たとえこれが、恋じゃなくても

ryon*

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妥協案②

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 口内に捩じ込まれた、彼の熱い舌先。
 でもさっきみたいに乱暴じゃなく、優しく、僕のペースに合わせてくれているのを感じる。

 執拗なまでの、長く甘い口付け。
 息が乱れてはいるが、聡哉に教えられた通り鼻で呼吸をしているから、ちょっぴり苦しかったけれど夢中でそのキスに応えた。

 セックスとは違い、唇と唇が触れ合うだけの行為。
 ……なのになんでこんなにも、気持ちいいんだろう?

 なのにしばらくすると聡哉は、僕の唇を解放した。
 だけどそれが寂しくて、ねだるみたいに伸ばした腕は、苦笑して避けられてしまった。

 まだ頭がちょっとボーッとしていたから、言葉は出てこない。
 でももっとして欲しい、なんでやめちゃうのと、恨みがましい視線を向けた。

 すると聡哉は困ったように笑い、くしゃりと僕の髪に触れた。

「これ以上続けると、こっちがヤバいから。
 とりま風呂、入るだろ?
 もう沸いてるから、先にどうぞ」

 言われた言葉の意味が分かったから、途端にまた恥ずかしくなってしまった。

 こくこくと無言のまま何度も頷き、着替えの入ったリュックを手に取って。
 一目散に浴室に向かい、駆け出した。

***

「はぁ……聡哉め、エロ過ぎるんだけど」

 湯船にザブンと浸かりながら、つい零れ出た愚痴のような発言。
 ……でも、嫌じゃないんだよなぁ。

 そりゃあ今からヤりますよって言われたら、ビビる。
 正直、めちゃくちゃ怖い。

 でもキスはもっとしたいし、ぎゅって抱き締めても欲しいと思ってしまうのは、僕のワガママなんだろうか?
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