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しおりを挟む舞踏会当日。
エリックより、「迎えに人を遣るね」と連絡があり、準備を終え待っていると、見慣れた馬車がキャロライン宅の前に止まった。
「な、なんで。」
「僕が行きたいと言ったんだ。」
正装姿のロビンが微笑みを浮かべ、キャロラインの手を取った。理性とは裏腹にキャロラインの胸は高鳴ってしまう。
「キャロライン、とても似合っているよ。」
「あ、ありがとう。」
(落ち着かないと。きっと家が近いから、ロビンはお願いされただけよ。)
平静を装いロビンのエスコートによって、馬車に乗り込むが、席についてもロビンは手を離さなかった。今までにこんなことは無い。
「ロ、ロビン?手が•••。」
「ねぇ、キャロライン。今日、僕と踊ってくれる?」
キャロラインは戸惑うが(エリック殿下が私の相手ばかりはしていられないから、エリック殿下が相手出来ない時間の、私の相手をロビンに頼んだのね)と納得する。
「ええ、勿論。」
「ありがとう。」
いつもは表情が乏しいロビンが心底嬉しそうに笑うのを見て、キャロラインは瞠目した。
(エリック殿下の役に立てて嬉しいのだわ。)
(•••だから、勘違いしてはいけない。)
あれ程、冷たい声でキャロラインのことを拒否していたのだから。一緒にいるだけで迷惑になってしまう。早く、早く離れよう。そう思うのに、上手くいかない。繋がれたままの熱い手が、心を冷やしていく。
◇◇◇
王城に辿り着くと、煌びやかなホールを抜け、王族や関係者が控える部屋の一つへロビンと共に案内される。絵本から飛び出した王子様を思わせる、美しい正装姿のエリックが笑顔で迎えてくれた。
「キャロライン嬢、よく来てくれたね。これほど美しい君をエスコートさせて貰えるなんて嬉しいよ。今日は宜しくね。」
「は、はい。」
(いよいよ、エリック殿下にエスコートされるのね。)
徐々に緊張が高まると、挨拶すら上手く出てこない。ドギマギしている所で、急にロビンがエスコートで触れていた手を離し、肩を抱いてきた。
「ちょ、ちょっとロビン?」
「エリック殿下。キャロラインには私がエスコートする許可をいただきました。どうか、キャロラインをエスコートする権利を譲って下さい。」
「へ•••?」
「ロビン。キャロライン嬢はそう思ってはいないようだけど?」
「いえ。一緒に踊る約束をしました。」
あのことか、とキャロラインが気が付く。ロビンはやや誇らしげにエリックへ伝えているが、あれはエスコートの許可をした訳では無い。大体、何故ロビンはこんな事を言い始めたのか、皆目検討がつかない。
「ロビン。お前は優秀だが、言葉が足りな過ぎる。キャロライン嬢には全く伝わっていないようだよ。」
目を白黒させていたキャロラインを庇うように、エリックは指摘した。そして、ロビンに肩を抱かれたままのキャロラインを引き寄せようとエリックが手を伸ばした時。
「キャロラインは、私のものです。」
キャロラインはロビンの暖かい腕の中に閉じ込められてしまった。
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