聖女は記憶の残滓に恋焦がれる ~男体化してしまった聖女の妹が私を汚そうとするんですが誰か助けてください~

なのの

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23.風船王子とデート

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 気乗りがしないからと言って蔑ろに出来ない関係、それが婚約者という物。
 それが王族相手となれば尚の事断りづらい。
 夜会で会っているのだから、それで満足し、昼間は解放して欲しい。
 そんな気持ちを意にも介せず、昼も夜も拘束する。
 しかも今日は特別な用事があると言う。
 面倒極まりないとはこの事だ。

「お断りになりたい気持ちは分かります。これは、明らかに異常な執着ですからね」

「行くしかないのでしょ・・・」

「大丈夫ですか?少しやつれてきていますよ」

「!」

 目に見えてやつれているのはまずい。
 双子の両方が同時にやつれるなんて事があるのは不自然だから。

「まだこれ位なら化粧でどうにか、ですが変化に敏感な方でしたら分かってしまうでしょう」

 この時点で選択肢は限られる。
 そう、姉で動くのを諦め、妹として行動せざるを得ない。
 今まで以上に姉として行動が出来ないだけならまだしも、それ以上にダリアにも気づかれてしまう。
 いえ、ここは彼女を信じて、秘密を明かすしかない。
 彼女が味方になってくれるのかは、未知数だけど仕方がない。

「あのね、ダリア───」


 □□ □ □ □□

「そうですか、アリアナ様がそんな事になっているとは。どうりで二人とも、良く消える訳ですね」

「妹が元に戻った時、ダリアが誰に付くかは任せるわ」

「それは・・・」

 ダリアは元々、アリアナが風船王子の婚約者となった事で雇われた専属メイド。
 今でこそ手が空いている時にエリアナの方の世話を焼いてくれるけど、以前は完全に無視されていた。
 いつの間にそうなったのか、私は思い出せないでいる。

「その時に考えます、秘密は守りますからご安心ください」

「そう、それでいいわ」

 今、裏切って情報を他家に流出させられるよりはマシだと考える事にした。
 一応、周りに秘密を共有している味方が居るは心強い・・・はず。

「ですが、今はもうすぐお迎えが来るので、さっさと支度を済ませましょう」
「また、あのキツイドレス着るの?やだなぁ」
アリアナ様だって、我慢されてたのですよ、エリアナが何を文句言ってるのですか」
「はぁい」

 そうして、ウェストががっつり絞られたドレスへの着替えやメイクが終わった頃に、馬車が到着する。
 城下町での移動かと思いきや、行き先は王宮だった。
 道中はできるだけ、顔を見ないようにしていると、風船王子は怪訝な顔でこちらを見ている。
 腕を組み何か文句を言いたげだ。

 恐らくエリアナから何か言われた事でアリアナが拗ねているとでも思っているのだろう。

「やはり、気が乗らないか」
「そうですね」
「だが、今日を乗り越えれば、後はデートをするだけだから頑張ってくれ」
「・・・? は、はぁ」

 連れて行かれたのは、王妃様の部屋。
 そこにはテーブルと椅子、一枚の紙と、ペンが置かれている。
 風船王子は、そこに座れと言わんばかりに、椅子を引く。
 素直に座ると「終わったらベルを鳴らしてくれ」と言って部屋を出た。

 誰も居なくなった王妃様の部屋で、私は何をしたらいいのだろう。
 少しぼーっとしてしまった所に、目の前にあるは一枚の紙。
 本程には興味をそそらないにしても、一応に確認を取る。
 ぺらりと捲るとそこには、子供向けかと思えるような問題が並んでいた。

 暇つぶしのクロスワードにもならない程度の問題をすらすらと解き終わると。
 部屋の中を見物する。

 王妃様の部屋をじっくり見れるなんて、滅多にない事。
 今後、妹がこの部屋の主となる事を想像しながら眺めている。
 社交的な妹がこの部屋で何をしでかすか。
 恐らく、お友達を呼んでホームパーティと称して何かするのでしょう。
 きっとやる事は今までと変わらない、ただ、楽しければいいと言う点だけを重視した日々を送る。

 それで国政はあの風船王子が取り仕切る。

 ・・・。

 ヤバイヨネ。この国。
 風船王子の噂は色々聞いている。
 勉強嫌いで夜会に舞踏会、女性を連れまわして遊び惚けて好きな事しまくってる。
 それで王妃様が頭を抱えているというのも気にも留めないとか、どれだけ放浪息子なのか。
 勉強を勉強と思わなければ結構面白いのにね?

 今は奇跡を起こした聖女をアピールしたいが為に、彼は誰彼構わず誘う余裕がない。
 王妃様はその事を大層喜んでいると耳にした事がある程だ。

 しばらくして、部屋にノックの音が鳴り響く。
 風船王子がドアの隙間から顔を覗かせ「そろそろ終わったか」と確認してきた。
 終わった事を伝えると、それじゃあと言ってそそくさと城下町に繰り出すのだった。
 一体あの問題はなんだったのか分からないまま。

 連れて行かれた先は、劇場だった。
 風船王子にしては珍しく有名な話を題材にした演目をチョイスしている。
 少し、ほんの少しだけ見直し、観劇していると横からいびきが聞こえてくる。
 何世代か前の陛下の話だと、陛下が観劇して3回あくびをするだけで、その演目は公演禁止になったと言う。
 居眠りの上、いびきを書いた場合はどうなるのだろう?
 ちなみに、妹もこういうのは苦手でうたた寝する方だ。
 ある意味、お似合いの二人ではあるのかと思い、少し口角が上がった。

 あの時の法律が無くなったのは危険を顧みず上申した演劇に関わる者の勇気の成した偉業だ。
 それが再び施行されない事を、今はただ祈るだけだ。
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