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しおりを挟む「アレクサンドラ嬢、本当に一つの部屋で良かったのか?」
「アルバート様、もう諦めてくださいませ。私がどうしても同じ部屋が良かったのです。」
アルバートの心配を余所に、悪戯っ子のようにお茶目な表情で笑うアレクサンドラにまた心を奪われた。アルバートは、国の行事や会合で見掛けていた凛とした王太子妃候補と目の前にいるアレクサンドラとの違いに、既に翻弄されてしまっていた。
「あー、アレクサンドラ嬢?少し話がしたい。」
「サンドラ、とお呼びください。もうすぐ妻になるのですから。家族や親しい方はそう呼ぶのです。」
これは大嘘だった。王太子妃候補として社交はきちんとしていたが、愛称で呼び合う友人はいなかった。勿論家族も愛称で呼び合えるような関係ではなかった。
「・・・アレクサンドラ嬢、まず私の膝から降りて頂けないだろうか。」
アレクサンドラは、部屋に案内されアルバートがソファに腰かけたのと同時に、当たり前のようにアルバートの膝に座った。これには、野獣辺境伯の異名を持つアルバートもたじたじとなった。
「アルバート様、私寒くって・・・。」
「す、すまない。気付かず申し訳ない。」
冬の日の馬車は冷える。アルバートのように鍛えている武人ならともかく、薄いドレスしか着ていないアレクサンドラには辛い寒さだっただろう。女慣れしていないアルバートは全く気付かずにいたことを恥じ、慌てて自身のジャケットをアレクサンドラの肩へかけた。
「これではアルバート様が寒くなってしまいます。」
「大丈夫だ、鍛えているから。」
「・・・それなら、御借りします。ありがとうございます。」
心底嬉しそうにアルバートのジャケットに頬を寄せるアレクサンドラを見ると、アルバートは思わず本当に想われているのではないかと勘違いしそうになる。自分はただ、アレクサンドラを保護するための契約結婚をするだけだというのに。
「アレクサンドラ嬢。」
「サンドラです。」
「あー、サンドラ嬢?」
「違います。嬢も要りません。」
「・・・サンドラ」
「・・・っ!はい!」
花が開いたように笑う彼女を見ると、柄にもなく胸の辺りが苦しくなる。
「私もアルバート様を愛称でお呼びしたいですわ。」
キラキラとした瞳でそう言われたら、アルバートは拒否する術を無くしてしまう。
「アル、とお呼びください。」
「・・・アル?」
首を傾げ呼び掛けるアレクサンドラを見ると強く抱き締めたくなる衝動に駆られる。武人の強靭な理性をかき集め、アルバートは話し始めた。
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