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銀蝶

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雑貨屋さん、オープンです

お勉強

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今日は、お勉強の日です。

町に唯一あるという、図書館に来ています。

図書館と言っても、お役所的な建物の一部にある、本が置いてあるお部屋だけど。

初日に休んだ公園の奥に、西区のお役所がありました。

受付で、図書館を利用したいと申し出て、許可されれば入れる仕組みらしい。

「ミルシィ・アーケルドさんですね。はいどうぞ。図書館での飲食や、騒ぐのは禁止されていますので、ご注意を」

「はい」

猫はいいの?  誰もつっこまないけど、いいのねー?

ポシェットだけ持って、案内に従って図書館にたどり着く。

絨毯が敷かれているから、足音はたたない。

歴史を感じさせる古めかしい木造の洋館で、柱が太く窓は小さめ。薄いカーテンがかけられている。

外を見れば公園の緑が見えた。

ドアと窓をのぞいた壁にきっちりと本棚があり、革表紙の本が並び、いかにも年代モノなテーブルや椅子が並んでいる。

カイツはチラッと本棚を見回して、テトテト進む。

「さすがに、こんな朝早くは誰もいないね」

そうなんです。早起きさせられました。眠いよー。

「まずは、児童書から」

「はぁい……絵本?」

尻尾で示された、薄めの本を抜き出す。

厚紙でまとめられた大きな本には、かすれた装飾と筆記体の文字……?  つる草?

「座って。まずは……この世界の成り立ちから」

しんと静まり返った室内に、ページをめくる音が響いた瞬間、目の前が真っ暗になった。




墨絵?  みたいな真っ暗闇の世界。

大地はあるけれど、枯れ果てて、何も無い。

太陽も星もなく、空すら闇に染まっている。

「廃棄された世界、寿命の終わった世界は無数にある。これはそんな世界のひとつ」

カイツの真面目な声だけが聴こえる。

暗くて寝そ……いや、起きてるよー。

「世界に、再生の種が蒔かれた──いのちを含んだ種だ」

真っ暗闇の世界の空から、ひとつの光が落ちてくる。

「大地の種グレリヤ」

種が大地に触れた途端、虹色の雲が枯れた大地から噴き出した。あっという間に大地と空に行き渡り、世界に色を付けていく──雲がヒトの形をとった。

長い衣をたなびかせた女性。彼女が両手を振り上げると、大地が見る間に豊かな自然に包まれ、新しい生命が次々と生まれる。

植物、昆虫、動物、精霊、妖精、亜人、巨人、龍族、小人──たくさんの種族が広い大地に散らばっていく。

空から種がもうひとつ。

「水の種アメリヤ」

種が大地に触れて、今度は水の帯が吹き出し、世界に潤いを与えていく。水の中に生きる生命も同時に生まれていく。

水の帯も、女性の姿を一瞬とる。こちらは人型から龍に姿を変え、大きな水溜まりに飛び込んだ。

水溜まりはみるみるうちにひろがり、湖に。

見覚えのある風景が出来上がり、はっとする。

「この、湖って、もしかして」

「そう。現在地。青の湖だね」

ほわ~。

湖の周囲に人々が集まりはじめ、村が町になっていく。

何人かは町から離れ、世界に旅立って行った。

あちこちに町が作られ、町が国へと発展していく様子が、早送りで進んでいき──季節がめぐる。

他の国では人々が争い、奪い合い、繁栄したり滅んだり。

でも、湖だけは変化がなく平和が保たれている。

なんでだろう?

不思議に思って見ていると、ひとりの少女が湖の中央の神殿みたいな場所で、お祈りをしていた。

白い髪に赤い瞳の少女は、町の中で代々血を繋ぎ、ずっと湖の傍にいる。

どの時代でも、必ずひとりは存在している?

「あの女の子たちは……?」

「『祈りの乙女』。代々、そう呼ばれている。湖の聖性を保ち、神々の声を聴く──唯一の存在だ。だが……」

「あっ、女の子が!」

町の外から来た人々が、無理やり女の子を連れ去ってしまった。連れて行かれたのはこの国のお城……王様らしき人の元へ。

「誘拐だよ!」

慌てる私と違って、カイツは冷静に成り行きを眺めている。

町の人々が取り返そうとお城に向かうけれど、捕まって……殺されてしまった。

「ひどい……」

「古来の言い伝えも、時代が過ぎると歴史から消えてしまうんだ。祈りの乙女は不思議な力を持って生まれるからね。権力者達はその力を欲した。結果。世界は枯れていった」

見る見るうちに、大地から緑と水が失われていく。

たくさんの国が、人々が、生き物が消えていく光景を見せられる。

そんな世界の危機に、数人の人間が原因を探しはじめた。彼らは世界中を歩きまわり、ついにその国のお城にたどり着く。

そのお城の周りだけ、緑と水が残っていたのだ。

湖もかろうじて、保たれているけど、すっかり小さくなって池のサイズになってしまっている。

ハラハラ見ている間に、彼らはお城に囚われていた少女を救い出した。無理やり囚われた話しを聞き、急いで湖に戻ると少女はすぐに、お祈りをはじめた。

待っていた町の人々や、助け出した勇気ある人々、後から追いかけてきた国の人々の見ている前で少女が必死に祈ると、池から龍が飛び出した。

「乙女が祈りを捧げなければ、湖の神聖さが失われて、世界は再び枯れる。その事実を目にして、人々はようやく本や、言い伝えに残すようになった……この復活の日から、もうすぐ900年経つ。今では世界じゅうの国で伝わっている、大切な伝説だ」

ふと手元の絵本をみると、最後のページになっていた。

湖の真ん中で祈る少女を、町の人々や、精霊や動物達、神様も見守っている絵だ。

これが、この世界の真実。

「じゃあ、どこかに乙女……の女の子がいるのね」

物語の中の重要人物が実際にいるなんて、ちょっとドキドキしてしまう。

どんな女の子なんだろう?

だが、カイツの返答は違っていた。

「いや……今の世代に、祈りの乙女はいない」

「!?」

カイツは何故か、私を見上げた。

「だから、キミがこの世界に呼ばれた」



…………ちょっと待って?

聞いてないんだけど?







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