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30道中日記
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晩ごはんの後。魔王討伐を手伝う旨を伝え、その時から一緒に行動することにした。
最初に向かうのはカリフィネ王国。
大所帯になった為、馬と馬車を借りる事にする。ちなみにロウは私にしか扱えない為、未だにオルテュース商会の馬小屋にいる。
カサトとドラコは馬に乗って周囲を警戒する前衛、後衛はジュード。
御者をするハルトとキッキリ。
馬車の中は緋色、ベル、ビーバ、ネージュ、私。
男の子だと思っていた、ビーバはなんと女の子だった!ボーイッシュだし見た目は男の子なんだけど、声は高いし仕草も女の子だった。ごめんと心の中で謝っておく。
馬車にはみんなが乗る前に絨毯をひいてクッションをいっぱい創ったお陰か、寝転がり女子会みたいになって緊張感が全くない。
魔物は前衛の二人が倒すし、取りこぼしなくハルトとキッキリが遠距離攻撃してくれるから悠々快適だ。
大分後ろから来る、国王の陰の1人を除いては。
「そういえば、灰色の君来なかったねぇ?風鳴き谷のピンチの時」
ビーバの言葉に緋色がおどおどする。
「そういえば…そうでしたわね…?近くにいらっしゃらなかったのかしら?」
「…灰色の君って?」
「いや!あの!髪が灰色だからそう呼んでるだけで、本名は知らないの!」
髪が灰色の人?見た事ないなぁ。
「ヒイロのピンチの時、必ず助けてくれるんだよ!向こうもヒイロの事好きだと思うんだよねぇ!」
「ちょっとビーバ!やめてよー!」
「え!そうなの!?って事は緋色…!」
「す、好きとかじゃないから!!気になってるだけで…!!」
真っ赤な緋色をからかう。
そっか。緋色もこの世界で好きな人が出来たんだー!
「結婚したらあの家で住むの?」
「結婚って!!ま、まままだ!そんな!」
「結構おじさんだから、もしかしたら妻帯者かもしれないけどねぇ?」
「え…おじさん?」
見た目30代後半の彫りの深い顔立ちの剣士らしい。
緋色を助けては去っていくその人が、風鳴き谷で助けてくれなかったのは、多分凍えてしまって動けなかったんじゃないかな。
私たちはローブを着ていたから駆けつけられたけど。
もしかして陰の人なのかな?
向こうも緋色の事好きなら別にとやかく言わないけど。
マッピングを見ていたら、もう少しで領域外になる。
カリフィネ王国はもう少し。
「ハルト。カサトとドラコにもう少ししたら野営出来るところを探してもらうように伝えてくれない?ちょっと早いけど、アレしてからカリフィネ王国に入りたいから」
「わかりました。レーナ様」
昼食を取ってからずっと走りっぱなしだし、人が増えたから料理も多く作らないと。
「それにしてもこんなに多いパーティだと、スマホ欲しいね?」
「そうだね。離れてても会話出来るし」
「あ!通話出来るピアスみたいなの作れないかな?」
「……え?」
創造魔法で創っちゃおう!
唖然としているみんなの視線も気にせず、手を握って集中する。
そうだなー。通話を受信、音声はクリアにしてー。
手を開くと一見、丸い5ミリの黒い石で出来たピアスが手のひらに転がる。
「…多分できたと思う」
「えぇ?!精霊女王ってこんな事もできるの?」
「そ、そうそう!出来るみたい!」
危ない危ない!無意識に創造魔法で創ってしまった!
誤魔化しておく。
同じ要領でもう一つ黒い石で創り、緋色に渡す。
当然ピアスの穴なんて開いてない。
私は痛覚耐性のお陰で難なく開けられたけど、緋色は恐る恐る開けていた。
それを見たベルとビーバも興味深そうにしていたから、髪の色でベルにはピンク色の。ビーバには深緑色の石で創った。
躊躇なく穴を開けている所は流石冒険者だな、凄いなと思った。
「『通話、ビーバ』、聞こえる?」
「あ!聞こえる!!」
『通話と名前』を呼べばその人に、みんなに繋げたければ“全員”と言えば繋がる様にする。
「すごくクリアだね?!耳元で誰かが話してるみたい!!」
「成功だね!良かった。人数分創っておくね」
カサトは赤、ドラコは金、ハルトとマルセルはクリーム色。
キッキリは茶色、ジュードは真紅。
エマにも金色で創った。
少しして野営地に着いたらしく、テントの設営を始める。
もう一つ同じ大きさのテントを創って、3人ずつ。馬車にも寝られる様にすれば広々と寝られる筈。
今まで緋色たちは固い馬車の中で寝ていたみたいで、布団をひくと凄く喜ばれた。
テーブルをもう一つと椅子を6個創り、コンロと土鍋を創り出す。
「…もしかして…こんな所で食べられるの?」
「寒い日にはお鍋でしょ♪」
おでんのリクエストが多かったけど、仕込むのに時間がかかるし、大勢で寒い日には鍋がいい。
女性陣で料理を手伝ってもらい、器などを並べて早い夕食にした。
「ダシはどっちも魚だけど、こっちはお肉、こっちは魚メインだから」
ダシのいい匂いが、森の中に不釣り合いに広がる。
陰の人もこっちで食べればいいのにな。
何度マッピングで見ても1人みたいだから、携帯食で済ませていそうだ。
みんなのいただきますの合図で鍋の中がなくなっていく。これが終わればお米を入れておじやにしよう。
「…ネージュのご飯どうしよう?」
「お昼も食べなかったんだよね?」
雪人だから、もしかしたら氷とか食べるんだろうか。
試しに水魔法と風魔法で氷を創ってみると出来た。目を輝かせて手を伸ばしてきたので渡してみる。
『スキル:複合魔法を獲得しました』
口に含んでゆっくりと溶かして食べていた。
見た目は凄く寒そうだけど、雪人だし大丈夫そうだからいいか。
カサトにいつの間にか付いているピアスの事を言われ、思い出してみんなに渡した。
カサトのジト目が私に突き刺さる。知らん顔をしておいた。
おじやを作った後、私はもうお腹いっぱいだったので。
「マルセルとエマにもピアス持っていこうと思ってるんだけど、今から行ってもいいかな?」
「は?ちょい待てや!俺も行くわ!」
「いえ、ここは私が…」
「いや、僕が行こう!」
言ってくれるのは嬉しいんだけど、3人ともまだおじやに夢中じゃん。スプーンが止まってないけど!
「ううん、大丈夫。ぱっと行ってぱっと帰ってくるから。シャンプーとかの納品もしたいし」
「シャンプー?!やっぱりあれも玲奈が作ったの?」
「…そうだよ。あぁ、癒し処に置いてあるから知ってるの?」
「あれいいわよね!髪がツルツルになるし!」
「そうそう!お風呂なんて入りたくなかったけど、あの匂いがいいよね!」
ビーバはお風呂嫌いみたい。熱いかららしい。
「じゃあ私が一緒に行くわ!玲奈一人で行かせられないでしょう?」
ということで緋色が付いてくる事になった。
ま、いいか。
「…では私は食事後、一度ライラン王の元とエルフの里に足を運びましょう」
剣と矢尻と弓が出来てるかもしれないもんね。
ハルトにお願いして、ネージュを置いて行こうと思ったけれど、私が離すと泣いてしまう。
手がつけられなくなるので連れて行く事にした。
抱っこ紐を創って前に抱く。帽子を創って体温調節機能を付与し防壁を纏わせる。これでアンブシュアに行っても大丈夫かな?
緋色と共に転移魔法を展開し、一度みんなと別れた。
アンブシュアの家の玄関に着く。
「…凄い便利だね。転移魔法…。これも精霊女王だからなの?」
「う…うん、そうだよ」
嘘をつくのは心苦しいけど、今は少しだけ騙されていて。
家から出て、オルテュース商会へと向かう。
エマとマルセルはちょうど同じ場所にいた。
「…そんな…!一体誰との子供ですか!?女神様?!」
マルセルは私の前に跪いて涙を流し祈りのポーズをする。予想を裏切らないマルセルが面白い。
「森の中に、捨てられてたの。私が離れたら泣いちゃうから…」
ネージュが魔物だという事は言えなかった。
今の所私がいれば危害を加えないし、こんなに可愛いのに殺してしまうのは無理だったから。醜い魔物は倒すのに、なんだか矛盾してるけど。
大きくなって凶暴性が増したら、どうなるかはわからない。
「まぁ!可愛らしいですわね!…あら?ブルードラゴンのお一人ではありませんこと?髪の色が…レーナお姉さまと同じになっていますわね…?」
「その説はどうも、ご無沙汰しています。これが、私の本当の髪色なのです」
「今私たちはブルードラゴンと一緒に行動してるの」
エマは私が勇者だという事を知らない。マルセルは黙っていてくれている。
私たちが仲間になった事に、何故かエマがドヤ顔で魔王討伐も安心ですわね!と言った。
話もそこそこにシャンプーなどの納品をし、ピアスを二人に渡す。
「こ!これ!これがあれば手紙なんて不要になりますわよ!?これを商品化したら…!!」
「エマ!これは商品化しない…。私たちの絆だから」
商品化してしまったら大変な事になりそうだったから、これは止めておく。
残念な表情のエマを尻目に、マルセルはこれでいつでも女神様を呼ぶ事ができますね♡と嬉しそうだった。
クマもないし体重も戻ってきているマルセルに一安心する。
戻ろうとする私たちを名残惜しそうな顔で見るマルセルとエマを軽く抱きしめてあげ、頭を撫でてその場を後にした。
「はぁぁ…!女神様ぁ…!」
マルセルだけ一人遠くで可哀想だけど、もう少し辛抱してね。全てが終わったら甘やかしてあげるから。
「…あの人、玲奈の前ではあんな感じなのね…」
マルセルに幻滅した緋色の顔は青ざめていた。
テントに戻るとみんなで食べた物を片付けてくれていて、馬の世話もしてくれていた。
テーブルでみんなで話をしている。まだ夜になったばかりだから。みんなで遊ぶかなと思いトランプやウノ、オセロ、ジェンガを創って緋色に手渡した。
遊び方は緋色に教えてもらってと全て投げて。
何だ何だとみんなソワソワしてる。
「ちょっと…いやかなり早いけど、私寝るね。もしかしたら朝食作れないかもしれないから、申し訳ないけど適当に食べてくれる?」
「アレするんか?」
「うん。だからみんなが朝食食べた後、まだ寝てても馬車で移動してくれる?ここからカリフィネ王国は範囲内だから、そのまま入国してくれても大丈夫だから」
「レーナ…もしかして具合でも悪いのか?」
「ううん!そういうわけじゃないんだけど!眠りが深いだけだから…ごめんね。みんなは程々に楽しんで?」
まるで修学旅行みたいにみんなはしゃぐから、世直しの旅だという事を忘れてしまいそう。
「じゃあおやすみー」
なるべく明るく努めてみんなに手を振る。テントに入るとカサトも入ってきた。
「レーナ…もしかしてレベルごっつ高いんちゃうか?MPいくつになってんねん?」
カサトは鋭すぎるよ!マジで!
風鳴き谷に行くまでと、ラミアを倒したりと、ここまでの道程で結構レベル上がってた。恐るべし経験値倍加&経験値共有化!
「えーと…レベル気づいたら256になってたーてへぺろ」
「……は?」
「MPは合計で43000だから、大体12時間くらい寝ちゃうかも…」
「…けったいな魔法…古の勇者託しおって…」
ふっかいため息が降ってきて、私の唇を塞ぐ。
「はぁ…最初は俺の子供抱いて欲しかったのに…こいつ…!」
ネージュはムッとした顔をして、カサトに息を吹きかけた。
風と共に雪がカサトを襲い、あやして何とか止めさせた。
「怖ー!もうこいつの悪口言われへんやんけ!」
「…誰かの悪口を、言っていいわけないじゃない…」
「…少しいいだろうか?」
テントの外にドラコが立っていた。
カサトは渋々出て行き、入れ替わりで入ってきて正座して真面目な顔をして。
「…レーナ、キスをさせてほしい…」
真面目な顔で何を言うのか身構えていたのに。
そんな事かと思うけど、ドラコとは2回くらいしかしてないもんね。
「…いいよ」
頬を染めたドラコの、破顔した顔が近づいてくる。
このギャップがなんだかいいんだよね。
触れるだけの、長い様で短いキスの後。名残惜しそうに離れていくドラコの顔面に雪が吹雪いた。
「ネージュ…!?なんで…!」
「…良きライバルになりそうだ。だがネージュ、レーナはみんなの夫だ。目の前の出来事は受け入れなければならない…わかるな?」
「…だっ!」
理解したのか吹雪を止め、ドラコを見る目に力がこもる。
ドラコ意味わかって言ってる?それってネージュがヤキモチ焼いてるってこと?
ドラコは極上の笑みで私の頬を優しく撫で。
「ふ…おやすみ、レーナ」
「お、おやすみー…」
テントから出て行った。
ネージュを見ると顔を傾げて私を見上げていた。
その目はキラキラしている。
もう何も考えない!寝よう!
「おやすみ、ネージュ…」
「…あぅ…」
防壁は今日はかけなくてもいいかな。みんないるし。
古の魔法解除をして、眠りについた。
***********
ライラン王からミスリルの剣と矢尻を受け取り、エルフの里の村長に矢尻を渡すとその場で矢にしてくれた。長弓と矢を貰い、テントに戻る。
レーナ様から手渡すのがいいかと考えたけれど、早く手に馴染ませたいだろうからカサトに剣を。
弓をヒイロに渡す。
「え…っ!?ほんまに?えぇんか?!」
「弓…!ありがとうございます!」
「どちらもレーナ様からでございます。ご自身の報酬は受け取らず、お二人に武器をと…。感謝はレーナ様へお願い致します」
飛んで喜ぶ姿を尻目に、レーナ様が寝ているテントへと入る。
ネージュと寝ているレーナ様は、古の魔法解除をしたとカサトが言っていた。
「…レーナ様…愛しています…」
その柔らかい唇にキスを落とした。
最初に向かうのはカリフィネ王国。
大所帯になった為、馬と馬車を借りる事にする。ちなみにロウは私にしか扱えない為、未だにオルテュース商会の馬小屋にいる。
カサトとドラコは馬に乗って周囲を警戒する前衛、後衛はジュード。
御者をするハルトとキッキリ。
馬車の中は緋色、ベル、ビーバ、ネージュ、私。
男の子だと思っていた、ビーバはなんと女の子だった!ボーイッシュだし見た目は男の子なんだけど、声は高いし仕草も女の子だった。ごめんと心の中で謝っておく。
馬車にはみんなが乗る前に絨毯をひいてクッションをいっぱい創ったお陰か、寝転がり女子会みたいになって緊張感が全くない。
魔物は前衛の二人が倒すし、取りこぼしなくハルトとキッキリが遠距離攻撃してくれるから悠々快適だ。
大分後ろから来る、国王の陰の1人を除いては。
「そういえば、灰色の君来なかったねぇ?風鳴き谷のピンチの時」
ビーバの言葉に緋色がおどおどする。
「そういえば…そうでしたわね…?近くにいらっしゃらなかったのかしら?」
「…灰色の君って?」
「いや!あの!髪が灰色だからそう呼んでるだけで、本名は知らないの!」
髪が灰色の人?見た事ないなぁ。
「ヒイロのピンチの時、必ず助けてくれるんだよ!向こうもヒイロの事好きだと思うんだよねぇ!」
「ちょっとビーバ!やめてよー!」
「え!そうなの!?って事は緋色…!」
「す、好きとかじゃないから!!気になってるだけで…!!」
真っ赤な緋色をからかう。
そっか。緋色もこの世界で好きな人が出来たんだー!
「結婚したらあの家で住むの?」
「結婚って!!ま、まままだ!そんな!」
「結構おじさんだから、もしかしたら妻帯者かもしれないけどねぇ?」
「え…おじさん?」
見た目30代後半の彫りの深い顔立ちの剣士らしい。
緋色を助けては去っていくその人が、風鳴き谷で助けてくれなかったのは、多分凍えてしまって動けなかったんじゃないかな。
私たちはローブを着ていたから駆けつけられたけど。
もしかして陰の人なのかな?
向こうも緋色の事好きなら別にとやかく言わないけど。
マッピングを見ていたら、もう少しで領域外になる。
カリフィネ王国はもう少し。
「ハルト。カサトとドラコにもう少ししたら野営出来るところを探してもらうように伝えてくれない?ちょっと早いけど、アレしてからカリフィネ王国に入りたいから」
「わかりました。レーナ様」
昼食を取ってからずっと走りっぱなしだし、人が増えたから料理も多く作らないと。
「それにしてもこんなに多いパーティだと、スマホ欲しいね?」
「そうだね。離れてても会話出来るし」
「あ!通話出来るピアスみたいなの作れないかな?」
「……え?」
創造魔法で創っちゃおう!
唖然としているみんなの視線も気にせず、手を握って集中する。
そうだなー。通話を受信、音声はクリアにしてー。
手を開くと一見、丸い5ミリの黒い石で出来たピアスが手のひらに転がる。
「…多分できたと思う」
「えぇ?!精霊女王ってこんな事もできるの?」
「そ、そうそう!出来るみたい!」
危ない危ない!無意識に創造魔法で創ってしまった!
誤魔化しておく。
同じ要領でもう一つ黒い石で創り、緋色に渡す。
当然ピアスの穴なんて開いてない。
私は痛覚耐性のお陰で難なく開けられたけど、緋色は恐る恐る開けていた。
それを見たベルとビーバも興味深そうにしていたから、髪の色でベルにはピンク色の。ビーバには深緑色の石で創った。
躊躇なく穴を開けている所は流石冒険者だな、凄いなと思った。
「『通話、ビーバ』、聞こえる?」
「あ!聞こえる!!」
『通話と名前』を呼べばその人に、みんなに繋げたければ“全員”と言えば繋がる様にする。
「すごくクリアだね?!耳元で誰かが話してるみたい!!」
「成功だね!良かった。人数分創っておくね」
カサトは赤、ドラコは金、ハルトとマルセルはクリーム色。
キッキリは茶色、ジュードは真紅。
エマにも金色で創った。
少しして野営地に着いたらしく、テントの設営を始める。
もう一つ同じ大きさのテントを創って、3人ずつ。馬車にも寝られる様にすれば広々と寝られる筈。
今まで緋色たちは固い馬車の中で寝ていたみたいで、布団をひくと凄く喜ばれた。
テーブルをもう一つと椅子を6個創り、コンロと土鍋を創り出す。
「…もしかして…こんな所で食べられるの?」
「寒い日にはお鍋でしょ♪」
おでんのリクエストが多かったけど、仕込むのに時間がかかるし、大勢で寒い日には鍋がいい。
女性陣で料理を手伝ってもらい、器などを並べて早い夕食にした。
「ダシはどっちも魚だけど、こっちはお肉、こっちは魚メインだから」
ダシのいい匂いが、森の中に不釣り合いに広がる。
陰の人もこっちで食べればいいのにな。
何度マッピングで見ても1人みたいだから、携帯食で済ませていそうだ。
みんなのいただきますの合図で鍋の中がなくなっていく。これが終わればお米を入れておじやにしよう。
「…ネージュのご飯どうしよう?」
「お昼も食べなかったんだよね?」
雪人だから、もしかしたら氷とか食べるんだろうか。
試しに水魔法と風魔法で氷を創ってみると出来た。目を輝かせて手を伸ばしてきたので渡してみる。
『スキル:複合魔法を獲得しました』
口に含んでゆっくりと溶かして食べていた。
見た目は凄く寒そうだけど、雪人だし大丈夫そうだからいいか。
カサトにいつの間にか付いているピアスの事を言われ、思い出してみんなに渡した。
カサトのジト目が私に突き刺さる。知らん顔をしておいた。
おじやを作った後、私はもうお腹いっぱいだったので。
「マルセルとエマにもピアス持っていこうと思ってるんだけど、今から行ってもいいかな?」
「は?ちょい待てや!俺も行くわ!」
「いえ、ここは私が…」
「いや、僕が行こう!」
言ってくれるのは嬉しいんだけど、3人ともまだおじやに夢中じゃん。スプーンが止まってないけど!
「ううん、大丈夫。ぱっと行ってぱっと帰ってくるから。シャンプーとかの納品もしたいし」
「シャンプー?!やっぱりあれも玲奈が作ったの?」
「…そうだよ。あぁ、癒し処に置いてあるから知ってるの?」
「あれいいわよね!髪がツルツルになるし!」
「そうそう!お風呂なんて入りたくなかったけど、あの匂いがいいよね!」
ビーバはお風呂嫌いみたい。熱いかららしい。
「じゃあ私が一緒に行くわ!玲奈一人で行かせられないでしょう?」
ということで緋色が付いてくる事になった。
ま、いいか。
「…では私は食事後、一度ライラン王の元とエルフの里に足を運びましょう」
剣と矢尻と弓が出来てるかもしれないもんね。
ハルトにお願いして、ネージュを置いて行こうと思ったけれど、私が離すと泣いてしまう。
手がつけられなくなるので連れて行く事にした。
抱っこ紐を創って前に抱く。帽子を創って体温調節機能を付与し防壁を纏わせる。これでアンブシュアに行っても大丈夫かな?
緋色と共に転移魔法を展開し、一度みんなと別れた。
アンブシュアの家の玄関に着く。
「…凄い便利だね。転移魔法…。これも精霊女王だからなの?」
「う…うん、そうだよ」
嘘をつくのは心苦しいけど、今は少しだけ騙されていて。
家から出て、オルテュース商会へと向かう。
エマとマルセルはちょうど同じ場所にいた。
「…そんな…!一体誰との子供ですか!?女神様?!」
マルセルは私の前に跪いて涙を流し祈りのポーズをする。予想を裏切らないマルセルが面白い。
「森の中に、捨てられてたの。私が離れたら泣いちゃうから…」
ネージュが魔物だという事は言えなかった。
今の所私がいれば危害を加えないし、こんなに可愛いのに殺してしまうのは無理だったから。醜い魔物は倒すのに、なんだか矛盾してるけど。
大きくなって凶暴性が増したら、どうなるかはわからない。
「まぁ!可愛らしいですわね!…あら?ブルードラゴンのお一人ではありませんこと?髪の色が…レーナお姉さまと同じになっていますわね…?」
「その説はどうも、ご無沙汰しています。これが、私の本当の髪色なのです」
「今私たちはブルードラゴンと一緒に行動してるの」
エマは私が勇者だという事を知らない。マルセルは黙っていてくれている。
私たちが仲間になった事に、何故かエマがドヤ顔で魔王討伐も安心ですわね!と言った。
話もそこそこにシャンプーなどの納品をし、ピアスを二人に渡す。
「こ!これ!これがあれば手紙なんて不要になりますわよ!?これを商品化したら…!!」
「エマ!これは商品化しない…。私たちの絆だから」
商品化してしまったら大変な事になりそうだったから、これは止めておく。
残念な表情のエマを尻目に、マルセルはこれでいつでも女神様を呼ぶ事ができますね♡と嬉しそうだった。
クマもないし体重も戻ってきているマルセルに一安心する。
戻ろうとする私たちを名残惜しそうな顔で見るマルセルとエマを軽く抱きしめてあげ、頭を撫でてその場を後にした。
「はぁぁ…!女神様ぁ…!」
マルセルだけ一人遠くで可哀想だけど、もう少し辛抱してね。全てが終わったら甘やかしてあげるから。
「…あの人、玲奈の前ではあんな感じなのね…」
マルセルに幻滅した緋色の顔は青ざめていた。
テントに戻るとみんなで食べた物を片付けてくれていて、馬の世話もしてくれていた。
テーブルでみんなで話をしている。まだ夜になったばかりだから。みんなで遊ぶかなと思いトランプやウノ、オセロ、ジェンガを創って緋色に手渡した。
遊び方は緋色に教えてもらってと全て投げて。
何だ何だとみんなソワソワしてる。
「ちょっと…いやかなり早いけど、私寝るね。もしかしたら朝食作れないかもしれないから、申し訳ないけど適当に食べてくれる?」
「アレするんか?」
「うん。だからみんなが朝食食べた後、まだ寝てても馬車で移動してくれる?ここからカリフィネ王国は範囲内だから、そのまま入国してくれても大丈夫だから」
「レーナ…もしかして具合でも悪いのか?」
「ううん!そういうわけじゃないんだけど!眠りが深いだけだから…ごめんね。みんなは程々に楽しんで?」
まるで修学旅行みたいにみんなはしゃぐから、世直しの旅だという事を忘れてしまいそう。
「じゃあおやすみー」
なるべく明るく努めてみんなに手を振る。テントに入るとカサトも入ってきた。
「レーナ…もしかしてレベルごっつ高いんちゃうか?MPいくつになってんねん?」
カサトは鋭すぎるよ!マジで!
風鳴き谷に行くまでと、ラミアを倒したりと、ここまでの道程で結構レベル上がってた。恐るべし経験値倍加&経験値共有化!
「えーと…レベル気づいたら256になってたーてへぺろ」
「……は?」
「MPは合計で43000だから、大体12時間くらい寝ちゃうかも…」
「…けったいな魔法…古の勇者託しおって…」
ふっかいため息が降ってきて、私の唇を塞ぐ。
「はぁ…最初は俺の子供抱いて欲しかったのに…こいつ…!」
ネージュはムッとした顔をして、カサトに息を吹きかけた。
風と共に雪がカサトを襲い、あやして何とか止めさせた。
「怖ー!もうこいつの悪口言われへんやんけ!」
「…誰かの悪口を、言っていいわけないじゃない…」
「…少しいいだろうか?」
テントの外にドラコが立っていた。
カサトは渋々出て行き、入れ替わりで入ってきて正座して真面目な顔をして。
「…レーナ、キスをさせてほしい…」
真面目な顔で何を言うのか身構えていたのに。
そんな事かと思うけど、ドラコとは2回くらいしかしてないもんね。
「…いいよ」
頬を染めたドラコの、破顔した顔が近づいてくる。
このギャップがなんだかいいんだよね。
触れるだけの、長い様で短いキスの後。名残惜しそうに離れていくドラコの顔面に雪が吹雪いた。
「ネージュ…!?なんで…!」
「…良きライバルになりそうだ。だがネージュ、レーナはみんなの夫だ。目の前の出来事は受け入れなければならない…わかるな?」
「…だっ!」
理解したのか吹雪を止め、ドラコを見る目に力がこもる。
ドラコ意味わかって言ってる?それってネージュがヤキモチ焼いてるってこと?
ドラコは極上の笑みで私の頬を優しく撫で。
「ふ…おやすみ、レーナ」
「お、おやすみー…」
テントから出て行った。
ネージュを見ると顔を傾げて私を見上げていた。
その目はキラキラしている。
もう何も考えない!寝よう!
「おやすみ、ネージュ…」
「…あぅ…」
防壁は今日はかけなくてもいいかな。みんないるし。
古の魔法解除をして、眠りについた。
***********
ライラン王からミスリルの剣と矢尻を受け取り、エルフの里の村長に矢尻を渡すとその場で矢にしてくれた。長弓と矢を貰い、テントに戻る。
レーナ様から手渡すのがいいかと考えたけれど、早く手に馴染ませたいだろうからカサトに剣を。
弓をヒイロに渡す。
「え…っ!?ほんまに?えぇんか?!」
「弓…!ありがとうございます!」
「どちらもレーナ様からでございます。ご自身の報酬は受け取らず、お二人に武器をと…。感謝はレーナ様へお願い致します」
飛んで喜ぶ姿を尻目に、レーナ様が寝ているテントへと入る。
ネージュと寝ているレーナ様は、古の魔法解除をしたとカサトが言っていた。
「…レーナ様…愛しています…」
その柔らかい唇にキスを落とした。
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