大量チートスキルをイマイチ使いこなせない勇者〜それは召喚に巻き込まれた私でした〜

MIILU

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「ちょお、もおええやん!一緒の部屋で!俺と一緒になるって、親に挨拶に行くって言うたやないか!」

「言ってない!挨拶に行くとか、一緒になるとかひとっ言も!」



変な方向に話が行きそうだったので、食事を手早く済ませ自室へと戻る。途中でもなぁなぁ!と話かけられたけど、カサトには悪いけど無視!



「あんた、力ごっつ強いなぁ!俺とタメ張れてるやん!こっちは本気でやってんのにぃ!」



今は、ギィギィ草の部屋の扉を閉めたり、片や開いたり押し問答している。



「なんで!どうしてこの国の男ってそんな直ぐに惚れただの可愛いだの一緒になってとか言えるの!私の事なんてこれっぽっちも知らないくせに!」

「なんやお前!他にも言い寄られてんのか!俺よりそいつがえぇんか!」

「そんなこと言ってない!」



どうしてこんなに強いの!っていうか五分五分で出来てる私の方が凄いのかも。

仮にも男の人だし。私まだ本気出してないし。



「冒険者はなぁ!冒険しとったらいつ死ぬかわからんねん!そんな時に自分好みの女見つけたら必死になって口説くに決まってるやろ!中身も俺好みで!お前が!初めてなんじゃ!こんなに胸踊んのは…!って何言わすねん!」

「そ、それは逆ギレっていうのよ!」

「…あのー…そろそろ止めて貰えます?他のお客さんの迷惑だし、レーナお姉さん嫌がってるじゃん」



ディグ!とカサトの周りには人だかりが。

いやー!めちゃくちゃ目立ってた!!



「あ、ぁ…悪いな…」



力が緩んだ拍子に、扉を閉めて鍵をかける。

扉を力いっぱい叩くカサトをディグがキレて静かにさせていた。

惚れたとか一緒になりたいとか、言われても困る。

日本でも言われた事ないのに、誰とも付き合った事ないのにいきなり結婚しろなんて言われても。



「もぅ…!ドラコもカサトも、私の気持ちも考えてよ…!」



カサトを、男の人をパーティにするのは間違いかもしれないと本気で思い始めた私だった。





ドラコにあんな物渡さなければ、言わなければ良かった。あんな物あったら未練になる。忘れてくれればそれまでだけど、昨日のカサトの言葉がどうしても気になって。

『冒険者はなぁ!冒険しとったらいつ死ぬかわからんねん!そんな時に自分の好みの女見つけたら必死になって口説くに決まってるやろ!』

はぁ。だから一目惚れしたら猛アタックなんだなぁ。この世界は。

空が白んできて、太陽が上る。

二人の事を考えて、一睡も出来なかった。 

遠慮がちに扉を叩くノックが聞こえ、返事をするとカサトだった。



「昨日は…悪かったな。騒いでしもて。ちゃんと話たいんや…入ったらあかんか?」



ものすごく迷ったけど、話をしない事には前に進めない。パーティを解散するにしても。

扉まで歩き鍵を開ける。



「…いいよ」



大きく開かれた扉から、カサトが無遠慮に入ってくる。

油断した!気づくとカサトの胸の中にいた。



「カサト…苦しい」

「昨日言った事、あれほんまやから。信じてくれるまで離さん。俺がどんだけレーナの事惚れてるかって、わかってくれるまでは」



もしかして抱きしめる為に鎧を脱いで来たんだろうか。胸当てがないから、心音が耳に響く。ドクドクと早く大きい。

抱きしめる手に力が込められて、私の気持ちが傾く前に、本当の事を告げようと決意する。



「…私、カサトに嘘をついてる。秘密も持ってる。それも1つじゃなく…いっぱい。その内の1つを、今見せる。それでも気持ちが変わらなかったら…」

「…その時は俺のもんになってや。絶対やで」

「…うん…」



カサトの腕を離れ手を取り、一人一つベッドの縁に腰かけ向き合った。

この髪色と目の色を、見せたくなかったな。

『スキル:魔法解除を獲得しました。並列して魔法相殺も獲得しました』

蔑まれた瞳で見られていた事を思い出し、身震いする。カサトやドラコにあんな目で見られたら。好意を向けられていた反面、立ち直れなくなるかもしれない。見せたくなかったけど、見せなければ一生嘘をついていく事になる。そっちの方が私には荷が重かったみたいだ。

俯いてカサトの言葉を待つ。息を飲むのは気配でわかったけれど、どういう表情なのかは怖くて見れない。『恐怖耐性』があるのにね。



「…古の…勇者と同じ…?」

「…私、日本から召喚されてここに連れてこられたの…でも私は勇者じゃない。勇者は他にいて、私は召喚に巻き込まれし者…だから」



世界を統べし者なんて言っても、意味わからないだろうし。私がわかっていないし。



「…それがほんまの髪色?」



低い声が部屋に響く。

嫌われた。やっぱり駄目だった。この髪色と目では、私はここでは幸せになれない。



「…嘘をついてごめんなさい…。短い間だったけど、私によくしてくれてありがとう」

「はは、何でそんな別れの言葉なんて口にすんねん。どんだけ一人になりたいねん。レーナは」



明るくなった声音に顔を上げる。

笑顔のカサトは頬を赤くして、



「伝説の勇者と同じ髪色と瞳か。もっっとレーナの事好きになったわ。…俺と一緒になってくれ」



糸目を開けて三白眼に宿る黒い瞳を私に向けてくれた。

その瞳に映る私は、涙を流し泣いていた。



「よしよし…。かなり一人で我慢してたやろ。魔法で髪色と目の色変えれんのはビックリしたけど、その前はさぞかし…イジメられたやろな…」



抱きしめてくる身体に腕を回し、力の限り泣いた。

頭と背中を撫でるカサトの手がこんなに優しいって、初めて気づいた。





*********





ほんまにビックリした。

だから俺を受け入れてくれへんかったんやって、逃げてたんやってわかってホッとした。

俺がレーナを嫌う訳ない。

あの森で見つけた時から俺の運命やと思ってた。

逆に目を見せへんかったことを、俺を責めると思ってた。



「ち、ちょお…待って…っ!ほんま力強いな、レーナ…!」



背中に回してくれた腕の力は半端ない。もしかして昨日の扉攻撃は本気ちゃうかったんやないやろうか。

そういえば日記に異界を渡ったお陰でこの世界にない力がついたって書いてたな。レーナもそうなんやろうな。

レーナの力が不意に抜け、ずるっと寄りかかってきた。



「…レーナ?」



顔を覗き込むと、泣き疲れたのか寝息を立てている。



「…殺生な…この後は熱いキスを交わすんちゃうん…」



お預けをくらった犬みたいに、俺はその場で項垂れた。
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