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番外編:ジェニーの密会。10
しおりを挟む「……旦那様が喜ばれるな。」
少しの沈黙の後、ジャンは緊張を解くような柔らかい声色でそう言った。
「旦那様が、ですか?」
「ああ。ジェニーには伝えていなかったが、奥さまがこちらに来られる時、旦那様は奥さまの侍女を誰にするか悩まれてきた。」
アレクサンドラがこちらに来る時、アレクサンドラを保護するための婚約だと、ジェニーは聞いていた。誠実なアルバートは、どんな目的だろうと婚約者に心地良く過ごしてほしいと考え、侍女の選定を慎重にしたのだろう……知っての通り、あまり時間を置くこともなく、二人は溺愛し合う婚約者同士になっていたが。
「ジェニーがここまで、奥さまのことを思ってくれていたら、旦那様も侍女選定に悩んだ甲斐があっただろう。」
「い、いえ。それだけ、奥さまが魅力的な方なのです。」
アレクサンドラは確かに恐ろしい面がある。他の者より何手先も読み、裏工作もお手の物だ……だが、アルバートに恋焦がれる様は、普通の乙女のようで可愛らしい。そんなアレクサンドラがジェニーは大好きだった。
「これまでの事情は分かった。兄上のことで騒いでしまい申し訳ない。改めて謝罪させてほしい。」
「そ、そんな!こちらこそ誤解を生むような行動を取ってしまい申し訳ありませんでした。」
上司であるジャンに頭を下げられ、ジェニーも慌てて頭を下げた。
頭を下げていると、自分の膝の上に重ねて置いている両手が目に入る。そして、その上にジャンの手が置かれた。
「ひゃ!」
驚きの余り、勢いよく頭を上げると、先程よりほんの少し近い距離からジャンに見つめられる。
「あ、あの……ジャンさん?」
「……それで、どうしたら君が異性と会っていたことに口を出せる関係になれる?」
「へ?」
◇◇◇◇
お知らせ:
新作『婚活写真、お撮りします。』
昨日より公開しております。ライト文芸大賞エントリー中です。いつもと少し違うテイストになっておりますが、お読み頂けたら嬉しいです!もし、お楽しみいただけましたら、投票も宜しくお願い致します!
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