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Act.2 魔獣討伐の現場で子供を拾った話
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「ディラン、その子はまだ目覚めていないのか?」
ゲオルギオス様の問いかけに俺は頷いた。
「はい、ずっと眠ったままです」
「ふむ……」
思案するように、ゲオルギオス様は顎を指の腹でおさすりになる。
「目が覚めぬことには、何も情報を得られんかな……」
ナイレン殿も難しい顔をなさった。
確かに、目が覚めてくれないと事情聴取も何もないよな。
そのとき、クリストファー様が発言した。
「……この子、ちょっとおかしいんですよね。普通の子じゃない。持ってる魔力が異常に大きすぎます。……この見た目で、母上や姉上たち、僕以上の魔力の持ち主なんて、普通の子供であるはずがありません」
全員の視線が集まった。
ゲオルギオス様は真意を探るように。ナイレン殿は少し驚いたような。兄貴とルーイ殿は無表情。そして俺は普通に目を見張っていた。
「恐らくですが、この子は普通の人間ではないのかと」
クリストファー様は言うと、杖を抜いてテーブルの真ん中に魔力を集めた。
練られた魔力で小さな幻影を投影し、クリストファー様は話を続ける。
「知っての通り、この世界の全ての生物は、人間、植物、野獣、魔物、その別なく、<物質>と<精神>、<魂>、そして<属性>が密接かつ複雑に絡み合って構成されています」
小さな金属のキューブで現された、この世の全ての物体を司る<物質>。
煌めくローブを着た存在の姿で現された、生命体の意思そのものの<精神>。
不定形にゆらゆら揺れるオーラで現された、生きとし生けるもの全ての核となる<魂>。
そして、炎、水、風、土くれで現された、そのものの性質を決定づける<属性>。
この<四大構成要素>。そしてあらゆる存在の核となり、魔法の源でもある<魔法素>で、この世界は形作られている。
「……でも、【簡易鑑定魔法】で見たところ、<物質>と他の要素のバランスが、視る度にぐちゃぐちゃに変わりすぎて、なんとも言えない状態でした。それでも<精神>、<魂>、<属性>、この三要素のみに限って言うと安定しています」
……え、そんなことあるのか!?
生物は、必ず<物質>の構成が多く、安定しているはずなのに。
俺が考えたことをすぐに思ったようで、皆様の表情がピクリと変わった。
ルーイ殿だけは何故か面白そうな顔をしたが。
「いやはや。そんな存在、我々人間や魔物、野獣、植物、鉱物、その他諸々ではあり得ませんぞ。強いて言うなら、ゾンビやスケルトンなどのアンデッドどもぐらいでしょう。ですが、その子供はそうではござらん」
ルーイ殿はまるで、アンデッドではないと確信しているようだった。
きっと、クリストファー様同様、【簡易測定魔法】を使ったんだろう。
ちなみに、【簡易測定魔法】というのは、<四大構成要素>だけでなく、対象のステータスを見ることも出来るという魔法だ。
大昔に存在した偉大な魔道士が開発したという魔法で、その頃は市井の魔道士に至るまで習得していたという。
だが、今では戦闘に従事する魔道士が修めているくらいだ。
ルーイ殿の発言を、クリストファー様は頷いて肯定した。
「そう。この子の属性に<闇>はなかった。アンデッドや死霊なんかの仲間の線は非常に薄いです」
「ですなぁ」
「しかし、そうなるとこの子は……」
そこまで言って、ルーイ殿は言葉を濁した。
考えられる答えは、もうこれしか残っていないのだというように。
それにも、クリストファー様はこくりと頷いてみせた。
「多分、ルーイ魔道士隊長の考えている通りだと思います。精霊、それもかなり力のある精霊が、この子を預けていった、と考えられるかと」
その言葉に、ナイレン殿がなるほどな、と呟かれた。
そう考えるのが自然である、としか言いようがないのだから。
ゲオルギオス様の問いかけに俺は頷いた。
「はい、ずっと眠ったままです」
「ふむ……」
思案するように、ゲオルギオス様は顎を指の腹でおさすりになる。
「目が覚めぬことには、何も情報を得られんかな……」
ナイレン殿も難しい顔をなさった。
確かに、目が覚めてくれないと事情聴取も何もないよな。
そのとき、クリストファー様が発言した。
「……この子、ちょっとおかしいんですよね。普通の子じゃない。持ってる魔力が異常に大きすぎます。……この見た目で、母上や姉上たち、僕以上の魔力の持ち主なんて、普通の子供であるはずがありません」
全員の視線が集まった。
ゲオルギオス様は真意を探るように。ナイレン殿は少し驚いたような。兄貴とルーイ殿は無表情。そして俺は普通に目を見張っていた。
「恐らくですが、この子は普通の人間ではないのかと」
クリストファー様は言うと、杖を抜いてテーブルの真ん中に魔力を集めた。
練られた魔力で小さな幻影を投影し、クリストファー様は話を続ける。
「知っての通り、この世界の全ての生物は、人間、植物、野獣、魔物、その別なく、<物質>と<精神>、<魂>、そして<属性>が密接かつ複雑に絡み合って構成されています」
小さな金属のキューブで現された、この世の全ての物体を司る<物質>。
煌めくローブを着た存在の姿で現された、生命体の意思そのものの<精神>。
不定形にゆらゆら揺れるオーラで現された、生きとし生けるもの全ての核となる<魂>。
そして、炎、水、風、土くれで現された、そのものの性質を決定づける<属性>。
この<四大構成要素>。そしてあらゆる存在の核となり、魔法の源でもある<魔法素>で、この世界は形作られている。
「……でも、【簡易鑑定魔法】で見たところ、<物質>と他の要素のバランスが、視る度にぐちゃぐちゃに変わりすぎて、なんとも言えない状態でした。それでも<精神>、<魂>、<属性>、この三要素のみに限って言うと安定しています」
……え、そんなことあるのか!?
生物は、必ず<物質>の構成が多く、安定しているはずなのに。
俺が考えたことをすぐに思ったようで、皆様の表情がピクリと変わった。
ルーイ殿だけは何故か面白そうな顔をしたが。
「いやはや。そんな存在、我々人間や魔物、野獣、植物、鉱物、その他諸々ではあり得ませんぞ。強いて言うなら、ゾンビやスケルトンなどのアンデッドどもぐらいでしょう。ですが、その子供はそうではござらん」
ルーイ殿はまるで、アンデッドではないと確信しているようだった。
きっと、クリストファー様同様、【簡易測定魔法】を使ったんだろう。
ちなみに、【簡易測定魔法】というのは、<四大構成要素>だけでなく、対象のステータスを見ることも出来るという魔法だ。
大昔に存在した偉大な魔道士が開発したという魔法で、その頃は市井の魔道士に至るまで習得していたという。
だが、今では戦闘に従事する魔道士が修めているくらいだ。
ルーイ殿の発言を、クリストファー様は頷いて肯定した。
「そう。この子の属性に<闇>はなかった。アンデッドや死霊なんかの仲間の線は非常に薄いです」
「ですなぁ」
「しかし、そうなるとこの子は……」
そこまで言って、ルーイ殿は言葉を濁した。
考えられる答えは、もうこれしか残っていないのだというように。
それにも、クリストファー様はこくりと頷いてみせた。
「多分、ルーイ魔道士隊長の考えている通りだと思います。精霊、それもかなり力のある精霊が、この子を預けていった、と考えられるかと」
その言葉に、ナイレン殿がなるほどな、と呟かれた。
そう考えるのが自然である、としか言いようがないのだから。
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