人間と共存したい妖怪たち

黒鉦サクヤ

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10. 感情

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 心が読めたりするんだろうか。
 それは私が綾に対して何度も思ったことだ。毎度のように、私の心を読んでいたとしか思えないタイミングで現れるなんておかしい。
 特に読まれてまずいことはないから良いんだけれど、色々と筒抜けなのは恥ずかしい。だって、いつか綾と一緒に住めたらなんてことを考えているのがバレているのって、どうなんだろうか。気に入っていることは知られててもさほど問題はない。だけど、付き合ってるわけでもないのにそんなことを考えていると知られたら。
 暑いわけでもないのに、頬が熱くなるのを感じる。

「でも、心が読めるのってさとりだったよねえ」
「そうだよ」

 小さく呟いた拍子に背後から声をかけられて、私は飛び上がった。猫を驚かすとその場で飛び上がるし、心臓に負担がかかるからあんまり驚かしちゃだめだよ!
 なんて、そんな注意はどうでもよくて、やっぱり綾が来た。タイミングが良すぎる。
 もし心が読まれているなら悩むのは無駄なので、私は意を決して尋ねる。

「綾って、心が読めたりする?」
「読めないけど?」
「読めないの? 本当に? こんなにいつもタイミングよく現れるのに?」

 キョトンとした表情で、首を傾げたままの綾は今日も可愛い。じゃなくて、それならなんでいつも狙ったようにやってくるのだろう。

「心は読めないけど、なんか私が困ってたりすると分かったりする?」
「あー、それはある。でも、私が分かるのは澄の大雑把な感情だけだよ」
「困ってるとか嬉しいとか?」
「そう、単純なものだけ。混ざりあった複雑な感情までは読み取れない」

 ああ、そうか。綾は順調に位が上がれば神様になるから、他人の感情には敏感なのかもしれない。神様って願い事を聞かないといけないもんね。神力が高まれば、より詳しく分かるようになるのかも。

「じゃあ、今はどうして?」
「んー、澄がなんか混乱してる気がしたから相談にでも乗ろうと思って」
「この間、困ってたときに駆けつけてくれたのも?」
「そう。勝手にごめんね。ただ、澄の感情が揺れると私にも伝わるから」
「そっか。うん、でもすごく助けられてるからありがとう!」

 笑って綾に感謝の言葉を告げる。これは本心だ。本当に助けられてるし、心の声がだだ漏れじゃなかったのが分かって安心したし。
 それに、私の感情に敏感な理由は、きっと綾の徴が付いてるからだ。この徴を通して繋がってるんだろう。

「もしかして、澄が混乱してたのって、私に心の声が聞かれてると思ったから?」
「え? いや、ソンナコトナイヨ」
「そんなカタコトで言われたらバレバレなんだけど。でも、不安にさせてたらごめんね。心の中覗かれるのなんて嫌だよね」

 傷ついたような表情で俯いた綾の顔に、おろしていた長い髪がかかる。こんなときにも、するりと頬を滑る髪の一本までもがきれいだな、って思う私の感情は綾に伝わっているんだろうか。どんな感情として伝わっているんだろう。

「あのね、嫌っていうか。嫌ではないけどもし覗かれて一言一句ぜんぶ聞かれてたら、ただ恥ずかしくて倒れそうっていうか」
「嫌ではないんだ?」
「まぁ、綾だし」

 そう、綾だし。
 綾と繋がってるのは、特別って感じるから嬉しいだけだ。心の声が丸聞こえは恥ずかしいけれど、ぼんやりとした感情だけならそこまででもない。助けてもらえることが多いから嫌じゃないし。

「ふふっ、私だけが特別っぽくてその言い方気に入った」
「え?」

 私が物思いにふけっていると、綾が小さな声で何か言った。
 聞き返したけれど教えてはくれなくて、私は綾の袖を引いて何度もねだる。それでも綾は笑うばかりで、私は頬を膨らますのだった。
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