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しおりを挟む「レティ。ドレスと髪飾りはこれでいい?」
「うぅ……任せるわ」
「まったく、シャキッとしなさいよね!」
レティの部屋でミアは檄を飛ばした。
レティとミゲルが婚約を結んでから、ミアはレティの専属侍女となった。
よく考えれば気付けた話だった。ミアが行儀見習いとしてスタマーズ公爵家に来てからもう一年以上が過ぎていた。だが、公爵夫人の侍女たちは十分すぎるほど揃っていたし何なら多すぎるくらいだ。ミアをスタマーズ公爵家で侍女として雇えないのであれば、他の高位貴族の侍女として推薦することもできた。だが、レティはミアと一緒にいたい気持ちが強く、スタマーズ公爵家にいてくれてラッキーくらいにしか思っていなかったのだ。
「元々、レティの侍女候補として雇われたのよ」
婚約を結んだ後、執事のトニーから専属侍女としてミアを紹介されレティは目を丸くした。そして二人になったところでミアはあっけらかんとそう言ったのだ。
「公爵夫妻も流石にそろそろ婚約をと考えていたみたい。それでレティと年頃の合う侍女候補を探していたの」
レティは青春時代をずっと公爵家で過ごした。レティとしては不満は無いのだが、公爵夫妻はレティを仕事漬けにしてしまい友人を作る機会を作ってやれなかったことを悔やんでいた。そのためレティの話し相手になりそうな侍女候補を探していたという。
「びっくりしたわよ。次期公爵夫人の侍女候補だと聞いていたのに、蓋を開けたらその次期公爵夫人は料理人として働いてるし?婚約はまだ結ばれていないし?友達になっちゃうし?」
「うっ」
「何よりあんなに愛されているのに全然気付いてないし」
私の話も全然聞いてくれなかったしね、とミアは拗ねるように言った。
「ミア……ごめんなさい」
「まぁ、あれはミゲル様が悪いわ」
ミアは苦笑いでレティの頭を撫でた。
「私の実家は貧乏な子爵家だからあんまり力にはなれないけれど、まずは私の知人やお友達とお茶会をして社交の練習をしていきましょうと侍女長や奥様とは話していたの。大丈夫そう?」
「うんっ!ありがとう、ミア。頼りになるわ」
「ふふ。あ、籍を入れたら奥様と呼んだ方が良い?」
「な、駄目!」
ミアとはずっと友達でいたいとレティは彼女にぎゅっと抱き着いた。「もう、ミゲル様の前ではしないでよね」とミアは呆れながらもレティの頭をまた優しく撫でたのだった。
数日後、レティはミアに身支度をしてもらいある場所へと向かった。引き攣る表情筋を無理矢理動かし、レティは必死で笑顔を作った。
(確かにジャックとミアには「社交を頑張る」って約束したけど……!でも!)
「王太子妃殿下。本日はお招きいただきありがとう存じます」
「こちらこそ来てくれてありがとう。楽にしてちょうだい。私達しかいないのだから」
目の前の女神……いや王太子妃殿下は優しく微笑んだ。そう、レティは王太子妃殿下よりお茶会の招待を受け恐々登城したのだった。
(初回の社交のお相手が王太子妃殿下なんて、あんまりだわ……)
叫び出したいのを何とか堪え、レティは席に着いた。
「急にお呼びしてごめんなさいね」
「とんでもありません」
「今日お呼びしたのはね、レティ様にどうしても確認したいことがあったの」
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