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番外編:ジェニーの密会。8
しおりを挟む「つまり、ジェニーはお兄様の要望を断っていて、その為に、お兄様が今滞在している宿に通ったり、貴女が口論している様子を見られたりしていた訳ね。」
「その通りです……。」
申し訳ありません、とジェニーから何度目かの謝罪を受け、アレクサンドラは「もう謝らなくていいのよ。」と笑った。
「私たちのお節介ではあるけれど、皆、ジェニーが悪い男に騙されでもしているんじゃないかと心配していたの。」
「はい……。」
「中でもジャンは、ずっと貴女を心配していたわ。」
「へ?」
「お、奥さま!」
ジェニーは意外そうに目を丸くした。いつも飄々としているジャンが、自分を心配しているとは思わなかったのだろう。一方アレクサンドラの口から急に、自分の名前が出てきたジャンは慌てふためいている。
「ジェニー。こちらは良いから、ジャンと少し話をしてきなさい。」
「は、はい……。」
不思議そうに立ち上がるジェニーと、明らかに不満そうにしているジャン。だが、ジャンがその申し出を断ることもできず、渋々とドアの方へ向かった。二人の退室を見届け、アレクサンドラは妖艶に笑った。
「それで、カリッド様?」
「は、はいぃぃ!!」
崇拝している女神に微笑まれたカリッドは目を輝かせて返事をした。アレクサンドラの、含みのある微笑みを見たアルバートは、ぞくりと背筋が凍った。
◇◇◇◇
「……サンドラが平和的に話を進めるとは意外だった。」
「う……アルは私のこと、何だと思っていますの?」
口を尖らすアレクサンドラを見て、アルバートは嬉しそうにけらけらと笑った。アレクサンドラに近寄るカリッドに怒りを覚えたアルバートだったが、彼の処遇はアレクサンドラに任せたのだった。
「カリッド様は、私への感謝が行き過ぎていますし、ジェニーがいくら断っても諦めずにジェニーを長期間困らせたことは、不満ですが……。」
アレクサンドラは、カリッドへ「ご実家の子爵家を守って下さることが、カリッド様への一番の願いです。」と伝えた。敬愛するアレクサンドラの願いに、カリッドは大層感激し、早速子爵家の為に働こうと慌てて帰っていった。
「多少、お仕置きすることも出来ましたが、それではジェニーが可哀想ですしね。」
真面目な彼女が、迷惑を掛けたことで辞職を考えるかもしれない。その方がアレクサンドラにとっては、損害が大きい。
「君がジェニーを気に入ってくれて良かった。」
アルバートは目を細めて、アレクサンドラを引き寄せた。
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