8 / 54
6まっくろドラゴン
しおりを挟む
パーティになった初日に一緒の部屋は流石に抵抗があるので、今日の所は別々の部屋で寝た。
二人部屋は少し広くベッド二つに丸いテーブル、椅子二つだ。
湯桶を貰い、足湯をしクリーンで身体を綺麗にしてからベッドに入る。
自然と眠りについた。
翌朝。ノックの音で目が覚めると、カサトが迎えに来ていた。
ちょっと早そうな時間だ。すぐ行くと返し、一階で待って貰う事にした。
桶の中の水をクリーンし、顔を洗う。櫛で髪を梳かし、一つくぐりをサイドに垂らした。
身支度を整えてディグから木札を貰い、トイレに行き、カサトの元へ向かう。
「おはよーさん。朝寝坊やな、レーナ」
「いや、まだ早くない?」
「そんなことないで。他にも冒険者おるやろ。早く依頼見に行かなええもん獲られへんねん」
そういうものなのかな。
木札をおばちゃんに渡して朝食を運んで来て貰った。
今日はホットドッグにスクランブルエッグ、スープとサラダ。
「…今日は私、図書館に行って色々調べたい事が…」
「調べもん?何調べたいん?」
せっかく仲間になったのに、黒髪黒目の事を伝えたらカサトだって私を嫌うだろう。それはちょっと嫌だな。
「うーん…精霊術士の事とか?」
「はぁ?そんなん昔の職業やん。今は誰もおらんで」
え、じゃあ私は何なのか?
「そんなら今日は別行動しよか?俺の知ってる事やったら話せるけど、精霊術士の事は悪いけど知らんわ。それは図書館行ったほうがええ」
「え、いいの?」
「ええも何も、調べたいんやろ?俺はソロで出来る依頼受けとくから。調べ終わったら日暮れまでには帰るんやで。王都の中やったら心配する事起きひんわ。多分」
頭に手を置かれ、ポンポンと撫でられる。
口を尖らせ、上目遣いでカサトを睨む。
「…子供じゃないんですけどー…」
「あほか。俺より13も下やったら子供や。背だってちっこいしなぁ」
なんとカサトは28歳らしい!結構年上だった!
そんなに見えないのになぁ。
ちなみに身長は私が155センチ。カサトは30センチ上くらい。
「エールだって飲めるし」
「お?言うたな?じゃあ今夜勝負や!」
勝負は、もういいや。
「…ううん、勝負はもういい…ああいうのは自分のペースで飲まなきゃ」
ドラコの事を思い出して、俯いてしまう。察したのか、カサトは頭に置いていた手を顎に滑らせる。
「そやな。楽しく飲んだ方がええわ。やから顔あげーな。可愛い顔をお兄さんに見せなさい」
「な!」
「おぅ、可愛ぇ可愛ぇ」
顔が真っ赤になる。からかってるのか本気で言ってるのかわからない。
顎を持っていた手を掴んでテーブルに叩きつけた。
「もう!カサト!からかわないで!」
「ほんまに言ってんのに!」
ゴツゴツした手に男の人を感じてしまった。
朝食を終わらせカサトと別れる。マッピングを駆使し図書館を発見した。
入るのに銅貨10枚と言われ、受付のお姉さんに手渡す。
「職業についての本はどの辺にありますか?」
「一階のJの棚ですね。こちらから見て右端になります」
ありがとうとお辞儀をし、本棚へと向かう。並んでいる本の一つ、『一般的な職業』という題名の本を取りその場で広げた。
『一般的な職業』
・剣士
・格闘家
・魔法使い
・弓使い
・シーフ
・僧侶
ちょっと違うかな。
『国に遣える職業』
・騎士
・兵士
・宮廷魔術士
・宮廷楽士
・…
これも違う。
私が知りたいのは昔の職業。
『失われた職業』
・聖騎士(勇者)
・賢者
・精霊術士
・プリースト
・テイマー
・錬金術士
おお!これだー!
・精霊術士とは
精霊の声、姿を見る事が出来、自身のMPを分け与え精霊の力で魔法を使う者。
※魔法使いとは違い、威力は桁違いに強い。
昨今精霊が見える者は現れず、精霊が居なくなったという説も。
これだー!
でも私精霊なんて見えないし、聞こえないけど?
《いるよ、ずっとそばに》
あの森で聞こえた幻聴がした。
周りを見渡すと薄っすら光っている球体がふよふよと飛んでいる。一つではない。かなり多い。
《まだ必要じゃないからちゃんと見えない》
《必要になったら呼んで》
《呼んでね、じょ…さ…ま》
光は消えていき、声も聞こえなくなった。
最後なんて言ったんだろうか?全く聞き取れなかった。
ついでに黒髪黒目の事を調べようと思ったけど、わからなかった。っていうかどうやって調べたらいいかわからなかった。
ただ一つ、目についた絵本のタイトルに『まっくろドラゴンと勇者さま』と書かれていた本が気になって、それを読んで少し納得してしまった。
1000年前。
真っ黒いドラゴンが世界を恐怖で支配していた。
供物を渡す事が出来なくなった町を焼き払ったり、時には気分で人を食したりとわがまま三昧していた。
見かねた宮廷魔術士が異国から勇者を召喚する。
異国を渡ったお陰で勇者にはこの世界にない力を手に入れる事が出来る為、みんな勇者に頼るしかなかった。
勇者と優秀な仲間たちみんなでドラゴンを倒し、勇者はモンデセントのお姫様と結婚しその地は今も栄えている。
物語はそこで終わっていた。
黒はまっくろドラゴン、の象徴なんだ。
だからあんな目で見られ、嫌われる。
ここに書かれている勇者の髪は金色で目は赤色。
異国と書かれているから日本人じゃないんだろうけど。
この国に残った勇者は、残ったのか帰れなかったのか。
一体どっちなんだろうか。
ただ一つわかったのは、まっくろドラゴンが恐怖の対象だと鮮明に書かれていた事だけだった。
調べ物も終わり、昼過ぎになってしまったので中央広場へと向かった。
前は気づかなかったけど、昨日通った時に屋台が並んでいたのだ。
美味しそうな匂いに釣られ、肉串とジュースみたいな物を買う。
噴水のベンチに座り、軽くいただきますをし、肉串を口に運んだ。砂ずりの様な食感で、味付けは薄い塩味だけだけど私には美味しく感じた。ジュースは果物を絞った100%ジュースで、白桃とぶどうとライチを足した様な味でこれも美味しい!ただ、常温なのがちょっとなぁ。
この世界のご飯が私に合って、本当に良かったと心から思う。
お腹を満たしぼーっとしていると、聞き覚えのある声がした。
遠くでフィーアとレムが見える。周りには少し背の高い男の人と女の人。
良かった、パーティ組めたんだね。
少し汚れた服は、魔物と戦ってきた勲章かな?
四人で肉串を食べて楽しそう。
姿が消えてなくなるまで、その光景を目に焼き付けた。
行き交う男の人に、話しかけられるのも慣れてきた頃。鬱陶しく感じていたら『スキル:隠密を獲得しました』と言われたのですかさずON。
するとどうでしょう!話しかけられなくなったではありませんか!
でもいないものと認識されるからか、ベンチに座りに来た人がえ!人居たの!と驚いて去っていく。
日暮れが近づき、隠密をOFFにして宿に向かった。
「レ、ェ、ナ!」
「きゃあっ!」
後ろから抱きつかれ、悲鳴をあげてしまった。
「そんな驚かんでも!な、なんでもありません!俺たちパートナーですから!」
行き交う人々に弁明しながら、肩に手を回され宿へ向かう。
「もう!カサト!びっくりした!」
「ちょっと脅かそ思ただけやんー、怒らんとってや」
力強い腕を回され、少しドキドキする。
こんなに男の人とくっついたことない。
顔に胸当てがあたって痛い。
「…鎧が痛い」
「あ、悪い!これで勘弁して」
左手を取られ、ギュッと恋人繋ぎされた。
「どうして繋ぐのよ!」
「ええやんー、宿までこれで行こ♡俺が守っちゃる」
ぶんぶん振っても外れない。
カッコよく親指立てて口角上げられても。
「街の中は危険なんてないんじゃなかったの?!」
「いやー、夜の街は怖いで。いつ攫われてしまうかわからん」
駄目だこりゃ。聞く耳持ってない。
もう諦めた。
汗ばんでいく手は力強く、離さないと比喩していた。
宿の前に着き、またひと悶着あった。
もう同じ部屋で泊まっていいやんって言われても!
こっちはまだ信用出来ないよ!
それにはNOを貫き通し、カサトはギルドに寄っていく為別れた。
ディグに木札を貰い、階下に降りる。手頃な二人掛けのテーブルに着き、カサトを待つ。
少しして宿に帰ってきたカサトは急いで木札を貰いに行き、荒い息で椅子に座った。
料理が届き、今日の依頼の話をしてくれる。
「今日はパリパリ鳥っていう雷纏った魔物の討伐行ってきたわ」
「へぇー、名前からして強そう」
「強いんちゃうかな、Aランク依頼やし」
「え!それを一人で行ってきたの?」
「そやでー。惚れ直したか?」
「惚れは直してないけど、見直したー」
「惚れ直せよ!そこは!」
誰かと話しながら取る食事は美味しいな。
カサトって本当に強いんだ。
ステータスとか見てみたいな。
そういえば、人に鑑定使ったことないなー。
黙って使ったら、怒るよね。
「…何や急に黙って。何か言いたい事あるんか?」
「え、いやー…うーん」
鋭いなぁ。でもここでは言いにくいかな。周りに人いるし、後で二人になってから聞使ってみよう。
「今日図書館でまっくろドラゴンっていう絵本を読んだの。何か知ってる事ない?」
大口を開けて食べていたのに、急に真剣な顔になって。
「まっくろドラゴンか…有名な昔話やな」
「…昔実際にあった事なの?」
「そう伝わってるで。何や自分、そんなんも知らんのか。どんだけ田舎やってん」
茶化す様に言ってるけど、声音が低いから本当なんだ。
「俺んとこも大分田舎やけど、ほんまかい。…見たのは絵本言うてたな?」
「うん」
「…あれにはもっと詳しく書かれた、勇者が書いたとされる日記みたいな物があるんや」
知らない土地にいきなり飛ばされた勇者。最初は、異界にいるなんて信じられなかった。
周りは全員敵に見えて、誰も彼も信じることができなかった。
いつの日か逃げ出した森の中で突然黒いドラゴンが目の前に現れて、「我と良い勝負ができそうな奴が来たな」「もっと強くなってくれなければ困る。我と遊ぼう」と笑いながら去って行く。
大きな存在に圧倒され、そのドラゴンは自分にしか倒せないと理解した勇者は、みんなに頼りにされていることを自覚し、めきめきと腕を上げていった。
失われたとされたスキルを覚え、駆使し、やっとの思いで倒したドラゴンは最後に呪いをかける。
「我以上に強い者はこの世界にはもういない。逸脱した強さの果てにあるものは…孤独」
力を持て余した勇者は、名だたる冒険者と決闘を申し込む。勇者の強さに誰もが敵わない。
それでも強き者を求め、勇者は殺戮を止められなかった。
その勇者を恐れた国王は、勇者を騙して幽閉し、人々の記憶から強すぎる勇者という存在を隠蔽した。
誰にでも優しく、ある程度強い勇者を別に用意して自分の娘と結婚させた。
「…ひどい…」
利用するだけ利用して、力が止められなかったら捨てられるのか。自分の保身のみを優先して。
緋色は、そんな事にはならないよね。絶対!
「…酷いって、言うんやな、レーナは。やっぱ惚れた女なだけあるわ」
「な、んでこんな時に茶化すかな」
「俺の村はちょっと特殊やねん。こんな日記が伝わるくらいには。まっくろドラゴンの絵本しか読んでないやつにこの話したら、必ずこう言われるねん。何の話をしているの?って」
「…それって…」
「…まだ国王の『隠蔽』が効いてる証拠やな」
恐怖耐性はONのままなのに、身震いした。
真実を隠された古の勇者は、亡くなったのだろうか。1000年も前の話だから、もういないだろう。
いたとしたら緋色と決闘でもしていたかもしれない。
強きを求めて。
「ま、こんな昔話がありましたって事やな。実際の勇者は黒髪黒目やったみたいやし」
「そうなの?!」
「おう、そうらしいで。日記の後ろの方に書いとったわ。自分は黒髪黒目のニホンジンで、残された家族の事とか、色々と書いてあったけど。でもその日記が本物かは俺にはわからん。まぁ、村のみんなは信じてたし国王の隠蔽も俺らの村は効かんから信じるしかないけど」
「私、信じるよ…!」
「ん、さよか」
穏やかな表情になったカサトは、食事を再開した。
その日記見てみたい。
勇者として召喚された日本人。黒髪黒目が嫌われるのは、国王の『隠蔽』がまだ効いてるからなんだ!
「その日記って、カサトの村にあるの?」
「ん?あるで。村長の家に」
「…私、見てみたい。お願い、カサトの村に連れて行って!」
「ええけど…」
歯切れが悪い返事に、緊張感が走る。
持っていたフォークを置き、真剣な表情でカサトはこう言った。
「俺と村に行くっちゅうことは、俺と一緒になるっちゅうことやで」
と。
二人部屋は少し広くベッド二つに丸いテーブル、椅子二つだ。
湯桶を貰い、足湯をしクリーンで身体を綺麗にしてからベッドに入る。
自然と眠りについた。
翌朝。ノックの音で目が覚めると、カサトが迎えに来ていた。
ちょっと早そうな時間だ。すぐ行くと返し、一階で待って貰う事にした。
桶の中の水をクリーンし、顔を洗う。櫛で髪を梳かし、一つくぐりをサイドに垂らした。
身支度を整えてディグから木札を貰い、トイレに行き、カサトの元へ向かう。
「おはよーさん。朝寝坊やな、レーナ」
「いや、まだ早くない?」
「そんなことないで。他にも冒険者おるやろ。早く依頼見に行かなええもん獲られへんねん」
そういうものなのかな。
木札をおばちゃんに渡して朝食を運んで来て貰った。
今日はホットドッグにスクランブルエッグ、スープとサラダ。
「…今日は私、図書館に行って色々調べたい事が…」
「調べもん?何調べたいん?」
せっかく仲間になったのに、黒髪黒目の事を伝えたらカサトだって私を嫌うだろう。それはちょっと嫌だな。
「うーん…精霊術士の事とか?」
「はぁ?そんなん昔の職業やん。今は誰もおらんで」
え、じゃあ私は何なのか?
「そんなら今日は別行動しよか?俺の知ってる事やったら話せるけど、精霊術士の事は悪いけど知らんわ。それは図書館行ったほうがええ」
「え、いいの?」
「ええも何も、調べたいんやろ?俺はソロで出来る依頼受けとくから。調べ終わったら日暮れまでには帰るんやで。王都の中やったら心配する事起きひんわ。多分」
頭に手を置かれ、ポンポンと撫でられる。
口を尖らせ、上目遣いでカサトを睨む。
「…子供じゃないんですけどー…」
「あほか。俺より13も下やったら子供や。背だってちっこいしなぁ」
なんとカサトは28歳らしい!結構年上だった!
そんなに見えないのになぁ。
ちなみに身長は私が155センチ。カサトは30センチ上くらい。
「エールだって飲めるし」
「お?言うたな?じゃあ今夜勝負や!」
勝負は、もういいや。
「…ううん、勝負はもういい…ああいうのは自分のペースで飲まなきゃ」
ドラコの事を思い出して、俯いてしまう。察したのか、カサトは頭に置いていた手を顎に滑らせる。
「そやな。楽しく飲んだ方がええわ。やから顔あげーな。可愛い顔をお兄さんに見せなさい」
「な!」
「おぅ、可愛ぇ可愛ぇ」
顔が真っ赤になる。からかってるのか本気で言ってるのかわからない。
顎を持っていた手を掴んでテーブルに叩きつけた。
「もう!カサト!からかわないで!」
「ほんまに言ってんのに!」
ゴツゴツした手に男の人を感じてしまった。
朝食を終わらせカサトと別れる。マッピングを駆使し図書館を発見した。
入るのに銅貨10枚と言われ、受付のお姉さんに手渡す。
「職業についての本はどの辺にありますか?」
「一階のJの棚ですね。こちらから見て右端になります」
ありがとうとお辞儀をし、本棚へと向かう。並んでいる本の一つ、『一般的な職業』という題名の本を取りその場で広げた。
『一般的な職業』
・剣士
・格闘家
・魔法使い
・弓使い
・シーフ
・僧侶
ちょっと違うかな。
『国に遣える職業』
・騎士
・兵士
・宮廷魔術士
・宮廷楽士
・…
これも違う。
私が知りたいのは昔の職業。
『失われた職業』
・聖騎士(勇者)
・賢者
・精霊術士
・プリースト
・テイマー
・錬金術士
おお!これだー!
・精霊術士とは
精霊の声、姿を見る事が出来、自身のMPを分け与え精霊の力で魔法を使う者。
※魔法使いとは違い、威力は桁違いに強い。
昨今精霊が見える者は現れず、精霊が居なくなったという説も。
これだー!
でも私精霊なんて見えないし、聞こえないけど?
《いるよ、ずっとそばに》
あの森で聞こえた幻聴がした。
周りを見渡すと薄っすら光っている球体がふよふよと飛んでいる。一つではない。かなり多い。
《まだ必要じゃないからちゃんと見えない》
《必要になったら呼んで》
《呼んでね、じょ…さ…ま》
光は消えていき、声も聞こえなくなった。
最後なんて言ったんだろうか?全く聞き取れなかった。
ついでに黒髪黒目の事を調べようと思ったけど、わからなかった。っていうかどうやって調べたらいいかわからなかった。
ただ一つ、目についた絵本のタイトルに『まっくろドラゴンと勇者さま』と書かれていた本が気になって、それを読んで少し納得してしまった。
1000年前。
真っ黒いドラゴンが世界を恐怖で支配していた。
供物を渡す事が出来なくなった町を焼き払ったり、時には気分で人を食したりとわがまま三昧していた。
見かねた宮廷魔術士が異国から勇者を召喚する。
異国を渡ったお陰で勇者にはこの世界にない力を手に入れる事が出来る為、みんな勇者に頼るしかなかった。
勇者と優秀な仲間たちみんなでドラゴンを倒し、勇者はモンデセントのお姫様と結婚しその地は今も栄えている。
物語はそこで終わっていた。
黒はまっくろドラゴン、の象徴なんだ。
だからあんな目で見られ、嫌われる。
ここに書かれている勇者の髪は金色で目は赤色。
異国と書かれているから日本人じゃないんだろうけど。
この国に残った勇者は、残ったのか帰れなかったのか。
一体どっちなんだろうか。
ただ一つわかったのは、まっくろドラゴンが恐怖の対象だと鮮明に書かれていた事だけだった。
調べ物も終わり、昼過ぎになってしまったので中央広場へと向かった。
前は気づかなかったけど、昨日通った時に屋台が並んでいたのだ。
美味しそうな匂いに釣られ、肉串とジュースみたいな物を買う。
噴水のベンチに座り、軽くいただきますをし、肉串を口に運んだ。砂ずりの様な食感で、味付けは薄い塩味だけだけど私には美味しく感じた。ジュースは果物を絞った100%ジュースで、白桃とぶどうとライチを足した様な味でこれも美味しい!ただ、常温なのがちょっとなぁ。
この世界のご飯が私に合って、本当に良かったと心から思う。
お腹を満たしぼーっとしていると、聞き覚えのある声がした。
遠くでフィーアとレムが見える。周りには少し背の高い男の人と女の人。
良かった、パーティ組めたんだね。
少し汚れた服は、魔物と戦ってきた勲章かな?
四人で肉串を食べて楽しそう。
姿が消えてなくなるまで、その光景を目に焼き付けた。
行き交う男の人に、話しかけられるのも慣れてきた頃。鬱陶しく感じていたら『スキル:隠密を獲得しました』と言われたのですかさずON。
するとどうでしょう!話しかけられなくなったではありませんか!
でもいないものと認識されるからか、ベンチに座りに来た人がえ!人居たの!と驚いて去っていく。
日暮れが近づき、隠密をOFFにして宿に向かった。
「レ、ェ、ナ!」
「きゃあっ!」
後ろから抱きつかれ、悲鳴をあげてしまった。
「そんな驚かんでも!な、なんでもありません!俺たちパートナーですから!」
行き交う人々に弁明しながら、肩に手を回され宿へ向かう。
「もう!カサト!びっくりした!」
「ちょっと脅かそ思ただけやんー、怒らんとってや」
力強い腕を回され、少しドキドキする。
こんなに男の人とくっついたことない。
顔に胸当てがあたって痛い。
「…鎧が痛い」
「あ、悪い!これで勘弁して」
左手を取られ、ギュッと恋人繋ぎされた。
「どうして繋ぐのよ!」
「ええやんー、宿までこれで行こ♡俺が守っちゃる」
ぶんぶん振っても外れない。
カッコよく親指立てて口角上げられても。
「街の中は危険なんてないんじゃなかったの?!」
「いやー、夜の街は怖いで。いつ攫われてしまうかわからん」
駄目だこりゃ。聞く耳持ってない。
もう諦めた。
汗ばんでいく手は力強く、離さないと比喩していた。
宿の前に着き、またひと悶着あった。
もう同じ部屋で泊まっていいやんって言われても!
こっちはまだ信用出来ないよ!
それにはNOを貫き通し、カサトはギルドに寄っていく為別れた。
ディグに木札を貰い、階下に降りる。手頃な二人掛けのテーブルに着き、カサトを待つ。
少しして宿に帰ってきたカサトは急いで木札を貰いに行き、荒い息で椅子に座った。
料理が届き、今日の依頼の話をしてくれる。
「今日はパリパリ鳥っていう雷纏った魔物の討伐行ってきたわ」
「へぇー、名前からして強そう」
「強いんちゃうかな、Aランク依頼やし」
「え!それを一人で行ってきたの?」
「そやでー。惚れ直したか?」
「惚れは直してないけど、見直したー」
「惚れ直せよ!そこは!」
誰かと話しながら取る食事は美味しいな。
カサトって本当に強いんだ。
ステータスとか見てみたいな。
そういえば、人に鑑定使ったことないなー。
黙って使ったら、怒るよね。
「…何や急に黙って。何か言いたい事あるんか?」
「え、いやー…うーん」
鋭いなぁ。でもここでは言いにくいかな。周りに人いるし、後で二人になってから聞使ってみよう。
「今日図書館でまっくろドラゴンっていう絵本を読んだの。何か知ってる事ない?」
大口を開けて食べていたのに、急に真剣な顔になって。
「まっくろドラゴンか…有名な昔話やな」
「…昔実際にあった事なの?」
「そう伝わってるで。何や自分、そんなんも知らんのか。どんだけ田舎やってん」
茶化す様に言ってるけど、声音が低いから本当なんだ。
「俺んとこも大分田舎やけど、ほんまかい。…見たのは絵本言うてたな?」
「うん」
「…あれにはもっと詳しく書かれた、勇者が書いたとされる日記みたいな物があるんや」
知らない土地にいきなり飛ばされた勇者。最初は、異界にいるなんて信じられなかった。
周りは全員敵に見えて、誰も彼も信じることができなかった。
いつの日か逃げ出した森の中で突然黒いドラゴンが目の前に現れて、「我と良い勝負ができそうな奴が来たな」「もっと強くなってくれなければ困る。我と遊ぼう」と笑いながら去って行く。
大きな存在に圧倒され、そのドラゴンは自分にしか倒せないと理解した勇者は、みんなに頼りにされていることを自覚し、めきめきと腕を上げていった。
失われたとされたスキルを覚え、駆使し、やっとの思いで倒したドラゴンは最後に呪いをかける。
「我以上に強い者はこの世界にはもういない。逸脱した強さの果てにあるものは…孤独」
力を持て余した勇者は、名だたる冒険者と決闘を申し込む。勇者の強さに誰もが敵わない。
それでも強き者を求め、勇者は殺戮を止められなかった。
その勇者を恐れた国王は、勇者を騙して幽閉し、人々の記憶から強すぎる勇者という存在を隠蔽した。
誰にでも優しく、ある程度強い勇者を別に用意して自分の娘と結婚させた。
「…ひどい…」
利用するだけ利用して、力が止められなかったら捨てられるのか。自分の保身のみを優先して。
緋色は、そんな事にはならないよね。絶対!
「…酷いって、言うんやな、レーナは。やっぱ惚れた女なだけあるわ」
「な、んでこんな時に茶化すかな」
「俺の村はちょっと特殊やねん。こんな日記が伝わるくらいには。まっくろドラゴンの絵本しか読んでないやつにこの話したら、必ずこう言われるねん。何の話をしているの?って」
「…それって…」
「…まだ国王の『隠蔽』が効いてる証拠やな」
恐怖耐性はONのままなのに、身震いした。
真実を隠された古の勇者は、亡くなったのだろうか。1000年も前の話だから、もういないだろう。
いたとしたら緋色と決闘でもしていたかもしれない。
強きを求めて。
「ま、こんな昔話がありましたって事やな。実際の勇者は黒髪黒目やったみたいやし」
「そうなの?!」
「おう、そうらしいで。日記の後ろの方に書いとったわ。自分は黒髪黒目のニホンジンで、残された家族の事とか、色々と書いてあったけど。でもその日記が本物かは俺にはわからん。まぁ、村のみんなは信じてたし国王の隠蔽も俺らの村は効かんから信じるしかないけど」
「私、信じるよ…!」
「ん、さよか」
穏やかな表情になったカサトは、食事を再開した。
その日記見てみたい。
勇者として召喚された日本人。黒髪黒目が嫌われるのは、国王の『隠蔽』がまだ効いてるからなんだ!
「その日記って、カサトの村にあるの?」
「ん?あるで。村長の家に」
「…私、見てみたい。お願い、カサトの村に連れて行って!」
「ええけど…」
歯切れが悪い返事に、緊張感が走る。
持っていたフォークを置き、真剣な表情でカサトはこう言った。
「俺と村に行くっちゅうことは、俺と一緒になるっちゅうことやで」
と。
11
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる