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妻の言い分。
しおりを挟む「アーサー・・・すき。」
メアリーが抱きついても、メアリーからキスしても、愛の言葉を囁いても、アーサーは絆されない。スキンシップを返してくれることも、愛の言葉を返してくれることもない。
(寂しい・・・)
結婚前は、それでいいと思っていた。アーサーが自分のことを見ていなくても、一緒にいられたら、それだけで嬉しい、と。もしかしたら、一緒にいるうちに自分のことを見るようになるかもしれない、と。だけど、結婚生活が数年過ぎ、全く変わらないアーサーに、メアリーは寂しさを募らせていた。
「どうしてキスしてくれないの?」
「キスもハグもしてくれないなんておかしい!」
「浮気しているんでしょ!」
メアリーはどんどん激しい言葉をアーサーにぶつけるようになった。そんな言葉を言ったら、アーサーの気持ちは余計に離れていくことは頭では分かっていた。それでも抑えきれなかった。
◇◇◇
アーサーが工場にいる時間が長くなり、とうとう本当に嫌われてしまった、と悲しみに暮れていた。しかし、数日後。
「これは・・・?」
大きめのゆったりと座りやすい椅子。私の好きな水色のクッション付き。可愛らしい、丸みを帯びたフォルム。初めてのアーサーからのプレゼントに私は胸を踊らせた。だいすきなアーサー手作りの、この椅子は私の宝物になった。
◇◇◇
「アーサー。わたし、邪魔になってない?」
アーサーの工場に入り浸るようになって、数週間。一日の殆どをアーサーと過ごせる幸せを、喜んで享受していたが、ふと不安になる。
「・・・なってない。」
ちゃんと否定してもらえて、ほっとする。アーサーはぎこちなく、私の手に自分の手を重ねた。何故だろう。アーサーは、あの椅子を作ってから、ほんのたまに私に触れるようになった。
「・・・明日、買いにいくぞ。」
「へ?何を?」
「・・・指輪。」
結婚して数年が経ち、もう諦めてしまっていた指輪。アーサーが遠慮がちに擦る、私の左薬指は熱を持ち始めていた。
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