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Act.2 魔獣討伐の現場で子供を拾った話

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 ふと、クリストファー様が俺の方を見て言葉をかけてきた。

「……ねえディラン、あの光の奔流の中で声を、聞いた?」
「は、はい。……え、クリストファー様もですか?」
「うん」

 一つ頷き、クリストファー様は小さく息を吸う。
 そして、戯曲のように諳んじた。

「『……そなたたちに、この子を託す。どうか、善き導きを……』」

 ……なんてことだ。クリストファー様も、俺と同じ声を聞いていたんだ。

「そうです、俺もそれを聞きました!」

 俺とクリストファー様の会話に、皆様はそれぞれ首を傾げていた。
 ゲオルギオス様が代表してお訊ねになる。

「……私は聞いていないな。どうだ、皆」

 ナイレン殿から順番に、聞いていないという答えが上がった。
 ……この分だと、多分他の騎士達も聞いていないのかもしれない。
 俺とクリストファー様だけが聞いた、謎の声か……。

「……ふむ。となると推定だが、高次精霊がお前たち二人にその子を預けたのだろうな」

 ゲオルギオス様の推察に続いたのは兄貴だった。
 眼鏡の位置を直した後に口を開いた。

「善き導きを、と言っている所から、もしやするとクリストファー様と愚弟に養育しろと預けたということなのかもしれませんね」
「え」

 思わず声を上げてしまった。
 俺とクリストファー様に養育しろって……。ちょっと無理じゃないか?
 俺は日々の仕事と騎士団の鍛錬で毎日びっしりだし、クリストファー様は小さな甥御様姪御様がいらっしゃるとはいえ、子育てそのものは未経験だ。
 それはちょっと……、と言いかけた俺は気づいてしまった。
 クリストファー様が、俺の方を見てにまにました顔をしていることに。

(……あ、これは何か企んでらっしゃるときの顔だ)

 なんだか嫌な予感がした。クリストファー様がこういうお顔をしている時は、何かしら俺も巻き込まれてなんやかんや起こる。
 ……なんやかんや起こる前に、一応諫言しておくか……。

「……クリストファー様、一体何をお考えなんですか」
「え~? いいやぁ~? 悪いことじゃないから安心しなよ~」

 嘘だ、この笑い方は絶対に何かを企んでらっしゃる顔だ……!!
 今度は何を考えておられるのか……。ああ、頭が痛くなってきた。
 そんな俺たちの様子を見てなのかは分からないが、ゲオルギオス様がちょっと苦笑なさった気がする。

「……とりあえずその子供の件は、私の方で伝書陣で父上にお伝えしておく。続きは屋敷に帰ってからにしよう」

 皆、割り当てのテントで休んでくれ。
 そのゲオルギオス様の一言によって、今晩は一旦解散となったのだ。
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