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「……ステファンがごめんね。」
「……っ。」
セリーヌがふるふると首を振ると、ルーカスは眉を下げ困ったように笑った。
「あのね、セリーヌ。」
「はい。」
「絶対にセリーヌに苦しい思いをさせないから、僕が言ったとおりにしてくれる?」
「え、っと、ルーカス様、それはどういう……。」
意味ですか、とセリーヌが尋ねる前に、慌てた足音が二人のそばまで近付いてきた。
「セリーヌ、セリーヌ!こんなところに……っ!兄上、何故ここに?」
セリーヌを追いかけてきたステファンが、不審そうにルーカスを睨む。
「ここは僕が暮らしている離宮の庭だからね。泣いているセリーヌがいたから声を掛けたんだ。」
セリーヌはここを懐かしく感じる理由が漸く分かった。セリーヌがステファンの婚約者となる前、ステファンやルーカス、他の子どもたちを交えて遊んだ場所だ。ステファンの婚約者となってからは全く足を運ぶことはなくなっていたが。
「なっ、泣いて……。」
ステファンは狼狽え、セリーヌに視線を向ける。涙は既にルーカスが拭ってくれているが、充血した目に気付きステファンは居心地が悪そうに眉間に皺を寄せた。
「ステファン。先程父上から話があった。少しでもステファンがセリーヌを傷つけることがあれば婚約解消すると。」
それは今だ、とルーカスの瞳が物語っていた。ステファンは顔を青くし、声を荒げた。
「馬鹿な……!たったこれだけのことで……。」
散々傷つけられたことを、たったこれだけだと考えているステファンにセリーヌは落胆した。だが、次の言葉でステファンへの信頼は地に落ちた。
「大体、婚約解消したらセリーヌは行き遅れですよ。次の婚約者なんて見つかりっこない。だから、僕と婚約したままでいいんです。」
セリーヌの身体は怒りでカッと熱くなった。一生独身でも構わない、むしろその方が良い、そう伝えようと口を開こうとした時ルーカスの笑い声が響いた。
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