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33.アリアナの救済

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 私に呪いをかけた魔女について魔導具で指差す方向を確認すると、エイダの姉が居ると言うドルヴァー公爵領とは異なる方角を指しており、直線上にあるのは中立派閥の弱小領主ばかり。だが、それをさらに延長すると、そこにあるのは隣国のアリニャーヌ公国だった。
 まさかね、なんて思って私はこの事を忘れようとした。
 もし呪いの主がエイダの姉ではないのであれば、ドルヴァー公爵に多大な迷惑をかけてしまう事は明らか。
 ある意味、ホッとした反面、とても複雑な気分になった。

 やっぱり魔導具は完成してなかったんじゃないかという結論に達した。
 被検体の数が少ない事が原因だという事だと考え、魔導具の公開は保留する事にした。

 そんな折、ダリアが面白い情報を持ってきた。
 件のアリニャーヌ公国の女大公様が一月後にこの国に訪問すると言う話だった。
 真実はともあれ、会わない手はない。

 それよりも問題となる話が舞い込んだ。

 妹の処刑が決まった。

 三日後、服毒による死刑。
 父はこの件について既に承諾していると言う。
 最早、猶予はないというのに、ジェイミーともウィルターとも連絡が取れない。
 というよりは意図的に私への情報遮断がなされている。
 妹の処刑の話ですらダリア経由で入って来た情報だった。

 そして、私はエイダに改めて話を持ち掛けた。

「お願いがあるの、アリアナに性別が変わる呪いをかけてくれないかしら」
「呪う事は出来ますが、私は成功した事がないんです・・・魔女として役立たずなのです」
「そんな事ないわよ、いいからやってみて」
「・・・わかりました」

 彼女の言う呪いが発動しなかったと言うのは私のせいだ。
 身代わりになっていた事で、発動してないと思ったという事。
 もし、仮にだけど私にかけた呪いがアリニャーヌの女大公様だった場合、姉まで呪いに失敗した事になる。
 そうなると姉妹そろって魔女失格のレッテルを張られたと思いかねないので、エイダには内緒にしてある。

 さて、エイダは魔法陣を書いた上で、生贄の鳥の生き血などを垂らし、長い呪文を唱える。
 魔法陣が薄明るく光ったと思ったら、それで呪いの儀式は終わったという事になった。

 エイダの場合、呪いが成功して発動するのは2日後の夜。
 もし、成功、または重ね掛けの場合、結果はわからないだけ。
 だけど呪い返しが施されていた場合、エイダ自身の性別が変わるのだとか。

 問題は私に呪い返しが施されたと言う話。
 いつの間に?
 エイダは今年呪ったと言っていた。
 それが不発に終わったか分からなかったのは、その時はまだ呪い返しは施されていなかったと言う事。
 それから、魔女の集団に会った時には既に施されていたらしい。
 呪いとはてっきりそういう物だと思っていたけど、エイダの話を聞いて話しが違う事に気が付いた。
 その間にあった人物で呪いに関わってそうな人と言えば、一人くらいしかいない。
 ウィルターだけだ。

 エイダにウィルター、一度対面させて、じっくり話を聞いてみたい物だわ。

 ***

 それから、2日が経過した夜の事。
 レッドが不審な人物を捕まえたと報告してきた。
 事前に警備を強める様に言っていただけに、予想通りになるとは妹ながら単純な性格をしている。

 どうやら妹は男の姿になった途端、衛兵を呼んだらしい。
 そこでアリアナが脱走して、身代わりとして自分が捕まったと証言した。
 その事を聞いて、城下では捜索の手が広がり、男体化した妹は事情聴取として個室に案内されたのだが、そこで逃げ出した。
 結果、不信には思われたが、脱出するのに成功。
 その足で、必死でこの屋敷まで走って来たのだとか。

「お久し振りね、ウィルバート2世さんとでも言えばいいのかしら」
「お姉様・・・。ごめんなさい・・・」
「・・・憎んでると思ったけど」
「私、反省したんです。自分のやった行いを思い起こして・・・、彼の事だってお姉様は悪く無かった」

 ぼろぼろと泣きながら反省する妹を見ていると、悲しいのやら情けないのやら。
 妹はこんなしおらしくはないし、もっと覇気があって、反骨精神にあふれた子だった。
 それが、反省・・・・。
 にわかに信じがたいと思う反面、受け入れざるを得ない。
 そもそも、彼女をどうこうする気なんて私にはなかったのだから。

「命あってのものだねですね、領地で休養するといいですよ。呪いだとは言え元に戻ればまた捕まりかねません、ですから、このまま元に戻らず男として暮らしてください、いいですか」
「はい、お姉様・・・」

 これで妹の件は片付いたと思っていた。
 私はどうやら甘すぎる人間だったらしい。
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