104 / 147
Act.10 いざ、敵の本拠地へ
11
しおりを挟む
『おい小僧、聞いてンのかぁングェ!?』
「頭に響くから、大声はやめてもらえますか……」
……いやぁ、ついつい、頭の上のファイアリザード(仮)を勢い任せに握力の限り握っちまったなぁ。
そして、今俺が出せる最大限の魔力を右手に纏わせつつ、筋肉の声に従って思いきり握っちまったなぁ!
今の俺は一般人並みの魔力しか出せないから、物理的な暴力に訴えるしか出来ねえんだよなぁ。あっはっはぁ!!
『ぎぐぇー!! 精霊虐待犯ー!!』
「あ゙? 人聞きの悪いこと言わないでくれます?」
そういうこと言うから、俺の右手が唸るんだよぉ!! オラァ!!!
「……ディラン、目が据わってるよ」
と言いながら、クリストファー様が俺の右手から舌を出してぐったりしたファイアリザード……こと、イフリートを引き取っていく。
が。
パキパキ、と音がしたかと思うと、クリストファー様がイフリートを氷の檻に閉じ込めていた。そしてそれを無造作に地面に置く。
一時的に魔力封印を解いたんだろうか。いつの間に……。
『……? ……!? …………、……!!』
……ん? 何か言ってるっぽいけど、何も聞こえないな?
『あーっはっはっはっは!! イフリート貴様、仮の姿であったが故に無様を晒したのぅ!! 小僧には握りつぶされ、小童には完全遮音効果のある反対属性に監禁され! おっほほほほほ、なんと愉快よのぅ!!』
『~~!!! ~~~!!!』
自分と親和性のある氷属性の檻だからと、大笑いしながら余裕綽々に檻をがこんがこん揺らす、魚姿のウンディーネ。楽しそうだなぁ。
揺らされる檻の中でごろごろ転がされながら、何かを怒鳴り返しているイフリート。完全遮音効果とやらがついているらしい氷の檻なので、大変静かで平和的だ。
「……さて、まずはここからそこの町まで歩きだね。宿の部屋余ってるといいなぁ」
「はい。翌朝、ノルディスに向けて出発ですね」
よっこらせ、と俺は立ち上がる。それに合わせてクリストファー様も立ち上がった。
未だにイフリート入りの氷の檻で遊んでいるウンディーネと、それを窘めているシルフに声をかけた。
「四大精霊たちは、手筈通りにお願いね」
そのクリストファー様の言葉に、水と風の二柱が振り返った。
『うむ、そなたらの武運を祈っておるぞ』
『どうか気をつけてね』
普段は厳しいウンディーネにまでこうして普通にねぎらわれたりすると、案外嬉しいもんだなぁ。
……イフリートは檻が氷属性であることが響いているのか、なんだかぐったりしているけど。
まあ、四大精霊っていうくらいだから、そのうち抜け出すだろう。
ちなみにノームはさっきから地面の虫を追いかけたり、土浴びをしたりして、我関せずの態度を貫いていた。
だが、二柱に合わせるように、両手でちまちまと手を振ってくれた。頑張ってこいってことなんだろう。多分。きっと。
『ではな。上手くやるのじゃぞ、小僧どもに小鳥よ』
ウンディーネがそう言い、氷の檻ごと一緒に精霊達は姿を消した。
それを見送ってから、クリストファー様がもう一度バングルで魔力を封印し直す。
やっぱり魔力封印を一時的に解いていたんだな。
「……さて、と。じゃあ、そろそろ行こう」
「そうですね」
野宿の装備は一応持ってきているが、いつまでも林の中にいたくないもんな。
泊まれる宿があるかもしれないのに、早々野宿を決めたくはない。
地面で虫を突っついていたパッセルが、俺の肩に戻ってきた。そのくちばしには活きのいい新鮮なミミッズ。
「……パッセル。俺はミミッズは食べないから食べていいよ」
すると、小首を傾げた後、一口でくちばしの中に入れ、もちゃもちゃと食べ始めた。
仮契約を結んだことで、パッセルの言いたいことが何となく分かるようになった。今のは、俺に元気になってもらいたくて持ってきた、っぽい。
……その心だけもらっとくよ、パッセル……。
「頭に響くから、大声はやめてもらえますか……」
……いやぁ、ついつい、頭の上のファイアリザード(仮)を勢い任せに握力の限り握っちまったなぁ。
そして、今俺が出せる最大限の魔力を右手に纏わせつつ、筋肉の声に従って思いきり握っちまったなぁ!
今の俺は一般人並みの魔力しか出せないから、物理的な暴力に訴えるしか出来ねえんだよなぁ。あっはっはぁ!!
『ぎぐぇー!! 精霊虐待犯ー!!』
「あ゙? 人聞きの悪いこと言わないでくれます?」
そういうこと言うから、俺の右手が唸るんだよぉ!! オラァ!!!
「……ディラン、目が据わってるよ」
と言いながら、クリストファー様が俺の右手から舌を出してぐったりしたファイアリザード……こと、イフリートを引き取っていく。
が。
パキパキ、と音がしたかと思うと、クリストファー様がイフリートを氷の檻に閉じ込めていた。そしてそれを無造作に地面に置く。
一時的に魔力封印を解いたんだろうか。いつの間に……。
『……? ……!? …………、……!!』
……ん? 何か言ってるっぽいけど、何も聞こえないな?
『あーっはっはっはっは!! イフリート貴様、仮の姿であったが故に無様を晒したのぅ!! 小僧には握りつぶされ、小童には完全遮音効果のある反対属性に監禁され! おっほほほほほ、なんと愉快よのぅ!!』
『~~!!! ~~~!!!』
自分と親和性のある氷属性の檻だからと、大笑いしながら余裕綽々に檻をがこんがこん揺らす、魚姿のウンディーネ。楽しそうだなぁ。
揺らされる檻の中でごろごろ転がされながら、何かを怒鳴り返しているイフリート。完全遮音効果とやらがついているらしい氷の檻なので、大変静かで平和的だ。
「……さて、まずはここからそこの町まで歩きだね。宿の部屋余ってるといいなぁ」
「はい。翌朝、ノルディスに向けて出発ですね」
よっこらせ、と俺は立ち上がる。それに合わせてクリストファー様も立ち上がった。
未だにイフリート入りの氷の檻で遊んでいるウンディーネと、それを窘めているシルフに声をかけた。
「四大精霊たちは、手筈通りにお願いね」
そのクリストファー様の言葉に、水と風の二柱が振り返った。
『うむ、そなたらの武運を祈っておるぞ』
『どうか気をつけてね』
普段は厳しいウンディーネにまでこうして普通にねぎらわれたりすると、案外嬉しいもんだなぁ。
……イフリートは檻が氷属性であることが響いているのか、なんだかぐったりしているけど。
まあ、四大精霊っていうくらいだから、そのうち抜け出すだろう。
ちなみにノームはさっきから地面の虫を追いかけたり、土浴びをしたりして、我関せずの態度を貫いていた。
だが、二柱に合わせるように、両手でちまちまと手を振ってくれた。頑張ってこいってことなんだろう。多分。きっと。
『ではな。上手くやるのじゃぞ、小僧どもに小鳥よ』
ウンディーネがそう言い、氷の檻ごと一緒に精霊達は姿を消した。
それを見送ってから、クリストファー様がもう一度バングルで魔力を封印し直す。
やっぱり魔力封印を一時的に解いていたんだな。
「……さて、と。じゃあ、そろそろ行こう」
「そうですね」
野宿の装備は一応持ってきているが、いつまでも林の中にいたくないもんな。
泊まれる宿があるかもしれないのに、早々野宿を決めたくはない。
地面で虫を突っついていたパッセルが、俺の肩に戻ってきた。そのくちばしには活きのいい新鮮なミミッズ。
「……パッセル。俺はミミッズは食べないから食べていいよ」
すると、小首を傾げた後、一口でくちばしの中に入れ、もちゃもちゃと食べ始めた。
仮契約を結んだことで、パッセルの言いたいことが何となく分かるようになった。今のは、俺に元気になってもらいたくて持ってきた、っぽい。
……その心だけもらっとくよ、パッセル……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
88
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる