【完結】先に求めたのは、

たまこ

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 そのまま中庭で姉弟が話し込んでいるとミゲルがやって来た。

「レティ。ジャック」

「ミゲル様」

「義兄上、お久しぶりです」

「ああ」

 ジャックはぴしりと背筋を伸ばすとミゲルの方を真っすぐに見据えた。

「義兄上、どうか姉をよろしくお願いします」

「……ああ、任せてくれ。大切にする」

 ミゲルの力強い返事にジャックは満足したようににっこり頷いた。

「ああ、これでやっと僕の努力が報われますよ。小さい頃、義兄上のための料理の練習台だった僕の努力がね」

「ん?」

「ジャック!」

「あの頃は僕もまだ幼くて、姉上の作る野菜尽くしの料理やお菓子を食べたがらない日もあって喧嘩になっていましたよ」

「ちょ、ちょっと!ジャック!止めなさい!」

 レティは慌てて制止するがジャックは話し続けた。

「姉上は公爵家に行く前から義兄上の為に色々なメニューをずっと練習していたんですよ」

「それは……公爵家から住み込みで働く打診が来たからだろう」

「義兄上。練習していたのは、公爵家から住み込みで働く打診が来る前から、ですよ?」

 ジャックはニヤッと笑うと「姉上、婚約祝いですよ」と余計な言葉を残して屋内へ颯爽と戻って行った。

「レティ」

「……」

「レティ」

「ひゃ!」

 恥ずかしさのあまり両手で顔を覆っていたレティをミゲルはきつく抱き寄せた。

「……ジャックの話は本当か」

「うぅ……聞かないでください」

「聞きたい」

「う……そ、そうですよ。公爵家から打診が来る前から、ミゲル様のためにまた料理を作りたいと思っていました」

「うん」

「レシピを探して沢山練習して、また次に料理を作れる日を心待ちにしていました」

「うん」

「また会いたいと、そう願っていました」

「そうか……俺だけじゃなかったのか」

 レティが初めて任された一品。そしてそれを完食し、選んでくれたミゲルがレティにとって特別になることは当然だった。

 ミゲルから告白されたあの日、レティが頑なに言わなかったのはこのことだった。ミゲルだけでなくレティだって八年前から一緒にいたいと願っていた。

 レティの背中に回された腕に力が籠る。ミゲルは嬉しさのあまり、へにゃりと笑うがレティは貴重なその笑顔を見ることは叶わなかった。耳元で「うれしい」と甘く呟かれ、彼の顔を見る余裕なんて残されていなかったからだ。
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