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しおりを挟む王太子妃殿下の言葉にレティは青褪めた。アーネストのこれまでのやらかしから、王太子妃殿下から何かしらの誤解を受けていることは察しがついていた。
「何でしょうか」
「レティ様……あなた……」
王太子妃殿下は大変美しい方だ。レティは彼女ほど美しい人を見たことが無かった。絵画に描かれたかのような神々しい美人にじっと見つめられレティは泣き出しそうになるのを懸命に堪えた。妃殿下は決心したかのように口を開いた。
「スタマーズ公爵家で辛い思いをされているのではなくて?」
「……へ」
想定していなかったことを尋ねられ、レティはぽかんと口を開けた。妃殿下は小さく息を吐くと説明した。
「レティ様がスタマーズ公爵家に来られたのは十歳の頃とお聞きしました」
「ええ」
「何も一緒に住まずとも、学園に入学して婚約者同士として交流を深めることだってできましたでしょう。私も高位貴族同士のお付き合いでミゲル様のことは幼い頃から知っておりましたし、食事のことも聞いていました。ですが……」
あの人付き合いの悪いミゲルが一人の令嬢を傍に置いている。しかもその令嬢は全く社交の場に姿を現さない。妃殿下から見れば相当異質に見えただろう。幼い頃からレティを囲っているかのように……いや実際囲っていたようなものだが。
「何か無体を働かれたことは無くって?」
「だ、大丈夫です!」
「先日の舞踏会の時だって国王陛下も私もあなたと面会したいと言ったのに断るんですもの。当の本人はしょっちゅうあなたのいる厨房へ行っていたし、色々と口出しするし」
「え」
「本当よ。舞踏会の時、レティ様はスイーツ部門だったでしょう?そしたらスイーツ部門の男性は未婚の者は駄目だとか言って、リーダーを困らせていたのよ」
「それは……」
そういえば、野菜スイーツを担当したレティの周りには女性料理人が配置されていたが、スイーツ部門全体を思い返すと壮年の男性ばかりだった。女性だけで固めたのはおそらくリーダーの配慮だろうと妃殿下は呆れたように言った。
「あんな独占欲丸出しのバレッタを着けさせて、他の料理人たちが怯えていたの。そうそう、メニューにも口出ししていたわね。あなたとの思い出の品は絶対にパーティーに出すなって」
「あ……人参のトライフルのことですね」
「そう、とっても楽しみにしていましたのに」
妃殿下は拗ねたようにそう言った。美しい彼女がそんな表情をすると大変可愛らしく、レティは思わず頬を緩めた。
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