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しおりを挟む「僕は」
漸く語り始めたフィリップへシャルロットは頷きを返した。
「君と初めて出会った頃から、君とずっと一緒にいるものだと思っていた」
「……っ、ええ」
「そして、君も同じ想いだと……そう考えていた。婚約は君があまり興味が無いように見えて……それで君が婚約をしたい時期になれば申し込めば良いか、なんて呑気に考えていた」
フィリップが真剣な眼差しでシャルロットを見つめる。気恥ずかしくて堪らないのに視線を逸らせなかった。
「そんな時に君の見合い話だ。僕は動揺して、慌てて君と僕の両親の元へ行き、君との婚約を願った……君からの了承を得る前に」
シャルロットの顔色が徐々に悪くなっていった。婚約を知ったシャルロットはフィリップへこう詰め寄ったのだ。「とんでもないことになった、どうにかして婚約を解消しなければ」と。
シャルロットの顔色に気付いたフィリップは彼女の髪をふわりと撫で「僕が臆病だったんだ」と苦笑した。
「君に婚約解消を持ち出され、君が婚約を嫌がっていると思った。だけど婚約解消は絶対したくなかった。だから、婚姻式まで極力君に会わないようにした……婚約解消を切り出されないように」
「……フィル」
「今夜も本当ならすぐここに来たかった……だけど君がこの婚姻を嫌だと思っているなら無理をさせたく無くて、わざと遅れて来た」
シャルロットはじっとフィリップを見つめた。
「君の本心を聞くのが怖かった。本当なら婚約解消を望んでいる君を解放すべきだろう。だけど出来なかった。君との婚姻だけは、君と過ごす未来は諦めきれなかったんだ」
フィリップの瞳が不安そうに揺れている。シャルロットは意を決してフィリップの胸に飛び込んだ。
「わ、わたくしだって……!」
「シャル?」
「わたくしだって一緒にいるのはフィルが良いって、ずっとずっと想っていたわ」
背中に回されたフィリップの腕に力が籠る。耳元で囁かれた「……良かった」という声は微かに震えていた。
「……ずっと不安にさせてごめん」
「……わたくしも早とちりして婚約解消なんて言ってごめんなさい」
抱き締められたままでも彼が首を横に振ったのが分かった。熱く抱き締められていると、これまでの不安や哀しみが解けていくように思えた。どれくらいそうしていただろうか。ふいにフィリップが口を開いた。
「昼間の」
シャルロットが顔を上げると、目の前の彼は熱っぽく自分を見つめていた。その瞳に気付き、シャルロットの顔は熱を帯びた。
「婚姻式の間、君のことばかりずっと見ていた。君はこの世の者とは思えないほど美しくて輝いていた」
「……っ」
「とても似合っていた。言葉にできないほど、美しかった」
「……ばか」
シャルロットの顔に手が添えられる。心臓が早鐘を打っているのが分かる。そっと瞼を閉じると、彼の唇が自分のそれに重なった。
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