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買い物を終え、自宅まで送り届けて貰う車中にて。
「ねぇねぇ、陸斗くん。
この間の約束、覚えてる?」
そう聞かれたのだけれど、その約束とやらの内容がピンと来ず、首を傾げた。
すると西園寺さんは残念そうにちょっと眉尻を下げ、拗ねたような口調で告げた。
「やっぱり、忘れてる‥‥‥。
今度俺にも君の手料理を、振る舞ってくれるって約束したじゃない」
あぁ……そう言えば、そんな話をしたかもしれない。
だけど彼の家を訪れるのは、正直少し‥‥‥いや、かなり抵抗がある。
最近うっかり忘れそうになるが、この男は紛れもないストーカーなのだ。
それならば自宅に招き、家族の目がある所で料理をする方がまだマシかもしれない。
そうなればいくら変態の西園寺さんでも、さすがに僕に対して妙な真似なんて出来ないだろうし。
そう考えたから、渋々ではあったけれどその旨提案したら、西園寺さんは満面の笑みを浮かべてそれを受け入れた。
「じゃあ来週の、土曜日でも良いかな?
確実に予定が空けられそうなのは、その日くらいだから」
ちょうどそのタイミングで、車は僕の自宅前に到着した。
「良いですよ、では来週の土曜で。
だけどひとつだけ、条件があります。
朝と夜の送迎は、もう止めて下さい。
……あなたの体が、心配なんです」
最後の一言は、ちょっと余計だったかもしれない。
だけどこれくらい言わないと、きっとこの人は、頑として譲らないとも思われる。
駄目押しとばかり、車を降りた僕を見送るために開けられた窓から小指を差し込み、指切りを求めた。
買い物を終え、自宅まで送り届けて貰う車中にて。
「ねぇねぇ、陸斗くん。
この間の約束、覚えてる?」
そう聞かれたのだけれど、その約束とやらの内容がピンと来ず、首を傾げた。
すると西園寺さんは残念そうにちょっと眉尻を下げ、拗ねたような口調で告げた。
「やっぱり、忘れてる‥‥‥。
今度俺にも君の手料理を、振る舞ってくれるって約束したじゃない」
あぁ……そう言えば、そんな話をしたかもしれない。
だけど彼の家を訪れるのは、正直少し‥‥‥いや、かなり抵抗がある。
最近うっかり忘れそうになるが、この男は紛れもないストーカーなのだ。
それならば自宅に招き、家族の目がある所で料理をする方がまだマシかもしれない。
そうなればいくら変態の西園寺さんでも、さすがに僕に対して妙な真似なんて出来ないだろうし。
そう考えたから、渋々ではあったけれどその旨提案したら、西園寺さんは満面の笑みを浮かべてそれを受け入れた。
「じゃあ来週の、土曜日でも良いかな?
確実に予定が空けられそうなのは、その日くらいだから」
ちょうどそのタイミングで、車は僕の自宅前に到着した。
「良いですよ、では来週の土曜で。
だけどひとつだけ、条件があります。
朝と夜の送迎は、もう止めて下さい。
……あなたの体が、心配なんです」
最後の一言は、ちょっと余計だったかもしれない。
だけどこれくらい言わないと、きっとこの人は、頑として譲らないとも思われる。
駄目押しとばかり、車を降りた僕を見送るために開けられた窓から小指を差し込み、指切りを求めた。
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