たとえこれが、恋じゃなくても

ryon*

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熱④

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「晴は、平気?」

 最初は何を聞かれたのか、全く分からなかった。
 だけどその意味を理解した途端、一気に恥ずかしくなってしまった。
 
「平気!っていうか、お前に変な事をされないように、縛ってたんだし」

 ブツブツと、言い訳のように呟いた。
 幸い僕のジュニアはもう落ち着き、おとなしくなっていたから、これは嘘ではない。
 すると彼はクスリと笑い、また僕の頭をくしゃりと撫でた。

「そっか。ちょっと、残念。
 今度は一緒に、気持ちよくなろうな?」

 手を引かれ、そのまままたベッドに座らされて。
 頬に唇を寄せられ、軽く口付けられた。
 だけどそれにイエスと答えるのも、逆にノーと答えるのも嫌だったから、無言のまま僕も彼のほっぺたにキスを返した。

「このまま、一緒に寝よっか?
 ちょっとベッドは狭いかもだけど、離れたくない」 

 優しく抱き寄せられ、耳元で囁かれた。
 確かに二人で眠るには手狭な感じではあったけれど、僕も聡哉とくっついていたかった。

 だからコクンと小さく頷き、彼の背に腕を回した。
 抱き締めあったまま、ベッドにごろんと横になる僕達。

 なんだかそれが照れ臭くて、ふたり顔を見合わせたままクスクスと笑った。

「おやすみ、晴。大好きだよ」

「……僕も。
 おやすみなさい、聡哉!」

 まだこういった会話に慣れない僕は、きちんと大好きと言葉には出来なかった。
 だけどきっと、ちゃんと僕の気持ちは彼にも、伝わっているはずだ。

 三年前の自分には想像も出来なかった、幸せな時間。
 彼が自ら命を絶つ理由も、無くなったいま。
 ……僕はこの幸せな時間がこれからも続いていくのだと信じ、疑いもしなかった。
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