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キャロラインは、パトリシアと待ち合わせ、王城へ向かった。二人は丁重に案内され、王族のプライベートスペースである、中庭の東屋に通された。
「キャロライン、大丈夫?」
「貴女は慣れてるかもしれないけれど、私には畏れ多い場所だわ。」
顔色の悪いキャロラインをパトリシアは心配してくれたが、キャロラインの動悸は収まらない。
「そんなに緊張しないで。アーノルド様は、私の親友に会いたいと常々仰っていたの。エリック殿下だって、貴女に良い印象があるから話してみたいと仰っていたのよ。」
「だけど•••。」
「なあに?」
「アーノルド王太子殿下の婚約者を決める時、私は一度もお会いしないまま、パトリシアに決まったでしょう。私は、決して婚約者になりたいなんて思わなかったし、パトリシアが婚約者になって良かったと思ってるの。だけどね、一度も会わないなんて、私に余程欠陥があるのかなって。だから、気が進まないの。」
ずっとパトリシアには言わなかった思いだった。自分を嫌っている、アーノルド王太子に会うのを目前に、想像以上にパニックになっていたらしい。ぽろぽろと言葉を漏らしてしまった。パトリシアは目を丸くして聞いている。
「貴女、そんな風に考えていたの?あれは•••!」
「パトリシア、キャロライン嬢、待たせてしまい申し訳ない。」
パトリシアが何かを言い掛けた時、アーノルド王太子とエリック第二王子が現れ、話は中断した。
キャロラインが侯爵令嬢らしく美しい礼をすると「今日はプライベートだから、無礼講でね。」とアーノルドがウインクをした。美丈夫な王太子のウインクは、他の令嬢が見たら黄色い声を上げるだろう。だが、自分が嫌われていると思い込んでいるキャロラインにとっては戸惑いしか生まなかった。
「兄上のウインクに、ときめかない令嬢を初めて見ました。」
「ああ、残念だな。」
揶揄うエリックと、それに冗談交じりで返すアーノルドは、恐らくキャロラインの緊張をほぐそうとしてくれているのだろう。キャロラインが微笑みを返すと、二人も笑顔を見せた。だが、キャロラインが肩の力を抜くことが出来たのはほんの一瞬のことだった。
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