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後編
しおりを挟む「う、うそ……」
「貴女は自ら成人前にこの国を出ていくと宣言したものよ、この国が安全に過ごせるのは私達王族が結界を張ってるから、その結界はこの国の周辺国まで届くほどのお大きいもの、この国に来た時に気づきませんでしたか?」
「…………」
「魔物がこの国の領土に入った途端いないことに違和感を覚えませんでした?貴女は他国から来たのだから気づいたはずよね、魔物がなぜいないのかって」
「ええ……気づきましたわ、なにか素晴らしい魔道具でも使ってるのかと思いました」
「ふふっ、その発想は悪くはありませんが、魔道具ではなく私達が結界を張ってるだけ、私は別にいいのですよ、貴方達2人にこの国を譲っても……ただ」
──────そんなことをすれば、この国は3日もたたずに滅びますが…。
うっすら口角を上げて微笑む。
だってこの国は他国から攻められないように魔物の巣窟の中にあるんですもの。
結界がなくなれば魔物に襲われて3日ももたないだろう、一夜にして滅びる可能性すらある。
この場所を選んだことは自分ら魔族がおさめるなら問題がなかったからだ、魔物達の存在のおかげで人間は簡単に攻め入るのはできない。
王都全体を包むように張り巡らされた結界と周辺国まで広げた結界、この2つの結界があるが戦争となると周辺国まで広げた結界は消す。
それによって魔物達が王都付近まで押し寄せてくるから、その魔物を利用して防衛をすることでこの国は負け知らずの歴史がある。
だからか、最近では戦争にすらならなくなった。
私達ヴァンパイアはもとより、人間に比べると身体能力も高く戦闘力も上なのだから殺し合いをしても簡単に負けないけれど、できれば穏便にいきたい。
私達の生涯の伴侶は人間であることが大事なのだから、そうして眷族を増やして繁栄してるんですもの。
「どうしますか?私達が出ていきましょうか?ただ、私達が出ていけば、この国に残る者はいないでしょうね、魔物の巣窟にある国に誰が残ると言うんです?ふふっ、そんなことになれば貴方達2人はドラゴンの餌食になるのかしら」
──────そうこんな感じに……。
そう微笑むと2人は血の気がなくなったかのように青ざめる。
私の言葉が意味することはすぐに答えが出た、爆風とともに王城の天井が破壊されて唸り声が聞こえてきた。
空を飛んでいたドラゴンが現れたからだ、ドラゴンは私には目もくれずに真っ先にあの二人の元に近づいた。
2人は大きく目を見開いて腰を抜かしてしまったらしい、カイン様はおもらしをしてしまったようだ。
百年の恋も冷めるような現状に笑いすら込み上げてきた、あんな下らない男に自分の長い人生を捧げそうになったなんて義妹には感謝すら覚える。
だから、私はもう一度結界を張り直してから、ドラゴンに近づいて触れて帰るように伝えた。
「え、ど、どういうことですか?」
「あら、あのドラゴンは私のペットですよ、結界をといて中に入れてあげただけです」
そう私がさも当たり前のように伝えれば、どうやら義妹は安心したようだ。
ただ、ドラゴンはすぐに帰らず私の元婚約者であるカイン様に近づいて、咆哮をあげた。
その迫力に情けなくも涙でぐしゃぐしゃの顔で私に命乞いをしてきたから、ため息がもれる。
こんな男だったなんて顔で選ぶものじゃないわ、自分の面食いが憎たらしいったらない。
こんなの私にとって黒歴史としか言いようがないもの。
冷めた眼差しでカイン様を見てから、ドラゴンを一瞥して私の意思を汲み取ったらしいドラゴンはカイン様の服を咥えて、空高く舞い上がった。
王城の天井に大きな穴が空いてしまったけれど、それも仕方ないことね。
私の可愛いペットがなにをするのか、見届けるつもりで空を見上げると高く舞い上がったところからカイン様が落とされたようで、悲鳴と共に地面にグシャリと叩きつけられた。
飛び散った血液が私と義妹に付着して、義妹は悲鳴をあげて涙を流していた。
私はそれを眺めながら自分に付着した血液を拭いとって、不快なそれにはぁ…と息を吐き出す。
義妹は次は自分が殺されると思ってるのか、私の足に縋り付いて命乞いをしてきた。
「お、お姉様、もう二度と逆らいません、お姉様が出て行けと言うなら喜んで出ていきますから、命だけはどうか…」
泣き縋る愚かな義妹に優しく微笑んで、ユリーシャの目尻に触れて涙を拭いとってから、優しく抱きしめて安心させるように背中を撫でる。
「ユリーシャ私は貴女を殺すことはしませんわ、馬鹿な男に引っかからずにすんだのはあなたのおかげですもの」
「ひっく、ふっ、お姉様」
「ほら、可愛い顔が台無しですよ」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってしまった顔を取り出したハンカチで拭いてあげてる。
そうすると後は簡単に私に転げ落ちてきた、目の前で馬鹿な男は殺されて、私に酷いことをした自覚はあるのだろう。
私が全てを許したことで私の優しさに触れて、ユリーシャは涙ながらに私に忠誠を誓ってくれた。これからは私のために生きると。
人間は哀れで可愛い生き物ね、少し優しくされただけで私に忠誠を誓ってくれるんですもの。
抱きしめながらユリーシャに見えないように微笑む、愚かで可愛いユリーシャ、本当の地獄はここからはじまるとも知らずに。
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はい、実はこの義妹は婚約者を奪った以外にも色々とやらかしていまして、そのことに関しては許してないのでこのあと利用されるだけされてボロ雑巾のように捨てられる未来があります🤔