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番外編:三毛猫みぃの憂鬱 ②
しおりを挟む(あの人のこと、噛んだの?)
リッキーは呆れ返って冷たい目で三毛猫を見た。当の三毛猫は悪びれもせず、寧ろ誇らしそうにしていた。
(そう!かんでやったの!)
(なんで……)
(どうせ、わるいやつだから!)
断言する三毛猫に対し、リッキーは悲しげに肩を落とした。
(みぃ……)
(なによ)
(あの人は、あいつとは違う)
宥めるようにそう言われ、三毛猫は言葉を飲み込み俯いた。
あいつは昔、よく葉名を訪ねてきていた。三毛猫もリッキーも彼のことをあまり好きにはなれなかったが、葉名が嬉しそうだったから今日のような意地悪は我慢していた。
暫く経って、あいつは来なくなった。そして葉名は毎晩声を殺して泣くようになった。布団に包まり、一人ぼっちで泣いていた。三毛猫は毎晩葉名の部屋に行き、無理矢理布団に入り葉名の傍にいた。
三毛猫は腹が立って仕方なかった。きっとあいつが葉名を傷付けたのだ。あいつが憎くて憎くて堪らなかった。もしもう一度目の前に現れたなら、顔中引っ掻いて、容赦なく噛み付いてやるのに。
それができないから、三毛猫は葉名の隣にいるしかできなかった。葉名は毎晩縋るように三毛猫を抱き締める。葉名の心を思うと胸が苦しくなった。
葉名が少しずつ元気を取り戻すと、リッキーは散歩に行く度に葉名に綺麗な景色を見せた。三毛猫も勿論着いて行った。
真っ赤な夕焼け。
白詰草の絨毯。
隠れた小川。
色鮮やかなコスモス。
「きれいね」
そう言って哀しげに笑う葉名が、本当に心から笑える日をずっと願っていた。
(またハナがないたらどうするの!)
(みぃ、あの人はあいつとは違う)
(……なんでそんなこと、いえるの?)
(ほら、見て)
リッキーは視線を家の中に向けた。開けられた窓から見えるのは、お菓子に夢中なちびっことそれを世話する葉名。あの男はそんな二人を優しく愛おしそうに見つめていた。
(大丈夫だよ、きっと)
(でも……)
(もしもまた葉名が泣いたら、みぃと僕がいる)
次はリッキーが誇らしげに胸を張る番だった。
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