聖女は記憶の残滓に恋焦がれる ~男体化してしまった聖女の妹が私を汚そうとするんですが誰か助けてください~

なのの

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17.教会の不思議(後編)

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 パレーゾの奇跡の翌日。
 大聖堂に入ると、そこにはパレーゾ村で会った、神父様が居た。
 それだけなら兎も角、なぜかジェイミー様まで待っていた。
 大聖堂の入り口に大司教様がわざわざ出て来て「ようこそ、アリアナ・・・・様」なんていう訳だ。
 その言葉の意味に気付いて、さっと眼鏡を外して正解でした。

 そういう訳で今日は、アリアナとして行動する日となった。

 話は大聖堂の奥の間でする事になった。
 大きなテーブルをぐるっと取り囲むのは、王妃様、ジェイミー様、大司教様、神父様、私の5人。
 そして、レイラさんは傍で待機していると言う状況。
 なんでしょうね、査問会でも開くのでしょうか。

 場の重い空気を引きずったまま、大司教様が沈黙を破る。

「それでは、パレーゾの奇跡について、改めて神父様からお聞かせ願いますかな」
「わかりました、我らが祈りを捧げていると女神像が光り輝き、人に近い姿となって降臨なされました。それから豊穣の祈りを捧げて頂くと、もう1月程で実が付く予定の穀物や果実が一斉に収穫できる程に実ったのです。そしてその前日に仕込んでいた果実酒なのですが、十分に熟成が進んでいるだけでなく、これまでと異なる上品でまろやかなうま味が出る様になっていたのです、まさに奇跡と呼ばずしてな──」
「ああ、神父様、それで結構です」

 長くなりそうになった所を大司教様が御止めになられた。
 よかったよかった、さくっと終わって帰らせてください。

「次に、大聖堂の方で起きた事を申しますと、時を同じくしてこちらの女神像にアリアナ様が触れ、気を失った状態となりました。その状態でアリアナ様のの記憶がパレーゾの奇跡と一致しております。では次にアリアナ様にその時の何をしたかをお聞かせ願えないでしょうか」
「その時は、隣村の情景をイメージしました。書物で見た事ある情景です、それで女神像を触っただけですね」
「つまり、絵を思い出すだけでその場所に降臨できると言う訳ですね、それをもう一度別の村で試していただく事は出来るでしょうか?」
「恐らくは可能かと思います」
「では───」

 大司教様は事前にディリップという村に連絡を入れており、教会には既に人が集まっていると言う事。
 その村の画もみせられ、さあ行って来て下さい、と言う感じに女神像の前に連れられた。
 ですが、その女神像の真ん前には大きなベッドがあり、倒れる事を前提とした準備がなされていた。

「これは、すぐに横になれる様に配慮しただけでございます」

 運ぶのが手間なのですね。
 まぁいいんですけど。

 そうして村をイメージしながら膝辺りを触ると同じ事が起きる。
 そして周りの景色は小さな教会へと変わった。

「おお、大司教様のおっしゃる通りだ!」
「女神様!!!」
「我らにも豊穣の祈りを!!」

 私はその豊穣効果を直接見て見たくなった。
 実は口だけで皆で騙してるとか、流石にないとは思うけど、やはりこの目で見て見たい。
 一番前に居た小さな女の子に話しかける。

「実りの遅い畑に連れてってくれるかな?」
「うん!女神様来て!」

 小さな女の子は喜んで私の手を引っ張った。
 連れられるままに付いて行くと、すぐに村の外の畑に到着する。
 見ればすぐに分かる。
 成程、まだまだ収穫前の段階だ。
 これが実れば、本当に凄いね、なんて思いながら、祈った。

 豊穣の恵みがこのディリップに降り注がれます様に──

 しばらくして目を開けると、そこには黄金色に染まった作物が気持ち良さそうに風に揺れていた。
 村人の歓声は鳴りやまず、感謝の言葉は途切れる事を知らなかった。
 そうなるとむず痒くて居心地が悪くなるので、すたこらさっさと逃げるように大聖堂の私の体に戻って来た。

 ベッドに横になっていた私を皆さんが注目する構図。
 ちょっと恥ずかしい。
 というか、淑女の寝顔見るのってありなのでしょうか。
 顔から火が出てしまいそう。

 私がディリップ村での降臨に成功した事を伝えると、皆は大喜びした。
 念のため、ディリップ村から早馬で大聖堂が来る予定になっているそうですが、それは暫くかかるとの事。

 では、帰りましょうと、起き上がる所で王妃様に肩を掴まれた。
 王妃様は笑顔で『次はどこで奇跡を起こすか話し合いましょう』と、言われ、またもや大きな机を囲んだ。

 大きな地図に教会の印がいくつも付けられていた。
 その数、292か所。
 その多さに思わず、声を上げてしまう。

「これ全部やるって言うんですか!?」
「いえいえ、収穫期が近い所だけでいいのです。ですから、ここから西のこの区域のみ」
「だいたい・・・42か所くらい?2か所終わってるから、残り40?」
「既にその地区の何名かが噂を聞きつけたのか、嘆願書を出してきたぞ」

 と、ジェイミーが偉そうに言う。
 あんたは何もしてないでしょって言いそうになるのをぐっと堪えた。

「そうね、不公平になるとそれはそれで・・・」

 王妃様まで。

「い・・・いつまでにでしょうか」
「早い内がいいです、収穫時期の問題がありますから」

 それから毎日、対応する事になった。
 1日8か所5日間のぶらり降臨の旅です。
 折角だから、楽しんで周りましょう。

 トホホ。

 後で気づいた事があった。

「これ利用して、魔女探せば良くない?」
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