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カリフィネ王国。
アンブシュアと真反対の氷に包まれた国。王都から最北端。
カサトもハルトも行った事がないけど、最短距離で真っ直ぐ森の中を行っている筈。
マッピングで2つの青を探すけど、中々見つけられない。赤い点ばっかりあって、気配遮断と隠密で何とかやり過ごす。
それでも対峙してしまった時は、水や土で包んだり炎で焼いたりして素材は拾わず、夜になってもそのままカリフィネへ向かった。
こんなに会わないって事は、二人もずっと走って向かっているってこと?追い越してないよね?
もう一度マッピングを見ると、少し先に青い点が2つ見つかった。でも並走していなくて、近づいたり離れたりして移動している。
まさか。
「お前ぇ!いくらレーナがえぇ言うたからって早速手ぇ出しやがってぇぇ!!」
「惚れた相手と一緒にいて、我慢出来るわけがないでしょう。やっと出会えた番なのですから、ひとつになる事は必須!」
「だからってドラコより先に結ばれおって!マルセルだっておるのに!お前の番ばんは一番最後じゃ!」
「おや、それはカサトの方では?今まで独り占めしていたのでしょう?レーナ様からは貴方の匂いしかしませんでしたからね」
戦ってる!こんな暗い森の中で!!
周りの魔物を倒しながら斬りかかったり弓で射ったり何してんのよ!
「カサト!ハルト!何してんのよ!!」
拡声スキルで叱ってみる。
寝ていた鳥たちは一斉に飛び立ち、近くにいた魔物は退いて行った。
「レーナ…」
「…レーナ様…」
耳を塞ぐ二人を睨みつけると、機嫌を取ろうと近づいてきた。
「レーナ、大丈夫やったか!良かった!心配しとったんやでぇ」
「レーナ様、ご無事で何よりでございます。…そのお顔もやはり可愛らしいですね」
「…何で喧嘩してたの?」
「「うっ」」
腕を組んでジロリと睨むけど、二人と目線が合わない。
やっと合ったカサトが、
「…レーナ、こいつとやったやろ」
「うっ」
次は私がたじたじになり、視線を泳がせる。
「エーバーハルトがレーナと交わったーとか言うたから、カッと頭に血が昇ってもて…仕掛けたのは俺や」
「…ごめん…」
「謝らんでえぇ。いつかは誰かとそうなるってわかった。でも何でや?何でこいつと?」
「何でって言われても…キスされたら急にそういう気分になっちゃって…」
「…は?まさか…エーバーハルト?お前何でか知ってんちゃうか?」
「う…っ」
次はハルトがたじたじになった。
ん?どういう事?
「…私が言う事はありません」
開き直ったハルトはプイッとそっぽを向いた。
「何でかは知ってるって事やな?」
「しまった…」
台詞を間違った、とでも言うように口を手で塞いだ。
ハルトの前に立つように周りこみ、口を塞いだ手を両手で握る。
「…ハルト、知ってる事教えて?私怒らないから…ね?」
「…っ」
最大限の上目遣いで、お願いをする。
目を輝かせ、手を強く握り返してきて。
「…本当に怒らないですか?」
「うん。教えて?」
「…っ、…エルフ…族の唾液には…催淫効果…がっ!」
カサトが思いっきりハルトの頭をグーで殴った。
「それでその気にさせてやったんか!好きやったら何してもいいと思ってんのか!!」
「仕方ないでしょう!こんなに手に入れたいと強く願ったのは初めてだったんです!ですがこの人からは既に他の人の匂いがするし、交われば私も愛してもらえると思ったんです!!」
ガバッと私を抱きしめてくる。頬に頬ずりしてきて、カサトが離れろや!と言い、ハルトが嫌です!と言う。
とりあえず、
「…過ぎた事は私は何も言わない。でも緋色達を追うことは最優先だと言った筈だけど?」
私の低い声に驚いた2人は、はいとイイ返事をして私の手を取って走り出した。
ぎゅっ♡ニッ=笑顔を向けてくる右手を繋ぐカサト。
ぎゅっ♡ニコッ=笑顔を向けてくる左手を繋ぐハルト。
そして二人はバチバチと火花を散らして睨み合う。
森の中を異様なスピードで走っているのに、異様な手繋ぎで二人は歪み合っている。
カサトからすれば私と交わる夫は順番通りにさせてあげたかったんだろうけど。
ハルトからすれば順番なんて関係なく私を手に入れたかった。
2人でコレだったら、ドラコ、ディグ、マルセル。
あ、多分マルセルは歪み合わないだろうなぁ。
僕は最後で!一緒のベッドで寝るだけで!いや、それさえもおこがましい!とか言いそう。
くすくすと笑っていると毒気が抜かれたのか。2人の睨み合いはなくなっていた。
気づくと森を抜ける所まで来ていて、少し行った先に街がある事がマッピングでわかった。
「この先に街があるわ。休憩がてら少しブルードラゴンの事を聞いてみましょう」
「おう!」
「了解致しました」
「…とその前に、髪色と目の色変えなくちゃ」
ずっと黒のままだった。
マッピングで確認すると、やっぱり古の魔法解除区域内じゃなかった。
街に着く頃には空は白んで朝が近づいている。
少し大きい街の名前はアローロ。
門番にギルドカードを見せ、ハルトは持っていなかったので入税を払い、街の中に入る。
この辺りではエルフ族自体とても珍しいので、ハルトはフードを深く被った。
ローブを着た人がちらほら見えて、少し冷たい風が顔を撫でていく。
カリフィネ地方に入っている事がわかった。
王家御用達の宿を見つけ、席に座って朝食を頼む。
エルフ族はお肉が食べられないらしいので、一食分だけお肉抜きにしてもらう。
朝食が来る間、色々な話に耳を傾ける。
「…ワイバーンが南に向かったらしい…」
「…赤いスライムが毒を吐き出してきて…」
「…カリフィネ王国は滅んでしまうかもしれないな…」
「…王都で開かれる勇者祭が…」
どれもブルードラゴンには関係ない物ばかり。
でもカリフィネ王国が滅んでしまうっていう言葉が引っかかった。
朝食が運ばれ、いただきますと手を合わせて食べようとすると、ハルトが不思議な顔をしていた。
「…口にする全ての物がユグドラシルの糧となりますように…」
エルフ族のいただきますらしい。
指を組んでお祈りしてから、サラダを口に運ぶ。
「肉が食べられへんとか考えられへんわー!それでよく力出るな?」
「私たちエルフ族は人族と違い、精霊に力を借りる事が出来ますから。それに長命なので、カサトが先に土に還ってもレーナ様の最後を看取る事が出来るのは私だけですからね?」
「そういえば、おじいちゃん1000年以上も生きてるもんね。…ちなみに今何歳なの?」
「180歳です、レーナ様」
ニッコリ笑って返してくるけど、年上も年上だった。見た目20歳代なのに!
「エルフ族は一定の年齢になると容姿が止まり、自身の魔力を使い切ると老いていきます。村長を見ればわかりますが、老いても長寿ですけどね」
「…って事はハルトを置いて、私達は先に死んじゃうんだ…」
「レーナ様が土に還る事があれば、私もすぐに還りますよ?番つがいは一心同体。…一人で生きていても仕方ありませんし」
そんなの、悲しい。いや、その気持ちは嬉しいんだけど。一人残されて寂しいと言うのもわかるんだけど。
「…ハルトは…残っててほしい。これは私のわがままだけど…ハルトには私達の子供を…寿命が尽きるまで見守っててほしい…」
「…レーナ様…」
自分から死ぬなんて事をしてほしくなかった。
「それいいなぁ。誰の子供でも同じように平等に見守ってほしいわ。なぁ、おじいちゃん」
「誰がおじいちゃんですか!私はまだ180歳ですよ!」
「歳だけ見たら十分おじいちゃんや!」
カサトが茶化してくれたお陰で場が和んだ。
良かった、カサトが居てくれて。
ハルトから良い返事は聞けなかったけど、レーナ様のわがままか。と呟いていたから。まだまだわからないけど、きっと私のわがままを聞いてくれると思う。その姿が見れないのが残念だけど。
朝食を食べ終わり、亭主にブルードラゴンが来たかどうかを訪ねた。
「おぉー、来たなぁ。一泊してすぐ出て行ったぞ」
「どこに行ったか知っていますか?」
「さあなぁ?今カリフィネ王国が大変だから、風鳴き谷に行ったのかもな」
カリフィネ王国が大変なのに、風鳴き谷に行った?
「…何かあったんですか?滅んでしまうかもって聞きましたけど…」
「あんたら王都から来たのか?カリフィネ王国は今極寒の地になってんだ。風鳴き谷に居着いた氷の魔物が吹く息のせいで氷の魔石はたんまりだけど、炎の魔石で防げないくらい吹雪いているらしいぞ。冒険者が何人か依頼を受けて行ったが…そういえば帰ってくる奴らはいねぇなぁ」
世界地図を広げ、風鳴き谷の場所を教えてもらう。
カリフィネ王国から東の所にあるらしい。
亭主に情報料として多めにお金を渡すと、とても喜ばれた。
ギルドに行くと、掲示板にはカリフィネ王国から討伐依頼の紙が張り出されていた。
ランクは未知数、討伐した者には金貨1000枚。金貨に目が眩んで依頼を受ける人は多いみたい。
受付の人にブルードラゴンが依頼を受けたか聞くと、受けてないと教えてくれた。
でも緋色たちならレベル上げのために行っていそうだ。
「風鳴き谷へ行ってみよう。でもその前にお願いがあるの」
古の魔法解除も並行したい。
でも私がそれを使うと10時間くらい寝込んでしまう。
「10時間て…どんだけレベル上がってんねん」
「…さぁー?」
とぼけておいた。
「前はカサトと2人だったし、時間も8時間くらいだったから一晩寝たら動けてたんだけど…。今は少しでも追いつきたいし、3人だし!私が寝てる間も移動してほしいの!どっちかが私をおぶってくれたら…」
「それは俺やな!」
「いや、私が。カサトは近距離攻撃なのですから、当然かと」
「そんなんエーバーハルトが弓で魔物が近づいてくる前に倒したらええんちゃうん、なんやできひんのかお前?」
「出来ます。ですが私の方が安全に!静かに!揺れもなく!レーナ様をお運び出来ます!」
「いや、もう交代しながらで良くない?」
言い合いを聞いていたら埒が明かない。
妥協策を出し、話は落ち着いた。
少し買い出しして、街から出て森の中に入る。
私が寝る前にご飯を作ってほしいと言われ、ここまで休みなしで来てくれたので応える。
カサトには肉マシマシ、ハルトには野菜マシマシ。
野菜のドレッシングを作ってあげると凄く喜ばれた。マジックバッグに入れて、仲良くする様に!と念を押して古の魔法解除を使う。
久々の意識が遠のく感じ。
最初はカサトが抱き上げてくれた。
***********
「こうなったらもう何しても起きん」
横抱きし、抵抗のないレーナの唇に口付ける。
「ええやろ?」
「カサト、もしかしていつもしているのですか?」
「まぁな。だって暇やん?でも俺は寝てるレーナを抱いた事はない。夢の中で抱いた奴はおるけどな」
「?」
数時間後、交代したエーバーハルトに釘刺しする。
「お前、キスしてもええけど舌は入れんなよ!」
「…わかりました」
って目の前でキスされる男の気持ちはこんなんか!
マルセルの時とは感じ方が違うんは、こいつがレーナと寝たからやろうな。
ぐぅう!もっとしとけば良かった!!
「…可愛い…レーナ様…」
「…まるでお姫様みたいやんなぁ。最初会った時も寝とったなぁ。メルパの木の下で。あれから何日か経って…髪もよう伸びたなぁ」
「メルパに気に入られたのですね。流石精霊女王様です」
ってまたキスしとるし!
「もう行くで!」
「…はい」
名残惜しそうに唇見んなや!
俺だってしたいわ!たとえ他の男とキスした後でもなぁ!
「…カサト、レーナ様の事をもっと教えてください。私はレーナ様と共に生きると誓いました」
「…ええで」
ドラコもマルセルも、レーナの事知りたいって。
俺だけのレーナが、みんなのレーナになっていく。
小さい事気にしてたら、レーナに嫌われるかもしらん。レーナは、催淫でこいつを受け入れたかもしらんけど、それは他の男でも受け入られるって事や。
もう、腹括らなあかんのかもしらんな。
アンブシュアと真反対の氷に包まれた国。王都から最北端。
カサトもハルトも行った事がないけど、最短距離で真っ直ぐ森の中を行っている筈。
マッピングで2つの青を探すけど、中々見つけられない。赤い点ばっかりあって、気配遮断と隠密で何とかやり過ごす。
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こんなに会わないって事は、二人もずっと走って向かっているってこと?追い越してないよね?
もう一度マッピングを見ると、少し先に青い点が2つ見つかった。でも並走していなくて、近づいたり離れたりして移動している。
まさか。
「お前ぇ!いくらレーナがえぇ言うたからって早速手ぇ出しやがってぇぇ!!」
「惚れた相手と一緒にいて、我慢出来るわけがないでしょう。やっと出会えた番なのですから、ひとつになる事は必須!」
「だからってドラコより先に結ばれおって!マルセルだっておるのに!お前の番ばんは一番最後じゃ!」
「おや、それはカサトの方では?今まで独り占めしていたのでしょう?レーナ様からは貴方の匂いしかしませんでしたからね」
戦ってる!こんな暗い森の中で!!
周りの魔物を倒しながら斬りかかったり弓で射ったり何してんのよ!
「カサト!ハルト!何してんのよ!!」
拡声スキルで叱ってみる。
寝ていた鳥たちは一斉に飛び立ち、近くにいた魔物は退いて行った。
「レーナ…」
「…レーナ様…」
耳を塞ぐ二人を睨みつけると、機嫌を取ろうと近づいてきた。
「レーナ、大丈夫やったか!良かった!心配しとったんやでぇ」
「レーナ様、ご無事で何よりでございます。…そのお顔もやはり可愛らしいですね」
「…何で喧嘩してたの?」
「「うっ」」
腕を組んでジロリと睨むけど、二人と目線が合わない。
やっと合ったカサトが、
「…レーナ、こいつとやったやろ」
「うっ」
次は私がたじたじになり、視線を泳がせる。
「エーバーハルトがレーナと交わったーとか言うたから、カッと頭に血が昇ってもて…仕掛けたのは俺や」
「…ごめん…」
「謝らんでえぇ。いつかは誰かとそうなるってわかった。でも何でや?何でこいつと?」
「何でって言われても…キスされたら急にそういう気分になっちゃって…」
「…は?まさか…エーバーハルト?お前何でか知ってんちゃうか?」
「う…っ」
次はハルトがたじたじになった。
ん?どういう事?
「…私が言う事はありません」
開き直ったハルトはプイッとそっぽを向いた。
「何でかは知ってるって事やな?」
「しまった…」
台詞を間違った、とでも言うように口を手で塞いだ。
ハルトの前に立つように周りこみ、口を塞いだ手を両手で握る。
「…ハルト、知ってる事教えて?私怒らないから…ね?」
「…っ」
最大限の上目遣いで、お願いをする。
目を輝かせ、手を強く握り返してきて。
「…本当に怒らないですか?」
「うん。教えて?」
「…っ、…エルフ…族の唾液には…催淫効果…がっ!」
カサトが思いっきりハルトの頭をグーで殴った。
「それでその気にさせてやったんか!好きやったら何してもいいと思ってんのか!!」
「仕方ないでしょう!こんなに手に入れたいと強く願ったのは初めてだったんです!ですがこの人からは既に他の人の匂いがするし、交われば私も愛してもらえると思ったんです!!」
ガバッと私を抱きしめてくる。頬に頬ずりしてきて、カサトが離れろや!と言い、ハルトが嫌です!と言う。
とりあえず、
「…過ぎた事は私は何も言わない。でも緋色達を追うことは最優先だと言った筈だけど?」
私の低い声に驚いた2人は、はいとイイ返事をして私の手を取って走り出した。
ぎゅっ♡ニッ=笑顔を向けてくる右手を繋ぐカサト。
ぎゅっ♡ニコッ=笑顔を向けてくる左手を繋ぐハルト。
そして二人はバチバチと火花を散らして睨み合う。
森の中を異様なスピードで走っているのに、異様な手繋ぎで二人は歪み合っている。
カサトからすれば私と交わる夫は順番通りにさせてあげたかったんだろうけど。
ハルトからすれば順番なんて関係なく私を手に入れたかった。
2人でコレだったら、ドラコ、ディグ、マルセル。
あ、多分マルセルは歪み合わないだろうなぁ。
僕は最後で!一緒のベッドで寝るだけで!いや、それさえもおこがましい!とか言いそう。
くすくすと笑っていると毒気が抜かれたのか。2人の睨み合いはなくなっていた。
気づくと森を抜ける所まで来ていて、少し行った先に街がある事がマッピングでわかった。
「この先に街があるわ。休憩がてら少しブルードラゴンの事を聞いてみましょう」
「おう!」
「了解致しました」
「…とその前に、髪色と目の色変えなくちゃ」
ずっと黒のままだった。
マッピングで確認すると、やっぱり古の魔法解除区域内じゃなかった。
街に着く頃には空は白んで朝が近づいている。
少し大きい街の名前はアローロ。
門番にギルドカードを見せ、ハルトは持っていなかったので入税を払い、街の中に入る。
この辺りではエルフ族自体とても珍しいので、ハルトはフードを深く被った。
ローブを着た人がちらほら見えて、少し冷たい風が顔を撫でていく。
カリフィネ地方に入っている事がわかった。
王家御用達の宿を見つけ、席に座って朝食を頼む。
エルフ族はお肉が食べられないらしいので、一食分だけお肉抜きにしてもらう。
朝食が来る間、色々な話に耳を傾ける。
「…ワイバーンが南に向かったらしい…」
「…赤いスライムが毒を吐き出してきて…」
「…カリフィネ王国は滅んでしまうかもしれないな…」
「…王都で開かれる勇者祭が…」
どれもブルードラゴンには関係ない物ばかり。
でもカリフィネ王国が滅んでしまうっていう言葉が引っかかった。
朝食が運ばれ、いただきますと手を合わせて食べようとすると、ハルトが不思議な顔をしていた。
「…口にする全ての物がユグドラシルの糧となりますように…」
エルフ族のいただきますらしい。
指を組んでお祈りしてから、サラダを口に運ぶ。
「肉が食べられへんとか考えられへんわー!それでよく力出るな?」
「私たちエルフ族は人族と違い、精霊に力を借りる事が出来ますから。それに長命なので、カサトが先に土に還ってもレーナ様の最後を看取る事が出来るのは私だけですからね?」
「そういえば、おじいちゃん1000年以上も生きてるもんね。…ちなみに今何歳なの?」
「180歳です、レーナ様」
ニッコリ笑って返してくるけど、年上も年上だった。見た目20歳代なのに!
「エルフ族は一定の年齢になると容姿が止まり、自身の魔力を使い切ると老いていきます。村長を見ればわかりますが、老いても長寿ですけどね」
「…って事はハルトを置いて、私達は先に死んじゃうんだ…」
「レーナ様が土に還る事があれば、私もすぐに還りますよ?番つがいは一心同体。…一人で生きていても仕方ありませんし」
そんなの、悲しい。いや、その気持ちは嬉しいんだけど。一人残されて寂しいと言うのもわかるんだけど。
「…ハルトは…残っててほしい。これは私のわがままだけど…ハルトには私達の子供を…寿命が尽きるまで見守っててほしい…」
「…レーナ様…」
自分から死ぬなんて事をしてほしくなかった。
「それいいなぁ。誰の子供でも同じように平等に見守ってほしいわ。なぁ、おじいちゃん」
「誰がおじいちゃんですか!私はまだ180歳ですよ!」
「歳だけ見たら十分おじいちゃんや!」
カサトが茶化してくれたお陰で場が和んだ。
良かった、カサトが居てくれて。
ハルトから良い返事は聞けなかったけど、レーナ様のわがままか。と呟いていたから。まだまだわからないけど、きっと私のわがままを聞いてくれると思う。その姿が見れないのが残念だけど。
朝食を食べ終わり、亭主にブルードラゴンが来たかどうかを訪ねた。
「おぉー、来たなぁ。一泊してすぐ出て行ったぞ」
「どこに行ったか知っていますか?」
「さあなぁ?今カリフィネ王国が大変だから、風鳴き谷に行ったのかもな」
カリフィネ王国が大変なのに、風鳴き谷に行った?
「…何かあったんですか?滅んでしまうかもって聞きましたけど…」
「あんたら王都から来たのか?カリフィネ王国は今極寒の地になってんだ。風鳴き谷に居着いた氷の魔物が吹く息のせいで氷の魔石はたんまりだけど、炎の魔石で防げないくらい吹雪いているらしいぞ。冒険者が何人か依頼を受けて行ったが…そういえば帰ってくる奴らはいねぇなぁ」
世界地図を広げ、風鳴き谷の場所を教えてもらう。
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亭主に情報料として多めにお金を渡すと、とても喜ばれた。
ギルドに行くと、掲示板にはカリフィネ王国から討伐依頼の紙が張り出されていた。
ランクは未知数、討伐した者には金貨1000枚。金貨に目が眩んで依頼を受ける人は多いみたい。
受付の人にブルードラゴンが依頼を受けたか聞くと、受けてないと教えてくれた。
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「それは俺やな!」
「いや、私が。カサトは近距離攻撃なのですから、当然かと」
「そんなんエーバーハルトが弓で魔物が近づいてくる前に倒したらええんちゃうん、なんやできひんのかお前?」
「出来ます。ですが私の方が安全に!静かに!揺れもなく!レーナ様をお運び出来ます!」
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言い合いを聞いていたら埒が明かない。
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少し買い出しして、街から出て森の中に入る。
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カサトには肉マシマシ、ハルトには野菜マシマシ。
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「ええやろ?」
「カサト、もしかしていつもしているのですか?」
「まぁな。だって暇やん?でも俺は寝てるレーナを抱いた事はない。夢の中で抱いた奴はおるけどな」
「?」
数時間後、交代したエーバーハルトに釘刺しする。
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「…わかりました」
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ってまたキスしとるし!
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「…ええで」
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