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「あ、兄上……っ!」
ステファンは顔を赤くし、怒りで震えている。きっと王位継承権から一歩遠ざかってしまったからだろう、とセリーヌは納得した。
「あ、ステファンまだいたの?」
「……っ!」
ルーカスがわざとそう言ったことにステファンもセリーヌも気付いた。生まれてすぐ目が見えなくなってしまったルーカスは周りの気配にとても敏感だ。見えないからと言って、ステファンがいることに気付かないなんて有り得ないことだ。
ルーカスは胸の中にいるセリーヌにふわりと微笑んだ。優しい笑顔を見ると、きっともう大丈夫だと思えるから不思議だ。ルーカスは腕の力を緩め、抱擁を解いた。セリーヌは身体の熱が落ち着いていくのを感じ、ホッとしたのも束の間グイっと引き寄せられる。
ステファンは、ルーカスに腰を抱かれているセリーヌを見て歯噛みした。顔中を真っ赤にし、瞳を潤ませるセリーヌを見たくないのに目が離せない。
「ステファン。セリーヌは僕を選んでくれたんだ。もう口出しはさせないよ。」
それを聞き、ステファンはチラリとセリーヌを見た。セリーヌはステファンが酷く悲しそうに見つめているように感じ、胸の奥がじくりと傷んだ。だが、そんな訳はないのだ。彼はずっと自分を嫌っていた。きっと自分の願望がそう見せたのだろう。
ステファンがくるりと踵を返すとあっという間に背中が小さくなった。セリーヌは小さく息を吐く。漸く言いたいことが言える。
「殿下!!そっちはお尻です!!」
セリーヌは不敬を承知でルーカスの手をギリっと抓った。ステファンの方からは腰を抱いているようにしか見えなかっただろう。そんな絶妙な位置にルーカスは手を添えていた。ルーカスはセリーヌの叫びと抓られたことに戸惑ったような顔をしたがそれは一瞬のことですぐ嬉しそうに笑った。
「ごめんね?僕、見えなくて。」
「殿下、本心は?」
ルーカスの後ろに控えていた従者のダミアンが淡々と尋ねる。
「いやぁ~ラッキーだなぁって。」
「殿下!!」
再度手を抓ろうとするセリーヌをひょいっと交わし、ルーカスはまたセリーヌを抱き締め「ごめんね?」と囁いた。
「……次はありませんから!」
ルーカスは嬉しそうに笑い、大きく頷いた。
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