大量チートスキルをイマイチ使いこなせない勇者〜それは召喚に巻き込まれた私でした〜

MIILU

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36ワイバーン討伐!

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空飛ぶ魔物の一種である、ワイバーン。

炎を吐き、空から人を鉤爪で攻撃してくる。

魔法は胸の魔石で攻撃が通らなくて、しかもそこが弱点である為に、囮を使って下に降りて来た時を狙って攻撃するしかない。

弓なら攻撃が通るみたいだけれど、その前に気づかれて避けられるか落とされるのがオチ。



「空が飛べたらいいんやけどなー」



空を飛ぶ事、出来るかも?



「…何思いついてんねん、自分…」

「え?バレた?てへぺろ」



靴に『脚力強化』と『空脚』と『対空』をつけたらいけるかも?

空を飛ぶには風魔法がいるけど。



「コントロール難しいかもしれないけど、慣れたら空中戦も行けると思うから…」



カサトのブーツに試しに効果付与する。

転移する場所は初心者の森の中。

転移は人数によってMPの減りが違う為、私とハルトで飛ぼうとしたけど、ハルトは行った事がないからどうしようか迷った挙げ句、私が全員を連れて行く事になった。

影の人も入れて、計12人で初心者の森へ飛んだ。



「…っ?!」

「レーナ?!大丈夫か?」



無事に飛べたけど、結構負担がきた。

目がくらんで足に力が入らない。



「だ、大丈夫大丈夫!私一秒に1MP回復するし。それよりカサト飛んでみて」

「…は?MP回復する?」

「うん。0にならなければ自然にね。そんな事いいから、やってみて!」



MP自然回復って他の人にはないのかな?

倒れそうな私をネージュが支えてくれて、カサトは渋々地面を蹴ると木の上の葉っぱの中に消えていった。



「ぅおい!なんやこれ!」

「ジャンプ力上げる的な?飛んでる時に空を蹴ってみてよ。多分もっと飛べるよ?滑空するには風魔法を使うしかないけど、空中待機は出来るはずだから」

「…凄いな…。レーナ、悪いが僕にもかけてくれないだろうか?MPポーションを渡すから」

「ポーション?いいよいいよ。多分大丈夫だから…怪我しないでね?」

「もちろん」

「おい!何で俺には言わんねん!」



降りてきて文句を言うカサトを尻目にドラコにも同じ効果付与をする。

ジュードもしたそうだったけど、下を守る人がいなくなるからとドラコに諭されていた。

終わったらしてあげる約束をして、急いで王都へ向かった。

ギャアギャアと恐竜みたいな鳴き声が聞こえる。



「…プテラノドンみたい…」

「玲奈もそう思う?」



ツルッとした赤黒い肌に頭の上には角みたいなのが生えている。パッと見プテラノドンなんだけれど、口から火を吹いたり鉤爪で人を襲っていて、街の中は鉄の匂いや焼けた匂いが充満していた。

城の上空に飛んではいるけど、見えない壁に阻まれて中に入れないみたい。



「胸に真っ赤な石があるやろ!あれが弱点や!魔法防御力が高いから魔法は使われへん。気をつけろよ!」



門番もいない。

中に入ると一体のワイバーンが地面に降りていた。

倒れた人を物みたいにくちばしでつついたりしている。

これは、相当ヤバいかも。

匂いとか、人の内蔵とか、血とか、焼けただれた人とか。



「っ!」

「レーナ、だいじょぶ?」



ここまで血生臭いのは初めて。

緋色も相当きてるみたいでグリさんが宥めている。

戦争も体験した事のない平和な世界に住んでいた私たちが、こういうのに慣れる日はくるんだろうか。

慣れたくないけど今は、目を背けない事。早くワイバーンを退治する事の他ない。

マスクを創って、防臭効果付与する。

人数分創ってみんなに手渡す。



「…私たちが出来る事は、一刻も早くワイバーンを退治する事…だよね。これで匂いがマシになると思うから、使って」



マスクをすると匂いはしなくなった。

下に残るのは私には無理だ。

自分の靴にも効果付与し、下に残る組に防壁を纏わせる。

空中戦は私、カサト、ドラコ。

落ちてきたワイバーンは風魔法を使える他の冒険者に、噴水の広場に置いて貰うようにお願いしてもらう。



「みんな、危なくなったら誰か呼んでね!」

「よし、カサト勝負だ」

「言われなくても!レーナは無理すんなよ!」

「無理はしないけど、結界は破壊したいなぁ…」

「それが無理やって!」

「さぁ行くよ!みんな頑張ろうね!」



みんなの返事を聞いて、地面を蹴って2階の高さまで飛ぶ。さらに空を蹴ると同じくらい飛べた。

風魔法で補助をすると空を飛べた。

まるでゲームみたい!



「わー…凄い…」

「俺らも行くで!ドラコ!」

「遅れを取るなよ!」



魔法が効けばもっと楽に倒せるんだろうけど。

私たち3人は散って退治する事にした。

人間3人分くらい大きいワイバーンの懐に入るのは容易だった。目が前を向いている時に後ろから近づけば気づかれない。空中を人が飛ぶ事なんてないからだろう。

前に回った時には気づいても遅い。杖を剣の様に振って胸の石を砕く。

断末魔と共に絶命したワイバーンは落ちていった。

家の上に落ちる前にネージュがトルネードで噴水の広場に運んでいってくれる。

他の冒険者たちも、屋根に登って落ちてくるワイバーンを攻撃し、軌道を外して通路に落とした。

マンモスの時みたいに、エクスカリバーを振りかぶってワイバーンを城の結界にぶつけた。



「…やっぱダメなんだ…」



結界は強く、跳ね返ってくる。

結界にぶつかった拍子に胸の石が壊れたのか、絶命したワイバーンはそのまま落ちていく。

視線を感じ、城に目を向けると国王らしき人がこちらを見ていた。

高見の見物を決め込む城の中の人たち。

黒髪をなびかせる私を、またあの目で見ているのだろうか。

あの時に受けた恐れより、今は怒りの方が強い。

結界、いつか壊してやる!

隠蔽を継続させる大掛かりな魔法は、人の手では出来ないとエルフの村長は言っていた。

強力な何かを媒体にして、力を増幅させていると。

城に張られている結界も、何かが魔力を維持しているからではないだろうか。

それを壊せば結界が壊れて中の人にも古の魔法解除が使える。

絶対、それを壊して世界を正してやるんだから!



「レーナ、そっちはどうや?」

「カサト?こっちはもう少しいるよ。そっちは?」



右耳からしか聞こえない。

左耳を触ると、ピアスがない!



「あ?なんだぁ?レーナ、近くにいんのかぁ?」

「エタン?!」

「藍雷?!なんでや?!」



そうだ!ピアス取られたんだ!

今まで忘れてた!



「…エタン。私のピアス取ったでしょ。それには通信機能が付いてるの」

「つうしん?んじゃ近くにはいねぇのかぁ?」

「あなたがどこにいるか知らないけど、そうだよ。…返してとは言わないから、通信機能は止めさせて」

「あ?なんでだよ?別にいーじゃねーか。他の奴とはつうしん?してんのに、何で俺様はダメなんだよ?」

「…それは私のピアスなの。私の名前で繋がるようになってる。あなたにはあなたのピアスをあげるから…」

「…おっそうだ、ちょうどいいやぁ。3日後の夜、またあの家に来いよ。抱いてやるからよぉ!」

「…っ!」

「おい!お前ぇ!調子に乗ってんじゃ…!」

「来ねぇなら、別にいいけどぉ…その変わり、誰か殺しちまうかもなぁ…」

「カサト待って!…わかった…3日後の夜に行く。行けばいいんでしょ!」

「おぉ!遅れたら前の倍は抱くからなぁ♪」



高笑いが聞こえ、聞きたくなくて通信を切った。

味方になれば心強いけど、エタンはまるで手に負えそうにない。

どうしたらいい?



「レーナ!」

「…カサト」



私を見つけに来たカサトは私を抱きしめてくれた。

身体が震えているのは、悔しいから?それとも私がされる事を思って?



「…嫌や、俺…もうあんな思いでレーナを待つんは…!」

「カサト…ごめんね…私がもっと強ければ…。でも安心して。みんなに手出しなんてさせないから」



抱きしめ返すと、それ以上は何も言わなかった。

エタンより強くならなければ。

一度エタンのステータスを確認してみるのもいいかもしれない。





他の冒険者の活躍もあり、ワイバーンは無事に討伐できた。

ただ、何体かは取り逃がしてしまったけれど。

以前プロチュインを襲った時は3体だったけれど、今回は比べ物にならない。広場には噴水をぐるりと周る様にワイバーンの死骸が12体も横たわっていた。

街の人々と家屋への被害は酷いものだった。手の空いた人たちが火事の鎮火や亡くなった人の死体を教会まで運んでいく。

まだ体力のある冒険者たちは怪我をしている人たちに回復魔法をかけていた。

殺伐とした雰囲気の中、馬に乗った騎士団たちがブルードラゴンの元へ来た。



「勇者様御一行ですね?国王様がお呼びです」



今頃なに街に降りてきてんだって、無能な騎士団どもがって声が聞こえる。

だけどお呼びがかかってしまった以上、ブルードラゴンと緋色は城に行く他ない。



「緋色、ちょっと…」



緋色を細い路地に引っ張り、髪色と瞳の色を前に戻す。



「一応ね。城に結界が張ったままだから、きっとあの中は古の魔法解除出来てないと思うから」

「…ありがとう、玲奈。すぐ戻ってくるから…」

「うん…牛の帽子亭で待ってる」



不安にさせないように笑顔を作ると、向こうも笑顔を作ってブルードラゴンと共に城へ向かった。

ドラコにも手を振ると、手を上げて姿が見えなくなっていく。

ワイバーン討伐についての話だろうか。

残ったメンツを集める為、通信するとグリさんは緋色が心配なので遠くから見守るとの事だった。

私とカサト、ハルトとネージュとで牛の帽子亭へと向かった。
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