その男、ストーカーにつき

ryon*

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 別に家族が一晩や二晩留守にしたところで、僕は困るような年齢の子供じゃない。
 一応再来年には成人式も迎える予定の、選挙権もある大人なのだ。

 だけど何かあると困るから、一応予定くらいは確認しておこうと考え、何の気なしに聞いた。

「で、その日程はもう決まってるの?
 自由に、選べる感じ?」

 すると母親は嬉しそうに笑い、手帳を僕に見せながら答えた。

「えっと……何日か候補はあったんだけど、他の日は予約で埋まっちゃってたのよ。
 だから少し急なんだけど、来週の土曜から泊まりで一泊してくるわ」

「へぇ、そうなんだ。
 来週の、土……曜日!?」

 思わず声が、裏返った。
 だってその日は、そう。
 西園寺さんが僕の作ったご飯を食べに、家に遊びに来る予定の日だったのだ。

 愕然としながらも再び封筒を手に取り、ちゃんと内容を確認しようとした。
 しかし手が震えていたせいで、それは中身を取り出す前に床に落ち裏返った。
 そこに記されていたのは、無駄に豪華な黄金色の装飾が施された『西園寺プレシャスグループ』の文字。

「ヒィ……!!」

 拾い上げようとした瞬間それが目に入ってきたモノだからゾッとして、反射的にその封筒を床に投げ捨てた。

 本当にこれ、ただの偶然か?
 いや……ここまで重なるなんて、あり得ないだろ。

 ハラちゃんのお母さんが、ランチのタダ券を手に入れたのも。
 
 さらにはそこでの抽選会で、温泉旅行を引き当てたのも。

 その上他の日程が埋まっていたから、来週の土曜日に自動的に日取りが決定したのも。

 ……どんな手を使ったのかは分からないが、こんなの絶対に西園寺さんが仕組んだヤツだろ!
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