聖女は記憶の残滓に恋焦がれる ~男体化してしまった聖女の妹が私を汚そうとするんですが誰か助けてください~

なのの

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6.クリストン男爵主催舞踏会

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 クリストン男爵の屋敷は公爵家から比較的近く、普段着であれば行こうと思えば徒歩で行ける範囲。
 ですが風船王子というエスコートがいるのですから、勝手に一人でいく訳にはいきません。
 馬車で一緒に行かないと風船王子にも失礼になる。
 めんどくさ。

 短い距離なのに、到着までに時間がかかるのは、馬車渋滞が起きているから。
 王都内では爵位によって土地面積が厳密に定められているのが原因で、男爵の敷地は狭いんです。
 それでも内装は凄いらしいんですよね。
 贅を尽くしているともっぱらの噂です。
 とは言え眼鏡を外しているので多少ぼやけて見えるのが少し残念です。

 そんな訳で風船王子との他愛の無い会話が永遠に続くのかと思うくらいの時間が経過してようやく私達が降りれる番になった。

「アリアナ、どうぞ」

 風船王子が先に降りて手を差し伸べる。
 お礼をいいつつ手を借りて、馬車から居りると周りから声が上がる。
 風船王子が婚約者と来たと言うだけで注目を浴びるのは宿命みたいなものです。
 出来れば目立ちたくないのですけどね。

 貴族にすれば王家や公爵家の者が来たとなれば挨拶しに駆けつけるのは最優先事項となる。
 クリストン男爵も御多分に漏れず私達を夫婦で迎え入れた。

「ようこそ、殿下、お越しいただきありがとうございます。それとサザーランド公爵令嬢、アリアナ様、いつもよりもナチュラルメイクですね、ドレスとお似合いで美しいですね」

 適度にテンプレート的なお礼をして、ホールの方に向かった。
 途中で風船王子がそっと耳打ちをする。

「先に言われてしまったが、今日は今まで以上に綺麗だよ。今回の呪いの話が落ち着いたら早々に式を挙げたいくらいだ」
「嬉しいです、ジェイミー様」

 あーうん、うれしいー(棒読み)
 結婚に至るのは任務が終わる嬉しさがあるものの、妹の呪いが解けていない事によるその後のトラブルが目に見えるので、あまり両手を上げて喜べないでいる。
 だって、結婚式の日の内に花嫁が失踪したなんて大惨事ですよ。
 公爵家としてもどうかるか分かったものじゃありません。

 とはいえ、実際そう簡単に出来る訳ではないのが王族の辛い所。
 とりあえず、王妃様に気に入られない限り許可なんて出ませんからね。
 妹はその点、ちょっと抜けているというか、王妃様相手に好感度を工作は悉く失敗しているらしく、その話は友達経由で私の耳に届いていた。
 ちなみに、婚約が成立したのは判定の甘い国王陛下のお陰だそうです。

 王妃様の事なんてまだまだ先だと思ってた矢先、風船王子が信じられない事を口にした。

「それで、母上がここに来られているのですよ、会いますよね?」
「それは勿論ですが、男爵家主催の舞踏会に来られるって異常事態じゃないですか?」
「そうなのですよ。珍し事もありますね」

 いやいや、珍しいってレベルじゃないですよ。
 王妃様が来るなんて公爵、侯爵レベルの主催じゃないと来ないです。
 少なくとも警備とか色々の面で問題有り過ぎですよ。
 何の気まぐれ?まさかこんなタイミングで、婚約者の資質を見に来た?
 あ、そうだ。
 認められなくて破談にしたら色々楽じゃない?
 そうと決まれば、ちょっと生意気に対応してみようかな。

 そんな事を持っていたのに、久しぶりのパーティー。
 食べ物に目がくらんでしまいました。
 しかも少しズレた眩み方を・・・。

「ジェイミー様、御覧になってください。この季節に桃ですよ!」
「あ、ああ、桃だな、季節はいつ頃の物だったかな」
「桃の旬は夏です!今は春。これがどういう事かわかりますか?分からないですよね?どういう意味かと言いますと、昨年発明された魔導具のお陰で年4回収穫できるようになったと言う事ですよ!こんなところでその成果物を見る事になるなんて~」
「そ、そうなのか」

 その私の燥ぎ様にクリストン男爵が喰いついた。

「そうなのですよ、さすがアリアナ様、よくご存じですな、年に1度、特定の季節にしか採れない物が4度も採れる、つまり4倍の収穫になったのは大きな発明でございます。これも、アリアナ様の姉君のお陰でございます、お礼に是非、パーティーにお誘いしたいと思っているのですが、なかなか招待に応じて貰えず・・・アリアナ様からも言って頂けないでしょうか」
「あははは、そうですね、言うだけ言ってみますね」
「ほう、あの地味女がそんな発明を、今度会ったら褒めてやろうかな」

 こんな所で自分の株を上げてどうするー!
 しかも実質、ただの自画自賛。
 そう考えると、顔から火が出る思いです。

 でも、自分の発明したものが役に立って結果を出している所を見ると嬉しい。
 これだけでも来て良かったよ~。

「あら、ジェイミーはこの発明の真価が分かってない様ね」
「は、母上!」

 王妃様が、わざわざ話しかけて来た。
 さて、婚約破棄に向けて話し合いますか。
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