やさしい異世界転移

第2章 マジックフェスティバル

【71話】 決勝に臨む

　夕焼けの赤い空の下、俺は決勝への決意を決めながら寮へとたどり着いた。

「あっユート！お帰り！！」

　寮に帰った俺を真っ先に出迎えてくれたのはレイナだった。

「ほらこっちこっち！」

　俺はレイナに手首を掴まれて寮の中に引っ張られるように連れて行かれた。

「な、なんだよ」

　少しこの状況を嬉しく思いながらそのまま大食堂へと連れて行かれた。

　そしてそこには……

「「ユウト！！明日の決勝、頑張れ！！」」

　大食堂には学園の一年が全員集合しており、俺が到着するなり全員でそう言って数人で何かを掲げた。

　そこには『カテ！ユウト！！』という文字が書かれていた。
　それはまるで応援旗のようで……

「実はね、マジックフェスティバルの決勝には応援旗を掲げて選手を応援するって文化があるの。
それで今日がそれの制作日でみんなで作りに行ってたんだ」

　応援旗に目が行っていた俺の隣でレイナが話す。
　だから今日は朝から誰もいなかったのか。

「ユートには驚かせたくって、どう……かな？」

　不安な顔でレイナは俺を見つめてきた、他の生徒にも緊張がはしる。

「あぁ、嬉しいよ」

　それは本当の気持ちから出た言葉だった。
　それを聞いたみんなは安心したり喜んでくれた。
　
　ここまでしてくれたみんなの気持ちに応えるためにも明日の決勝で俺は、俺なりに全力を尽くすつもりだ。

◇ ◇ ◇

　翌朝・マジックフェスティバル決勝の日

　目が覚めて、着替えて、魔性輪をはめて今日の準備をする。

　支度が終わり、会場へ向かうため部屋を出た。
　大食堂を通り過ぎ、寮の入り口まで歩く。

　そこには俺の事を待っていた生徒達がいた。1人1人、「頑張れ」と一言激励を受けながら進む。

　ヴァーリン、パートリー達も激励を俺に送ってくれた。
　しかしその中には1人だけいない人物がいた。

「よう、ユート！今日は俺の分まで頑張ってこいよ」

「なぁ……レイナは？」

　激励をする生徒の最後の方にいたデイにここにいないレイナの事を聞いた。

「あーーまぁ大丈夫だと思うぜ」

　少し歯切れが悪い言い方をする。
　でもデイが大丈夫と言っているのなら、問題はないだろう。
　そう思い、俺は同級生達に見送られながら寮を出て会場へ向かった。

　途中、通りすがりの人達にも声援を送られる。それほどこのマジックフェスティバルという行事はこの都市では大切なのだろう。

　そしてついに会場へ辿り着く。

　クラックには体の事情がある。けれども彼自身が俺との全力勝負を望むのなら、俺もそれに全力で応えるまで。

　会場の入り口付近に１つの人影が見えた。

「……きた。おーい！ユート！！」

　そこにいたのはレイナだった。