大量チートスキルをイマイチ使いこなせない勇者〜それは召喚に巻き込まれた私でした〜

MIILU

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14トントン拍子

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昨夜はなるべく優しく抱いてくれて、睡眠もバッチリ。

ただ、やっぱり素っ裸で起きる朝は全然慣れない。

軽いキスを繰り返し、甘やかされ、朝食を取りに向かった。



「おはよう、レーナさん。ついでにカサトさん」

「ついでてなんや自分!それやったら言いなや!」

「おはよう、ミアムくん」



カサトを宥めながら受付の好青年、ミアムくんに木札を貰う。

そんなに心狭かったら、レーナさんに逃げられるよ?と言われ、カサトは握り拳を作って怒りに震えていた。

背中を押し、階下へと向かう。

ボリューム満点の朝食を食べていると、



「レーナ様!カサト様!迎えに来ましたわ!」



とエマが入ってきた。

フリフリのレースが綺麗なピンクのドレスに身を包み、ドレスと同じ色の帽子も被っている。



「おはよう、エマ。早くない?」

「善は急げですわ。早く商談いたしましょう!」

「ちょお待てや自分。今食べとるやん」



私の次にご飯タイムが好きなカサトは、機嫌が悪くなっていく。



「こうしている間にも、しゃんぷーとやらを他の商会で開発されて販売されたら、ワタクシの商会が二番煎じになってしまいますのよ!」

「そんなん所詮は真似事、レーナが創るしゃんぷーとやらの方が本物やねんから負ける筈ないやろ」

「…それもそうですわね」



変に納得したエマは、護衛に椅子を運ばせて同じテーブルについた。



「ワタクシ実は朝食まだなの」

「あ、じゃあ一緒に食べようよ。私こんなに食べきれないし」

「レーナの分は俺が食うんじゃ!新しく頼まんかい!」



ジトッとした目をエマと共にカサトに向ける。

私にたじろいだカサトだけど、なんやねんとエマを睨み返していた。



「わかりましたわ。すみません、同じ物をくださいな」

「おう!」



おじさんは良い返事をして、同じ分だけ持ってきた。

当然食べられなくて、護衛の人たちにも食べて貰う。

美容と健康の為に良いものを販売したいと、商売魂逞しいエマは13歳になったばかりだそう。私と2つしか違うのにしっかりしすぎぃー!



「それでは行きましょうか!」



エマに釣れられ、乗ってきた馬車でオルテュース商会へと向かった。

初めて乗った馬車は、案外乗り心地が良かった。

クッションのお陰かな?





「オルテュース商会へようこそ!」



馬車から降りると、3階建ての宿より大きい建物が眼前に広かった。

1階には様々な商品が並んでおり、後で説明しますわと2階に上がった。

2階には宝石が売られていて、冒険者や主婦など多種多様な人達がいた。

3階に促されると、長い廊下の一室に通された。

程良く広い部屋の内部は応接間のようで、絵画や壺が置かれている。



「どうぞ、お掛けください」



確か扉から一番遠いのが上座だったよね。

そこにカサトを座らせ、隣に腰掛けた。



「…やはりレーナ様は、商業に向いていると思いますわ」



照れ隠しで首を横に振る。あっていたみたいだ。



「それでは、レーナ様が考えている事全てをワタクシに教えて頂けますか?」



紅茶とお茶菓子を出され、用意してきた紙を取り出してそれを手渡した。

言語理解は持っていても、こちらの文字は書けないから。以下はカサト代筆の文章だ。



・洗髪の為のシャンプー、トリートメントの販売

・体を洗う石鹸の販売、その石鹸を泡立てる為のタオル

・上記を入れたお風呂セットの提案

・癒し処に設置するシャワー、時計の提案

・お風呂、温泉に入った後に着る浴衣の提案、販売

・色々な髪留めの提案

・この街を温泉街にする提案

・温泉で温泉卵を提供する…





「な、何なんですの…この魅力的な案の数々は」



あれ?あれが書いてなかったけど?



「カサト、あれ書いてないの?なんで?」

「あ、あれはやなー…」

「まだ何かありますの!?」



私が体温最適化を効果付与したアクセサリーを売ると言う提案だ。紙に書かれていないらしい。



「ここって暑いですよね…ドレスの中とか蒸れませんか?」

「あら、レーナ様はご存知ありませんか?氷の魔石を服の中に縫い付けているんですのよ。これで暑くても涼しい顔をして街を歩けるんですの」



オルテュース商会の目玉ですわよ。と自慢気に言われる。もしかして2階にあった宝石がそうなのかな?

カサトを見ると目を合わせない辺り知っていたみたいだ。

っていうか。



「氷の魔石って何ですか?見てみたいんですけど!」

「もしかして魔石も…知らないんですの?」



護衛の一人に持ってきて貰うように指示してくれ、2階から布に包まれた石が届けられた。

5ミリ程度の水色の石。

触ってもいいと言われたので、触れてみると冷たい!

まるで氷みたいだけど、溶けないから服に縫い付けても涼しいかも!

こんな使い方もあるんだー!



「そのキラキラ目やめて…!やから知らせたくなかってん…!絶対興味示すと思ったから…!」



カサトはしくしくと泣く動作をする。

多分カサトは私の事、改造狂だと思ってるんだろうな。楽しい事を率先して何が悪い!



「これはカリフィネ地方で取れる魔石で、氷の魔石と言います。アンブシュアは出歩けないくらい暑いでしょう?これを輸入し、服に縫い付ける事をオルテュースでは商いにさせて頂いています。…何なら差し上げましょうか?」

「是非ください!」

「服に縫い付ける事も可能ですけれど?」

「あ、それは大丈夫です。それに一つで結構です」

「ひとつ…で、良いのですか?」

「はい」



本当なら何個も縫い付けるんだろうな。



「あ!これを飲み物に入れたり、コップに加工したら冷たい飲み物が飲めるようになるんじゃな…い…」



エマのキラキラ目。カサトの引きつった笑い。



「それいいですわね!是非そちらもこれに書いてくださいませ!」



カサトは深いため息をつき紙を受け取った。





そして値段を事細かく決め、街長と癒し処の主人を招いての会談が早速その日の内に進められた。

呼び出された人たちは一体何事かと驚いていたけれど、私の提案にさらに驚き、歓喜し、賛同してくれた。

全ての権限はオルテュースに委託し、私の名前は伏せる事を条件に、売上の3割を頂くという話で落ち着いた。



「本当は5割でも良いのですが…」



3割でも貰いすぎだと思う。

だってその事業を立ち上げるお金とかオルテュースが全部出してくれるし、提案代にしても高すぎる。



「やっぱり2割で…」

「あかんあかん、3割にしとこ」



カサトは指を3本立ててニッコリと笑った。

髪留めの形の提案。かんざしなら木でも出来るし、職人に頼めば色々なデザインが出来上がるだろう。

留め方を教え、紙に書いてもらい販売する時に一緒に渡す様に伝えておく。

手先の器用な女性たちならすぐに覚えるだろう。



街長は出店の手配と温泉卵の試作に大忙し。

癒し処の主人は私と話し合いながら、シャワーの設備やシャンプーを置く場所等を細かく決めていった。

シャンプー、トリートメント、ボディソープの開発は全て黙秘で、誰もいない部屋に私が大量にボトル毎創って置いていった。

無くなる頃にまた創ればいいし。



「大丈夫か?」

「うーん…流石に疲れた」



気遣ってくれるカサトは優しいけれど、夜になれば肉食になる。

そこは優しくないんだ。カサトは。

温泉街として軌道に乗り出したのは、この提案をしてから30日経った頃だった。





オルテュース商会がデカイと言ったカサトの意味がわかった。

まさかここで、あの二人に会うことになるとは思ってもみなかった。
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