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しおりを挟むそれから暫くは写真館は休業となった。私は予約の入っていたお客様へ予約日の変更の連絡をしたり、事務作業をしたり、と結局いつものように出勤している。
そして、大事な仕事がもうひとつ。
「あぁ~ギックリ腰になって良かった。」
「変なこと言わないでください。」
私がギロリと睨んでも、佐藤さんは蕩ける笑顔を止めようとはしない。
「梨奈ちゃんのエプロン姿、見れるなんてギックリ腰のおかげでしょ?」
「……佐藤さん、ちょっとおじさん入ってます。」
私がそう言うと「えぇ~!」と不満そうに口を尖らせる。そんなやり取りすら楽しくて幸せを感じてしまう。
佐藤さんがギックリ腰になってから、出勤日は日用品の買い物や食事作りをしている。エプロン姿、といってもお洒落な女の子が着ているようなものではなくて、保育士の必須アイテムであるキャラクターがでかでかと描かれている子ども受けに全振りしたものだ。今日の私のエプロンには子ども人気ナンバーワン『にゃんこマン』が所狭しと描かれている。
「大好きな女の子が、エプロン付けて、ご飯作ってくれるんだよ?浮かれもするよ。」
「……っ!」
私が過去を吐露したあの日から、佐藤さんはこんな風に甘い言葉を平気で伝えてくるようになった。あの日、佐藤さんから、また「付き合おう」と言ってくれたけれど、臆病すぎる私は「……ギックリ腰が治ってから、もう一度言ってください。」と図々しいお願いをした。佐藤さんは「それって、もう答えだけど。」と可笑しそうに笑って、繋いだ手をそのままにしてくれた。
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