【完結】王太子妃候補の悪役令嬢は、どうしても野獣辺境伯を手に入れたい

番外編：キャサリン王女の幸福。２

　それから、キャサリンは護衛達の目を掻い潜り、ケネスに会いに行く事が日課となった。ケネスの父ネルソン伯爵は、植物学者であり、研究の他に王城内の温室や庭園の管理をしていた。

　ケネスは、博識な父を尊敬しており、頻繁に仕事に付いてきては、植物の世話の補助をしていた。


　「おとうさまのように、しょくぶつのおしごとをしたい。」と目を輝かせて話すケネスは、キャサリンにとって新鮮な気持ちにさせてくれる友人だった。そして、キャサリンが王女だからと特別扱いをしない、貴重な友人でもあった。




「ケネスは、いつもしょくぶつのおせわしていて、えらいねぇ！」



「ぼくのすきなことだからね。キャサリンも、おうじょさまのべんきょう、たいへんなんでしょう。」



「う、うん。」



　王女教育に熱心ではないキャサリンは、自分が恥ずかしくなった。同い年のケネスが日々努力しているのに、のんびりしていることに罪悪感が芽生えた。


「わたし、もうすこし、おべんきょうがんばってみる！」



　そうして、キャサリンは王女教育にも熱心に取り組むようになった。マイペース王女が急に人が変わった様子を見て、両親の国王夫妻も、兄のクリストファーも驚いてはいたが、手放しで喜んでくれた。ある一人だけが目を光らせていた。





◇◇◇




　それからしばらく経った後、キャサリンは護衛を撒いて、こっそりケネスに会っていることがバレてしまった。


　しこたま叱られた後、ケネスに会ってはいけない、と国王夫妻に言い渡された。王族が無闇に特定の友人、しかも異性の友人を作ることは良しとされなかったのだ。



　キャサリンは自室での謹慎を課され、しばらく泣き暮らした。「ケネスに会いたい」と毎日訴え、食事も取らない日々が続き、使用人達が頭を抱え始めた頃。






「ねぇ、キャサリン様。ケネスに会いに行きませんか？」



　十歳にして妖艶な雰囲気を漂わせる、兄クリストファーの婚約者アレクサンドラが、神々しい程美しく微笑んでいた。