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しおりを挟む「おうちゃん、あれとって」
リビングでテレビを見ていた旺也の手を引き、颯は棚の上に置かれている大きなケースを指さした。このケースには、お菓子や雑貨の空き箱が無造作に入れられている。颯の工作用に葉名が準備したものだ。
「おう、これか」
「うん」
旺也が下ろすと颯はあれこれ見た後で、小さな可愛らしい装飾の箱を手に取った。
「一つで良いのか?」
「うん、これだけでいい」
颯はポケットから何かを取り出すと小箱に大事そうに入れた。旺也がぼんやり眺めているのに気付くと颯はキッと睨んだ。
「おうちゃんみないで!」
「あ、ああ」
急に怒られた旺也は目を丸くし、下ろしたケースを元の場所に戻す。颯はどこから取り出したのかピンクのリボンを小箱に結ぼうと苦戦していた。暫く見守っていたが、颯にはまだ難しいようだ。
「颯、結ぶか?」
「……うん」
少々不貞腐れた顔でリボンと小箱を差し出した颯は「なか、ぜったいみないでよ!」と念を押し、目を皿のように開いて旺也の作業を見ていた。
旺也は苦笑しながらリボンを付けると、颯はにっこり笑い「ありがと!」と受け取り走り出した。行先は勿論、キッチンで夕食の準備をしていた葉名のところだ。
「はなちゃん!」
「なあに?」
「これ!プレゼント!」
「わ~!ありがとう!」
葉名はその場でしゃがみ込むと、小箱を受け取った。ピンクのリボンを外し、中身を取り出した。
「可愛い!キラキラしててカラフルだね」
「でしょ?これはね……」
颯はそれを葉名の手から取ると、彼女の左手の薬指に付けた。
「ゆびわだよ!だいすきなひとのここにつけるんでしょ?」
「颯ちゃん、よく知ってるね」
「せんせいにきいたの!」
幼稚園に行き始めた颯は、日々新しい知識を吸収してくる。興味の幅があっという間に広がり、旺也と葉名は着いていくのも大変な程だ。
折り紙とキラキラのシールを駆使して作られたその指輪は、颯が必死になって作り上げた跡が見える。葉名は満面の笑みを浮かべ、颯を抱き上げた。
「颯ちゃん、ありがとう!とっても嬉しいよ、大切にするね」
「うん!はなちゃん、ゆびわもらったのはじめて?」
「え?うん、そうね。はじめてだよ」
「へへへ」
葉名に抱っこされた颯は、彼女越しに旺也を見て優越感をたっぷり滲ませて、にやりと笑った。あの得意げな顔はどこか見覚えがあった。旺也は少し考え、ハッと思い出した。颯のあの顔は、彼に意地悪をした三毛猫の顔と全く同じ表情だった。
<君たちへの処方箋:完>
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