聖女は記憶の残滓に恋焦がれる ~男体化してしまった聖女の妹が私を汚そうとするんですが誰か助けてください~

なのの

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26.脱走騒動(前編)(風船王子目線)

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 その日、王宮内の兵士はせわしなく動き、俺の心中は穏やかではなかった。
 婚約者の姉を反逆罪で捕らえたというのに、まんまと脱走されたのだ。
 これは、母上には極秘とされているだけに、大きな騒ぎを起こす訳には行かなかった。

「せっかく、式の日取りが決まりそうだと言う時に、こんな事になるとは」

 先日、母上から結婚の許可が下りた。
 これで、ようやく結婚式が上げれる。
 そう思った矢先、密告者が現れたのだ。

 その密告者によると、あのクリストン男爵邸襲撃事件の主犯はエリアナだと言う。
 目的は母上と俺の殺害。
 だが、俺の抵抗が思いのほか激しく、殺害を断念したというのが事の真相だった。
 確かに、あの時は気を失う程に激しい戦いを繰り広げた。
 誰も褒めてくれはしなかったが、頑張ったという感覚だけは残っていた。
 あの俺の行為が殺害を躊躇させたと言う事実を知れば、母上も喜びになるだろう。

 しかもブキャラン侯爵とは快楽を共にする関係にあり、妹の姿に変装してまで淫らな関係を続けていたという。
 相手が既に亡くなっている事から立証こそ難しいが、その所業を許す訳にはいかない。
 公爵はその事実を無くそうと考えたのか、一族郎党を皆殺しにした。
 それこそが動かぬ証拠だと、言いたい所だ。

 更には魅了のアクセサリーを持って俺を誘惑したと言う。
 俺はそれにつられて側室に誘ってしまったが、彼女にしてみれば、一夜程度の火遊びが良かったのだろう。
 逃げて行ったのは兎も角、暴力に出たのは許し難い。

 そう考えれば、初めての出会いから全て無礼に無礼を重ねて来たエリアナは本当に王族を軽視した危険な存在だ。
 可能であれば、式までに排除したいと考えていたのだが、エリアナは忽然と姿を消してしまった。

 そしてタイムリミットは公爵が帰ってくるまでだ。
 それまでに処刑しておかなければ、後々厄介な事になりかねない。

「ウィルバートは牢屋をくまなく調べよ、何か手がかりがあるやもしれん」

 密告者であるウィルバートは言うなればエリアナを憎む同士だ。
 彼とはもっと早くに出会う事が出来ていれば、こんな悲劇にはならなかった。

 俺は牢屋の周囲を調べていた。
 何の変哲もない空間に、腹がたってくる。
 何もないはずがない。
 牢屋の鍵はかかったままだった、だと言うのに居なくなるなんて、どう考えてもおかしい。
 エリアナの奴はどれだけ俺に手間をかけさせれば済むのだろうか。
 脱走なのだから俺が剣で止めを刺しても文句は出まい。

 殺すにもいたぶって殺したい。
 これまでの無礼を泣いて詫びながら死んでゆく姿を晒すべきなのだ。
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