21 / 51
17.教会の不思議(後編)
しおりを挟む
パレーゾの奇跡の翌日。
大聖堂に入ると、そこにはパレーゾ村で会った、神父様が居た。
それだけなら兎も角、なぜかジェイミー様まで待っていた。
大聖堂の入り口に大司教様がわざわざ出て来て「ようこそ、アリアナ様」なんていう訳だ。
その言葉の意味に気付いて、さっと眼鏡を外して正解でした。
そういう訳で今日は、アリアナとして行動する日となった。
話は大聖堂の奥の間でする事になった。
大きなテーブルをぐるっと取り囲むのは、王妃様、ジェイミー様、大司教様、神父様、私の5人。
そして、レイラさんは傍で待機していると言う状況。
なんでしょうね、査問会でも開くのでしょうか。
場の重い空気を引きずったまま、大司教様が沈黙を破る。
「それでは、パレーゾの奇跡について、改めて神父様からお聞かせ願いますかな」
「わかりました、我らが祈りを捧げていると女神像が光り輝き、人に近い姿となって降臨なされました。それから豊穣の祈りを捧げて頂くと、もう1月程で実が付く予定の穀物や果実が一斉に収穫できる程に実ったのです。そしてその前日に仕込んでいた果実酒なのですが、十分に熟成が進んでいるだけでなく、これまでと異なる上品でまろやかなうま味が出る様になっていたのです、まさに奇跡と呼ばずしてな──」
「ああ、神父様、それで結構です」
長くなりそうになった所を大司教様が御止めになられた。
よかったよかった、さくっと終わって帰らせてください。
「次に、大聖堂の方で起きた事を申しますと、時を同じくしてこちらの女神像にアリアナ様が触れ、気を失った状態となりました。その状態でアリアナ様のの記憶がパレーゾの奇跡と一致しております。では次にアリアナ様にその時の何をしたかをお聞かせ願えないでしょうか」
「その時は、隣村の情景をイメージしました。書物で見た事ある情景です、それで女神像を触っただけですね」
「つまり、絵を思い出すだけでその場所に降臨できると言う訳ですね、それをもう一度別の村で試していただく事は出来るでしょうか?」
「恐らくは可能かと思います」
「では───」
大司教様は事前にディリップという村に連絡を入れており、教会には既に人が集まっていると言う事。
その村の画もみせられ、さあ行って来て下さい、と言う感じに女神像の前に連れられた。
ですが、その女神像の真ん前には大きなベッドがあり、倒れる事を前提とした準備がなされていた。
「これは、すぐに横になれる様に配慮しただけでございます」
運ぶのが手間なのですね。
まぁいいんですけど。
そうして村をイメージしながら膝辺りを触ると同じ事が起きる。
そして周りの景色は小さな教会へと変わった。
「おお、大司教様のおっしゃる通りだ!」
「女神様!!!」
「我らにも豊穣の祈りを!!」
私はその豊穣効果を直接見て見たくなった。
実は口だけで皆で騙してるとか、流石にないとは思うけど、やはりこの目で見て見たい。
一番前に居た小さな女の子に話しかける。
「実りの遅い畑に連れてってくれるかな?」
「うん!女神様来て!」
小さな女の子は喜んで私の手を引っ張った。
連れられるままに付いて行くと、すぐに村の外の畑に到着する。
見ればすぐに分かる。
成程、まだまだ収穫前の段階だ。
これが実れば、本当に凄いね、なんて思いながら、祈った。
豊穣の恵みがこのディリップに降り注がれます様に──
しばらくして目を開けると、そこには黄金色に染まった作物が気持ち良さそうに風に揺れていた。
村人の歓声は鳴りやまず、感謝の言葉は途切れる事を知らなかった。
そうなるとむず痒くて居心地が悪くなるので、すたこらさっさと逃げるように大聖堂の私の体に戻って来た。
ベッドに横になっていた私を皆さんが注目する構図。
ちょっと恥ずかしい。
というか、淑女の寝顔見るのってありなのでしょうか。
顔から火が出てしまいそう。
私がディリップ村での降臨に成功した事を伝えると、皆は大喜びした。
念のため、ディリップ村から早馬で大聖堂が来る予定になっているそうですが、それは暫くかかるとの事。
では、帰りましょうと、起き上がる所で王妃様に肩を掴まれた。
王妃様は笑顔で『次はどこで奇跡を起こすか話し合いましょう』と、言われ、またもや大きな机を囲んだ。
大きな地図に教会の印がいくつも付けられていた。
その数、292か所。
その多さに思わず、声を上げてしまう。
「これ全部やるって言うんですか!?」
「いえいえ、収穫期が近い所だけでいいのです。ですから、ここから西のこの区域のみ」
「だいたい・・・42か所くらい?2か所終わってるから、残り40?」
「既にその地区の何名かが噂を聞きつけたのか、嘆願書を出してきたぞ」
と、ジェイミーが偉そうに言う。
あんたは何もしてないでしょって言いそうになるのをぐっと堪えた。
「そうね、不公平になるとそれはそれで・・・」
王妃様まで。
「い・・・いつまでにでしょうか」
「早い内がいいです、収穫時期の問題がありますから」
それから毎日、対応する事になった。
1日8か所5日間のぶらり降臨の旅です。
折角だから、楽しんで周りましょう。
トホホ。
後で気づいた事があった。
「これ利用して、魔女探せば良くない?」
大聖堂に入ると、そこにはパレーゾ村で会った、神父様が居た。
それだけなら兎も角、なぜかジェイミー様まで待っていた。
大聖堂の入り口に大司教様がわざわざ出て来て「ようこそ、アリアナ様」なんていう訳だ。
その言葉の意味に気付いて、さっと眼鏡を外して正解でした。
そういう訳で今日は、アリアナとして行動する日となった。
話は大聖堂の奥の間でする事になった。
大きなテーブルをぐるっと取り囲むのは、王妃様、ジェイミー様、大司教様、神父様、私の5人。
そして、レイラさんは傍で待機していると言う状況。
なんでしょうね、査問会でも開くのでしょうか。
場の重い空気を引きずったまま、大司教様が沈黙を破る。
「それでは、パレーゾの奇跡について、改めて神父様からお聞かせ願いますかな」
「わかりました、我らが祈りを捧げていると女神像が光り輝き、人に近い姿となって降臨なされました。それから豊穣の祈りを捧げて頂くと、もう1月程で実が付く予定の穀物や果実が一斉に収穫できる程に実ったのです。そしてその前日に仕込んでいた果実酒なのですが、十分に熟成が進んでいるだけでなく、これまでと異なる上品でまろやかなうま味が出る様になっていたのです、まさに奇跡と呼ばずしてな──」
「ああ、神父様、それで結構です」
長くなりそうになった所を大司教様が御止めになられた。
よかったよかった、さくっと終わって帰らせてください。
「次に、大聖堂の方で起きた事を申しますと、時を同じくしてこちらの女神像にアリアナ様が触れ、気を失った状態となりました。その状態でアリアナ様のの記憶がパレーゾの奇跡と一致しております。では次にアリアナ様にその時の何をしたかをお聞かせ願えないでしょうか」
「その時は、隣村の情景をイメージしました。書物で見た事ある情景です、それで女神像を触っただけですね」
「つまり、絵を思い出すだけでその場所に降臨できると言う訳ですね、それをもう一度別の村で試していただく事は出来るでしょうか?」
「恐らくは可能かと思います」
「では───」
大司教様は事前にディリップという村に連絡を入れており、教会には既に人が集まっていると言う事。
その村の画もみせられ、さあ行って来て下さい、と言う感じに女神像の前に連れられた。
ですが、その女神像の真ん前には大きなベッドがあり、倒れる事を前提とした準備がなされていた。
「これは、すぐに横になれる様に配慮しただけでございます」
運ぶのが手間なのですね。
まぁいいんですけど。
そうして村をイメージしながら膝辺りを触ると同じ事が起きる。
そして周りの景色は小さな教会へと変わった。
「おお、大司教様のおっしゃる通りだ!」
「女神様!!!」
「我らにも豊穣の祈りを!!」
私はその豊穣効果を直接見て見たくなった。
実は口だけで皆で騙してるとか、流石にないとは思うけど、やはりこの目で見て見たい。
一番前に居た小さな女の子に話しかける。
「実りの遅い畑に連れてってくれるかな?」
「うん!女神様来て!」
小さな女の子は喜んで私の手を引っ張った。
連れられるままに付いて行くと、すぐに村の外の畑に到着する。
見ればすぐに分かる。
成程、まだまだ収穫前の段階だ。
これが実れば、本当に凄いね、なんて思いながら、祈った。
豊穣の恵みがこのディリップに降り注がれます様に──
しばらくして目を開けると、そこには黄金色に染まった作物が気持ち良さそうに風に揺れていた。
村人の歓声は鳴りやまず、感謝の言葉は途切れる事を知らなかった。
そうなるとむず痒くて居心地が悪くなるので、すたこらさっさと逃げるように大聖堂の私の体に戻って来た。
ベッドに横になっていた私を皆さんが注目する構図。
ちょっと恥ずかしい。
というか、淑女の寝顔見るのってありなのでしょうか。
顔から火が出てしまいそう。
私がディリップ村での降臨に成功した事を伝えると、皆は大喜びした。
念のため、ディリップ村から早馬で大聖堂が来る予定になっているそうですが、それは暫くかかるとの事。
では、帰りましょうと、起き上がる所で王妃様に肩を掴まれた。
王妃様は笑顔で『次はどこで奇跡を起こすか話し合いましょう』と、言われ、またもや大きな机を囲んだ。
大きな地図に教会の印がいくつも付けられていた。
その数、292か所。
その多さに思わず、声を上げてしまう。
「これ全部やるって言うんですか!?」
「いえいえ、収穫期が近い所だけでいいのです。ですから、ここから西のこの区域のみ」
「だいたい・・・42か所くらい?2か所終わってるから、残り40?」
「既にその地区の何名かが噂を聞きつけたのか、嘆願書を出してきたぞ」
と、ジェイミーが偉そうに言う。
あんたは何もしてないでしょって言いそうになるのをぐっと堪えた。
「そうね、不公平になるとそれはそれで・・・」
王妃様まで。
「い・・・いつまでにでしょうか」
「早い内がいいです、収穫時期の問題がありますから」
それから毎日、対応する事になった。
1日8か所5日間のぶらり降臨の旅です。
折角だから、楽しんで周りましょう。
トホホ。
後で気づいた事があった。
「これ利用して、魔女探せば良くない?」
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される
絵麻
恋愛
桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。
父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。
理由は多額の結納金を手に入れるため。
相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。
放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。
地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる