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しおりを挟む「アレクサンドラ様!よくお似合いですわ!」
「お姉様の美しさがより映えるウェディングドレスですね!流石アルバート様、お姉様の良さをよ~く理解されておりますね!」
アレクサンドラの美しすぎるウェディングドレス姿を見て、専属侍女ジェニーとマーガレットが声を上げた。
アレクサンドラがアルバートの婚約者となり辺境伯領に来て一年後、今日は待ちに待った結婚式の日だ。
一日も早く結婚式を挙げたかったアレクサンドラだったが、義母であるハミルントン公爵夫人が出産を終え、落ち着くまで待つこととなり、一年掛かってしまった。
「式の前に、アルバート様は来られないんですの?」
「ええ。式の前に家族でゆっくり過ごした方がいいって。」
マーガレットの問いに素知らぬ顔をして答えたアレクサンドラだったが、本当の理由は違う。
アレクサンドラだって一番にアルバートに会いたかった。だがアルバートから「我慢できなくなるかもしれないから。」と甘く囁かれ、何も言えなくなってしまった。代わりに、最終チェックの際に、アルバートにたっぷり堪能してもらったが。
「アレクサンドラ、とても素敵だわ。」
「お義母様、ありがとうございます。」
短い間だが愛情を掛けて育ててくれた、義母である公爵夫人が目に涙を溜めながら、幸せそうに笑った。隣にいる乳母が、半年前に生まれた義弟コリンを抱いている。コリンも乳児用の礼服を身に付けており、可愛らしい。
「お父様はどこに行ったのかしら。」
マーガレットがコリンの頬をつつきながら不満そうに言った。父であるハミルントン公爵は随分前から姿が見えない。アレクサンドラとは一年ぶりに会うにも関わらず、到着後挨拶もそこそこに姿を消してしまった。
「花嫁の父というものは、複雑なのよ。」
公爵夫人が可笑しそうに笑うのを、娘二人は不思議そうに見ていた。
◇◇◇
いよいよ式が始まる頃、式場の扉前でハミルントン公爵は待っていた。これから式場の準備が整い次第、父のエスコートで入場する為、ここには父とアレクサンドラの二人だけだ。父が帰ってしまったのでは無いかと冷や冷やしていたアレクサンドラは、姿を確認でき小さく息を吐いた。
「アレクサンドラ•••。」
「お父様。どこにいらしたんですの?」
苦虫を噛み潰したような顔をした公爵は、アレクサンドラの質問には答えなかった。
「もうそろそろですよ。」
案内係の者から声が掛かり、二人は立ち位置に待機する。父から差し出された手を恐る恐る取ると、苦笑いされてしまう。
「アレクサンドラ。」
「•••はい。」
アレクサンドラがチラリと見上げるが、父は前を向いたままだ。父の顔から感情は読み取れない。
「お前は自慢の娘だ。」
「お父様•••。」
扉が開く。二人は一歩一歩、進んでいく。少し先には、麗しい正装姿のアルバートが優しい笑顔を携えて待っている。
十五年前、クリストファーへ宣言した夢『きしさまのおよめさん』が今日漸く叶う。
〈本編 おしまい〉
番外編が続きます!またしばらくお付き合いください!
応援ありがとうございます!
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