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しおりを挟む『処方箋ラジオ』―――あのステッカーの番組だ。オルゴール曲の音色と共に、穏やかな女性パーソナリティの声が流れてくる。
<今週のご相談は……>
インターネットラジオというものをよく知らなかったがこの番組は人気が高いようで登録者数だけで十万人近くおり旺也は目を丸くした。スポンサーも付いているため、ステッカーなどリスナーへのプレゼントを作ることができているようだ。過去の配信分も全て聴けるようになっており、既に百回以上の配信がされている。全部聴いた方が良いのかと尋ねる旺也に、葉名は「最新回だけでも大丈夫ですよ」と笑った。彼女自身は最近はこの番組を聴く時間が取れていないとも話していた。
ちなみに聴きたがっていた張本人である颯は、最初こそ興味津々で聴いていたがやはり内容が難しかったのだろう。すぐに飽きてしまったようだ。
『処方箋ラジオ』はリスナーの相談に答えるお悩み相談型の番組だ。他の番組と少し違うのは、前の週に悩みに対する他のリスナーの助言を募集して翌週それを紹介する、そして番組のラストにパーソナリティが総括し自身の意見も交えながら答えていく形となっている。
他のリスナーの助言も丁寧に厳選されているのだろう。相談者に配慮された言葉が、優しい声と相まって心地よく聴くことができる。
偶々車内に流れてきたお悩み相談型の番組を何度か聴いたことがある。その時はあまりピンとこなかったが、この番組は何度も聴きたくなる気持ちが少し分かってしまう。
<それでは今日の処方箋ラジオを終わります。お聴きくださりありがとうございました>
あっという間に最新回を聴き終わると、旺也はメール画面を開いていた。
二週間後。
<今週のご相談は、先週ご紹介したラジオネーム:ガラス職人さんからのご相談です。“家族に不幸があり、子どもを一人で育てることになってしまいました。助けてくれる方がいてとても有難いのですが、迷惑になっていないか不安です。どのくらいの距離感で、どのくらい助けてもらってもいいのか、上手く掴むことができません”とのことでした>
まさか自分のメールが採用されるとは思っていなかった。しかもこんなに早くとは……。だが他の人の意見を聴けるのは嬉しい。
あれから葉名はちょくちょく旺也と颯の家を訪れた。颯が葉名に会いたいと地団駄を踏む度に彼女に相談すると早ければその日に、遅くとも翌日中には会いに来てくれる。在宅ワークなので時間を作りやすいんだと話す彼女にすっかり甘えてしまっている状況だ。彼女の訪問は短時間のこともあれば、長時間過ごすこともあり、時には夕食を彼女が作ってくれることもあった。颯だけでなく旺也も彼女との時間に居心地の良さを感じていたが、同時に優しい彼女に無理をさせていないか心配でもあった。
<ご家族に不幸があったということで、心よりお悔やみ申し上げます。リスナーの皆様からもお悔やみやガラス職人さんご自身を心配するメールが沢山寄せられています。全てを紹介することはできませんが、時間の許す限りみなさんのメールをご紹介していきたいと思います>
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