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番外編:キャサリン王女の幸福。1
しおりを挟むクリストファー元王太子の妹、キャサリン王女は幼い頃から王女らしくない天真爛漫な性格だった。
というのも、二つ歳上の兄クリストファーが王位継承することは、物心ついた頃には既に決まっていた為、キャサリンはのびのびと育てられたからだ。父である国王陛下の歳の離れた弟がいたにも関わらず、幼いクリストファーが指名されていた。
これは、クリストファーが優秀だからではない。彼の婚約者、アレクサンドラ=ハミルントン公爵令嬢が素晴らしい淑女であり、公爵家の後ろ盾があまりにも強かったからだ。
その為、キャサリンは暢気な王女だった。クリストファーやアレクサンドラが忙しそうにしていても、のんびり過ごしていた。まぁ、クリストファーは別の意味で忙しかったのだと後から分かったのだが。
そんなマイペース王女キャサリンは、幼い頃から護衛や侍女の目を盗み、王城内を探検することが好きだった。見つかったら、こっぴどく叱られるのも分かっていたが、止められなかった。
(きれ~い!)
この日、キャサリンは王城の庭園で探検していた。いつも侍女達と来るときは、入れないような奥まで入り込むと、濃いピンク色の花が咲き誇っていた。花に手を伸ばすと。
「あぶないよ!」
振り返ると、鉢植えを抱えた少年が眉を寄せていた。年はキャサリンと同じくらいだ。
「あぶない?」
「このはな、ブーゲンビリアっていうんだけど、えだにトゲがあるんだ。」
近くに行き、じっくり見てみると確かに棘があった。これを触っていたら怪我をしていただろう。
「おしえてくれてありがとう!ねぇ、それはなあに?」
キャサリンは少年の手にある鉢のことが気になった。これはね、と少年は優しく笑って教え始め、キャサリンはそれをキラキラした瞳でずっと聞いていた。これがキャサリン王女とケネス=ネルソン伯爵令息との初めての出逢いだった。
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