口寂しさを、紛らす方法【BL短編集】

ryon*

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舞台を降りたら、僕達は⑤

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 戸惑ったように、彼の瞳が揺れる。
 明らかに困惑した様子だったけれど、構わずやや強引に口付けた。

 拒絶されるかと、思った。
 セックスは出来ても、セフレには。
 ……しかも男相手には、キスは出来ないって。

 だけど後頭部を、押さえ付けるみたいに強く抱き寄せられて。
 ……そのまま激しく、舌を絡め取られた。

 この男と、出逢う前。
 女の子と付き合った経験も、もちろんある。

 だけどその子達とは、甘く蕩けるようなキスしかした事がなかった。
 だからこんな風に、食われちゃうんじゃないかって思うくらい激しく貪り合うキスは、初めての経験だった。

 その夜僕らは無言のままお互いをめちゃくちゃに求め合い、奪い合った。

 いつもは行為が終わると、彼はさっさと僕から体を離す。
 だけどこの日はそのままふたり、何度も達したから意識を失うみたいにして抱き合ったまま、深い眠りに付いた。

***

 その、翌朝。目が覚めて、途端に不安になった。
 酔ってキスを、したけれど。
 ……コイツは後悔、していないのかなって。

 本当に体だけの関係だったら、もし彼にいつか恋人が出来たとしても、笑い話に出来る気がした。
 それを言い訳に自分もただ単に、性欲処理だけを目的としているふりをして、セフレにならないかという彼のゲスな提案に乗った。

 もう自分の邪な気持ちはバレバレなのだろうと思っていた癖に、彼の節操なさとだらしなさを非難しながらも、その優しさに甘えたのだ。

 なのに、キスをした瞬間。
 ……これまで圧し殺してきた気持ちが、一気に溢れ出してしまった。
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