しばかり驚いた。アーネストが公爵家に来るのは休憩するためとばかり思っていたが、こうやって仕事をする日もあるらしい。レティが感心しているとガチャン、と大きな音を立てて執務室の扉が開いた。
「父上」
「ミゲル、扉は優しく開けなさい」
「そんなことより……レティを王宮へ連れて行くことは反対です」
いつもより荒々しい口調にレティは戸惑った。だが、戸惑ったのはレティだけだったようで隣に立つダンも公爵も呆れ顔だ。
「ミゲル。レティを連れて行くのは陛下とアーネスト殿下から依頼されたことだ。こちらから断ることはできないよ」
「殿下には私から説明します」
「ミゲル……」
公爵の瞳が迷い始めた。公爵夫妻はミゲルに甘い。ミゲルが珍しく必死で主張していることを何とか叶えてやる方法は無いか頭を働かせているのだろう。
(でも……)
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