3 / 33
3
しおりを挟む(しまった……!)
爽やかな男性を見て、私の心は後悔の念に染まった。私は、いつもは堅実なタイプなのに、変なところで猪突猛進な所がある。今日だって、この写真館を見つけてすぐ家を出た。だが、よく考えれば、同じくらいの年代の男性に婚活写真を撮ってもらうのは、少し抵抗がある。どうして、女性スタッフのいる写真館を検索しなかったのか。こういう迂闊なところが、自分でも嫌になる。
「……どうされました?」
自分から入店しておいて、顔を青くした私に、男性は心配そうに訊ねた。申し訳ない。ああ、もう、ここでお願いしよう、と腹を括った。
「す、すみません。ホームページを見て来ました。……こ、こ、婚活写真を撮ってもらいたくて。」
よし、よく言った!と自分で自分を褒める。婚活には、こんな勇気が必要だ、きっと、と心の中で自分をフォローしていると、男性は少し不思議そうに私を見ていた。
「お姉さん、婚活するの?こんなに可愛いのに?」
「へ?」
可愛い、なんてもう何年も男性に言われていない誉め言葉に、思わず胸が高鳴るが、頭の中のもう一人の私がブレーキを掛ける。これは、所謂リップサービスというやつで、真面目に受け取っては駄目なやつだ。
(すぐ本気にするところが、駄目なのよね。)
心の中で溜息をつき、男性へ笑顔を作る。
「ありがとうございます。」
「うーん……本気にして貰えないかぁ……。」
急だから仕方ないよね、としょんぼりした笑顔を見せた男性が憎らしかった。
(さっさと予約させてくれ!)
しかし、私の願いとは裏腹に、男性はとんでもないことを口にした。
「ねぇ、お姉さん。婚活するなら、俺と付き合って貰えないかな?」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
先生の秘密はワインレッド
伊咲 汐恩
恋愛
大学4年生のみのりは高校の同窓会に参加した。目的は、想いを寄せていた担任の久保田先生に会う為。当時はフラれてしまったが、恋心は未だにあの時のまま。だが、ふとしたきっかけで先生の想いを知ってしまい…。
教師と生徒のドラマチックラブストーリー。
執筆開始 2025/5/28
完結 2025/5/30
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
25歳のラブレター【★25周年カップ 参加作品★】
naomikoryo
恋愛
高校1年の春、彼女をひと目見て恋に落ちた僕は、名前も名乗らず、気持ちを手紙に託した。
それから10年、会えなくなっても、手紙だけは送り続けた。
返事がなくても、ただ伝えたくて。
けれど本当は——
彼女は最初から、すべてを知っていた。
すれ違う想い、黙ったままの恋、心の支えとなった言葉。
長い年月を経て、ようやく交わされた一通の“返事”が、ふたりの時間を静かに動かし始める。
これは、たったひとつの想いが、言葉として届くまでの物語。
そして、“ふたりで”言葉を紡いでいく日々の始まり。
【完結】25年の人生に悔いがあるとしたら
緋水晶
恋愛
最長でも25歳までしか生きられないと言われた女性が20歳になって気づいたやり残したこと、それは…。
今回も猫戸針子様に表紙の文字入れのご協力をいただきました!
是非猫戸様の作品も応援よろしくお願いいたします(*ˊᗜˋ)
※イラスト部分はゲームアプリにて作成しております
もう一つの参加作品「私、一目惚れされるの死ぬほど嫌いなんです」もよろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる