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失恋

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構内で話すことでもないし、帰宅してから2人で食事をしてる時に話そうと決めていたのにいざ目の前で食事をとってると言い出しにくい。

そもそもなんで俺がこんな気を使わなきゃいけないんだよ、俺は協力しないって言ってんのに。

頭をガシガシ乱雑にかき乱して意を決して口を開いた。

「あっ、あのさ、奏汰」

「うん?」

「えっと、お前全然協力のこと諦めてねぇじゃん?」

「そりゃあ、奇跡的に勃つ相手を見つけて諦めるのなんてできないよね、奏汰も男ならわかるでしょ?」

「そ、それは…そうだけど、あぁー…でもさ、俺やっぱり無理なんだって」

「理由は?」

「俺…その、今まで言わなかったけど、好きな奴が、……いるんだよ」

しどろもどろになりながらも考えてたことを言葉にした瞬間、空気が凍りつくような感覚に襲われた。

先程まで上機嫌だった奏汰の表情から笑顔が消えて、凍てつくような眼差しで俺を見てるからだ。

怖い…、ただそう思った。本能が逃げろと告げてるかのように鼓動がドッドッドッと早くなる。

嫌な汗がどっとふきだして、額に滲み、恐怖から声も出ない。

普段笑顔でここまで冷たい表情をしてる奏汰を見たことがない。そんなに俺は言ったらまずいことを言ったのだろうかと考えてると嘲笑うかのような表情に変化した奏汰の瞳はそれでも笑っていない。

「悠里の好きな人って…女?それとも男?」

「は?」

「あんな玩具を使ってたんだから、男の可能性もあるかなって思ってさ」

「…っ…」

「ねぇ、悠里、答えて…、悠里の好きな人ってどっち?」

「そっ、そんなのお前に関係ないだろ!答える義務はない!」

問いただすような言葉にいたたまれない気持ちになって、バンっとテーブルを叩いて立ち上がって逃げようとすると強く腕を掴まれて、眉間に皺を寄せて低く呻いた。

「悠里、そうやってうやむやにして逃げようとするのは悪い癖だ」

「だから、奏汰には関係ないだろ…!俺が誰を好きだって」

「一緒に暮らしてるんだから、それくらい知る権利あると思うけどな、悠里が本気になったのがどっちなのか」

ああ、そういうことね、はいはい、OKOK、俺が今まで誰かを好きなんて言ったことがないし、俺も遊んでるの知ってたもんね、お前。

そんな俺が誰かを好きになった、それが男だったら自分も対象にされるとかそんなふうに考えて問い詰めてんのか。

自分は俺に勃起した挙句に協力しろと毎日ベタベタしてくるくせによ、ああ…なんかすげぇムカついてきた。

俺にそういう対象としては見られたくねぇってことか、ふつふつと怒りが込み上げてくる。

俺を振り回して、俺にあんなことしたくせにと内心毒づき、奏汰のほうに視線を向ける。

その表情は冷ややかで、一切の感情を隠して感情のない声音で言葉を紡ぐ。


「…安心しろよ、例え俺の好きな人が男でも奏汰だけは好きになるなんてことありえねぇからさ」

驚いたのか、手の力が緩んだ隙にバッと振りほどいて、振り返らずに自室に逃げ込んだ。
静まり返る室内にはぁと大きなため息だけが響く。

「これでよかった…自覚した途端に失恋か、わかっちゃいたけどつらいな…」

誰に聞かせるわけでもなく小さく本音がもれた。
ズキズキと痛む胸に服をぎゅっと握りしめた。


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