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プロローグ
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木々が鬱蒼と生い茂る森を白い獣にまたがり、私は隣の領地との境界線へと向かう。
情報によると、今日はそこに目当ての人物がいるはずなのだ。
この薄暗い森には魔獣が至るところにいるけれど、駆け抜ける私たちを止めるものはいない。皆、私たちを避けてひっそりと息を潜めている。
言いつけを守って良い子たちね、と私は胸の内で思いながら、自分を乗せ風を切って走る獣にしっかりとしがみついた。
しばらく進み森を抜けたところに、ひとりの青年が立っている。
あれが目当ての人物だ。辺りを見渡しても他に人はいない。狩りの最終日だと聞いていたけれど、他の人はどこへ行ったのだろう。でも丁度良い。
何日にも及ぶ狩りで身支度を整える暇もないのか、パッと見るとどこの山男だという風貌で得体が知れない。でも私はこの姿しか知らないので、この姿で安心した。
私が地面に降り立った音を聞いてこちらに視線を向けた青年は、驚きで目を丸くしすぐに剣を構える。
少女と人々を脅かす魔獣が一緒にいたら、皆そのような反応をするだろう。私は自分の背に白い獣を隠すように立ったが、幼い私の身長では獣の大きな体が隠れるはずもない。それでも、私はその子を守るように立ちはだかる。
青年が動く前に、私は声をかけた。
「もし、魔獣と共存できる未来がくるとしたら、あなたはそれを受け入れることができますか」
「突然、なにを……」
動揺する青年に私は再度同じことを問いかける。突拍子もない質問を、これまた奇妙な子どもが問いかけるのだから怪しまれて当然だ。それでも、私はそれが聞きたくてここまで来たのだ。口を噤み、彼の答えを待つ。
すると逡巡していた青年は、小さく頷きながら言葉を紡いだ。
「もし本当にそんな日が来たら、それは人間にとっても魔獣にとっても喜ばしいことだと思う」
その答えを聞いて、私はほっこりとした気持ちで微笑む。良かった。あやしい子どもにも誠実に答えてくれるこの人は、やっぱりとても良い人だ。
「良かった。あなたが優しい方で」
ありがとうございます、と礼をした私は、再び白い獣に飛び乗ると青年に背を向けて駆けだした。
背後で青年が、待てとかキミはなんなんだと叫んでいる声が聞こえたけれど、他の人に遭遇しては困るので無視をした。
喜びに震えながら、私は屋敷へと戻る。
私はこの日、彼の胸に小さな小さな種を蒔いた。
もし、私たちの運命が交差することがあれば芽が出て可愛い花が咲くと良いな、と夢を見た。
情報によると、今日はそこに目当ての人物がいるはずなのだ。
この薄暗い森には魔獣が至るところにいるけれど、駆け抜ける私たちを止めるものはいない。皆、私たちを避けてひっそりと息を潜めている。
言いつけを守って良い子たちね、と私は胸の内で思いながら、自分を乗せ風を切って走る獣にしっかりとしがみついた。
しばらく進み森を抜けたところに、ひとりの青年が立っている。
あれが目当ての人物だ。辺りを見渡しても他に人はいない。狩りの最終日だと聞いていたけれど、他の人はどこへ行ったのだろう。でも丁度良い。
何日にも及ぶ狩りで身支度を整える暇もないのか、パッと見るとどこの山男だという風貌で得体が知れない。でも私はこの姿しか知らないので、この姿で安心した。
私が地面に降り立った音を聞いてこちらに視線を向けた青年は、驚きで目を丸くしすぐに剣を構える。
少女と人々を脅かす魔獣が一緒にいたら、皆そのような反応をするだろう。私は自分の背に白い獣を隠すように立ったが、幼い私の身長では獣の大きな体が隠れるはずもない。それでも、私はその子を守るように立ちはだかる。
青年が動く前に、私は声をかけた。
「もし、魔獣と共存できる未来がくるとしたら、あなたはそれを受け入れることができますか」
「突然、なにを……」
動揺する青年に私は再度同じことを問いかける。突拍子もない質問を、これまた奇妙な子どもが問いかけるのだから怪しまれて当然だ。それでも、私はそれが聞きたくてここまで来たのだ。口を噤み、彼の答えを待つ。
すると逡巡していた青年は、小さく頷きながら言葉を紡いだ。
「もし本当にそんな日が来たら、それは人間にとっても魔獣にとっても喜ばしいことだと思う」
その答えを聞いて、私はほっこりとした気持ちで微笑む。良かった。あやしい子どもにも誠実に答えてくれるこの人は、やっぱりとても良い人だ。
「良かった。あなたが優しい方で」
ありがとうございます、と礼をした私は、再び白い獣に飛び乗ると青年に背を向けて駆けだした。
背後で青年が、待てとかキミはなんなんだと叫んでいる声が聞こえたけれど、他の人に遭遇しては困るので無視をした。
喜びに震えながら、私は屋敷へと戻る。
私はこの日、彼の胸に小さな小さな種を蒔いた。
もし、私たちの運命が交差することがあれば芽が出て可愛い花が咲くと良いな、と夢を見た。
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